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「おきょん」と「京子」

日向坂46のファンをやっていると、関西住みというステータスは大きなデメリットになりうる。
一週間のご褒美のような日曜深夜のテレ東の冠番組「日向坂で会いましょう」は当然のように放送されていないし、「DASADA」や「声春っ!」等の日テレでのドラマについても関西勢は強制的にHulu送りとなる。加えて、文化放送の「日向坂46の『ひ』」やTOKYO FMの「小坂なラジオ」・「日向坂46の『余計な事までやりましょう!』」といった東京のラジオ番組をリアタイするためにはradikoプレミアム(月額385円)への加入を余儀なくされるし、コラボカフェ等のイベントも基本的に東京でのみ開催される。極め付きには、日向坂46がグループの目標として目指してきた約束の地は“東京”ドームである。(無事に開催されてほしいですね)

なので、関西に住んでいることに何かメリットがあるとしたら、それは物事を諦めるのが得意になるということと、radikoへの課金なしでMBSラジオの「アッパレやってまーす!〜土曜日です〜」を聴けるということだろう。


「アッパレやってまーす!〜土曜日です〜」(以下やる土)は、毎週土曜日の24時から放送されている、さらば青春の光、尼神インター、城島リーダー(TOKIO)、齊藤京子(日向坂46)の6人のメンバーが出演している大阪のラジオ番組である。(オードリーのオールナイトニッポンと放送時間が少し被っていることだけがネック)
適度な関西色と微妙なジェネレーションギャップが聴いていて楽しい番組なのだが、私はこのラジオを聴いていて、たびたび「森田さんの“お兄ちゃん感”、すごくない?」と感じる。というのも、喋っている中で時折いがみ合う森田さんと“おきょん”(番組内での齊藤京子のあだ名)が、なんだか「サザエさん」で言うところのカツオとワカメのように思えてくるのである(思い返せば「乃木坂どこへ」や「ノギザカスキッツ」で乃木坂46の4期生と共演していた際も、森田さんを乃木坂のお兄ちゃん(とお父さんの間ぐらい)のように感じていた。)。

同じ“きょうだい感”でいうと、誠子さんの“お姉ちゃん感”もすごい。基本的に全体のバランスを取るように立ち回り、恋愛の話になると一気にキラキラ乙女になるような誠子さんを見ていると、まるで恋愛体質で優しいお姉ちゃんのように思えてくる。

そう考えていくと、渚さんがいとこの怖めなお姉ちゃんのように、ブクロさんがいとこのお兄さんのように、城島リーダーが親戚の面白いおじさんのように…といったふうに、だんだんやる土が関西の親戚の集まりのように思えてくる。その中に放り込まれた箱入り東京娘おきょんがなんだかんだうまくやっているのは面白いし、いつもの“きょんこ”とは少し違う、やる土限定の“おきょん”を感じて、なんだかお得な気がする。

このように、私はその人が特定の“場”だけで見せる姿というものにめっぽう弱い(もちろん限定商品とかにも)。
齊藤京子の場合、プレーンな“場”での「齊藤京子(きょんこの姿)」や、歌番組での「齊藤京子(日向坂のハーフツインの子の姿)」など、さまざまな“場”における齊藤京子が存在しているが、その中で私が特に好きな齊藤京子は、先に述べた「やる土」での「齊藤京子(おきょんの姿)」と、皆さんご存知「キョコロヒー」での「齊藤京子(京子の姿)」である。

「キョコロヒー」は、特番時代の「あざとくて何が悪いの?」と同じぐらい好きな番組なのだが、“ひょんなことから一つ屋根の下で同居することになってしまった親戚同士”のような、微妙な距離感のやりとりが観ていて心地良い。
舗装された道でつまずいたり、道をショベルカーで掘り返したり、リニアモーターカーで走り抜けたりするようなトークの京子と、脱力タイムズのツッコミ枠での収録と同じぐらいの疲労と達成感を得られそうな仕事(ツッコミ)量のヒコロヒーさんの、相性が良いんだか悪いんだか分からないバディに惹かれて、放送翌日にTVerの見逃し配信でキョコロヒーを視聴するのが毎週の楽しみになった。

企画VTRに登場するゲストの、痒いところに足が届くような独特の人選も面白い(齊藤京子×ヒコロヒーという組み合わせもかなり“痒足”である)。コンテンポラリーダンサーの松本ユキ子先生や振付師のTAKAHIRO先生といった“王道ダンスバラエティー”にふさわしい方々から、ジョイマンやザ・ギースといった個性派芸人まで、一見トリッキーに感じるかもしれないが、実際に見てみると「そう、これこれ〜」となり痒みがおさまるような不思議なVTR作りがクセになる。

そして何より、キョコロヒーにはドラマがある。「出会うはずのなかった2人が、テレ朝の深夜に『“京子とヒコロヒー、仲良くなれるかな?なれないね…なれるかな?”バラエティー』を繰り広げる羽目になり、それが爆発的な絶賛を呼び、バラバラ大選挙で1位を獲得して、放送時間が圧倒的に見やすい0時15分に昇格することになる」だなんて、きっと誰も想像できなかっただろうし、その過程でヒコさんが2度、涙することも想像できなかっただろう。
(個人的にキョコロヒーがバラバラ大選挙視聴者グランプリに輝いたときの2人のコメントの対比というか凹凸がとても好きなので、気になる方は調べてみてください)

私が好きなフォルムの齊藤京子が見れる「やる土」と「キョコロヒー」。この2つの番組に共通点があるとすれば、それはアットホームすぎない親戚感だと思う。そして、その親戚感には関西弁が一役買っていると感じる。どちらの番組でも、パンチと包容力を併せ持った関西弁(ヒコさんの方言は関西弁とは少し違うらしいのだが)と、けだるげで野心家なおきょん/京子のハイスピード標準語が不思議とマッチして奇跡的に乳化した水と油のような雰囲気を味わえるところが魅力的だと思う。

そして、関西のおっちゃんたち・お姉さま方から愛されネーム“おきょん”で呼ばれたり、関西風姉御肌なヒコさんに呼び捨てバディネーム“京子”で呼ばれたりすることでリミッターを解除して唯一無二な魅力を醸し出す齊藤京子のように、関西チックな空気と交わることで新たな一面を見せるメンバーがきっと他にもいるはずなので、日向坂46はもっと関西に目を向けてみるべきなのではないだろうか(別にそんなことはない)。関東ローカルの番組ばかりに出演するのではなく、「これ余談なんですけど…」のような関西ローカルの番組にも積極的に進出していくべきなのではないだろうか(別にそんなことはないし、その番組は終わった)。

とにかく、全国おひさま化計画を実行する限りは、日向坂46は関東以外のファンにも平等にコンテンツを供給できる体制を整えていくべきだと私は思う(別にそんなことはないし、月額課金をしまくるか、関東に移り住みさえすれば済む話だ)。

(物事を諦めるのが得意になった)

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