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神宮中継で「全てがひっくり返った」ような|乃木坂46『好きというのはロックだぜ!』

※約8000文字
※なんで一曲でこんな長くなったのか分かんなくて怖いんですけど でも吟味するのにそれぐらい必要だったんです(ワインがぶ飲みソムリエか? 最後の一口はきっとテイスティーだと思うので頑張って読んでくださいね。)

こんにちは。インディポップばかり聴いて耳がふやけた私は最近、Pale Wavesの新譜に打たれています。ちょうどロックが聴きたかったんです。


30枚目表題曲が全ツの大阪公演で初披露(解禁)されたのを知ったときはそれはもうジェラしさに苛まれた。そういえば、シングル表題曲が配信なしのライブで解禁されるケースって最近でもあんまりなかった気がする(と思って確認してみたらそもそもライブで初解禁されるケースがあまりなく単に悔しい~~!!の記憶が色濃く残っていただけかも)。

すっかり配信ライブに慣れてしまい「現地の人しか見られない」から来る疎外感や寂寥せきりょう感に対し脆弱な身体になってしまった。
久しぶりに自分の脳内の妬み嫉み人格の奴と再会。


・夏めいた王道アイドルポップな『好きというのはロックだぜ!』(以下好きロック)

1.歌詞

歌詞がとてもまっすぐで「本当に格調高い乃木坂46の新曲⁉︎」と思ってしまうほど

→まっすぐとは言っても乃木坂なので、1番AメロBメロでは〈世界で一番僕が嫌いなのは僕だと気づいたときから〉〈何も期待しないことが傷つかない未来〉とお約束のネガティブな内省や諦念が展開される。

〜歴代主人公たち〜

やっとわかったんだ 一番嫌いなのは自分ってこと
僕は僕を好きになる/乃木坂46

(そないなこと言わんでも……)

何も欲しいと言わなければ
永遠に傷付かずに済む
今、話したい誰かがいる/乃木坂46

(りんごのくだりめっちゃ分かる。)

→ こう見ると夏曲ながらマイナススタートなんですね(言うて『ジコチューで行こう!』(以下ジコチュー)とかも同じだけど)

・そんな主人公くんは定跡どおり〈君〉を好きになって、どんよりしていた世界がキラキララメ付きに見えるようになり、あまつさえ〈君に会えるかもしれない明日が楽しみだ〉と将来に期待を寄せるまでに至る。ピュア~

君に会うとたったそれだけのことで
また明日 頑張れるんだ
それが僕の思い込みだとしたって
そんな支えが生きがいになる
僕の思い込み/乃木坂46
こうやって色々見返してて思ったんですけど、昔の乃木坂の歌詞めっちゃいいですね
歌詞世界から失礼しました…

〜歴代主人公たち終わり〜

・それに続く〈僕は僕を嫌いじゃない〉では自意識の呪縛のようなものから解放された様子が伺える。オードリー若林の「ネガティブを潰すのはポジティブではなく没頭だ」みたく。
(なおさら僕僕の主人公くん大丈夫かなと思う)

・全体的にありがちな展開でずんずん進んでいく中で全部のサビが〈好きになってくれ〉という一言で締められていて、初めて聴いたときにここが印象に残った。

→たいてい自己完結型の恋愛をしている気がする乃木坂楽曲の主人公が強い願いを心奥に留めておかず〈好きになってくれ〉と(心の中で)相手に叫ぶのが少し意外で、もし乃木坂46楽曲のバチェロレッテでこいつ居たら応援したいなと思った。真実の愛見つけようね。

→逆に「自分を好きになる」フェーズで終わってしまうとそれこそ『僕は僕を好きになる』と丸被りだし、心で叫ぶのは『君に叱られた』の〈僕を叱って〉とかでもあったので、これは新鮮でも何でもない普通の叫びなんだけど、賀喜ちゃん(賀喜遥香)が真ん中にいるとパズルのピースがはまったような感覚に少しだけなる。これは一種の希望だと思う。

→なんか、けれんみやまじりっ気のないのメッセージは賀喜ちゃんに歌ってほしくなる。

→飛鳥ちゃん(齋藤飛鳥)も割と賀喜ちゃんが好きと言っていたり、泣いてる賀喜ちゃんを見てオドオドしていたけれど、この世界の上位存在であるかのような視座を持って生活している、あるいは物事を言語化・類型化したり体系的に理解したいような人たちは、箱庭の中で愛を持って純朴に生きているように見える賀喜ちゃんを大切にしたくなって、純粋でハートフルな空間を願うのかもしれない。賀喜ちゃんの口角を下げてしまわないように

・好きロックはよくある推しビジネスっぽい歌にも聞こえるけれど、2番サビの〈誰かを好きになる やさしいことなのに 運命的に出会わなきゃ 心は動かない〉という部分では、推しを推すのに伴う社会的な後ろめたさや気恥ずかしさを軽減させるためにこしらえられた建前の推しポイントで好きになるのを押し売りする最近の推しビジネスなんかじゃ心は動かない、言語化が追いつかないほどの本能的な強い衝動がないとだめなんだ、と言っているような気もする(別にそんなこと言ってないと思う)。

・そういえば歌詞にタイトル出てこなかった。ロックすら、珍しい。

・でもね、そんな簡単にひっくり返る世界ならどうせ何見てもひっくり返ってるんだよ

2.曲(メロディ、コード進行など)

・トラックはめっちゃ王道な感じ。ポップなギターサウンドで、特にドラムに推進力を感じる。

→いつもとビートの趣が違って聴こえる。トラックがドラムで充填されているというか、疾走感があって聴き心地はけっこう良い。
(ファンらしきバンドの人たちがこの曲を解説してる動画(音楽未経験の人にも伝わるような分かりやすい感じだったけど)を見たところバリバリのロックドラムの動きではあるらしい)

・5分半は長いと思う

・全体的に正統派J-popっぽい(=ありきたりでもある?)メロディ。
サビは特にメロディが同音連打多めでシンプルかつ下降系なのでユニゾンに一体感があって力強い感じ。これも推進力になっていると思う。
(下降系のメロディは音が取りやすくて歌いやすいみたいな話を聞いたことある気がする)
(裏ではファ♯からレ♯まで上昇してて気流には乗れてる?)

同時にサビの歌唱に「今」の乃木坂の一体感を感じるんです。ミックス具合とか

・個人的にサビ終盤の〈(僕は生まれ)変わったんだ〉のファ♯ーファ♯ーファ♯ソ♯ーシー♪のメロディ部分だけ少し野暮ったくも感じてしまう。大衆性があって耳に残りやすいとは思うけど昔のAKBの延長線上にあるんだなと感じる。ヨナ抜き音階は良いとして譜割りの感じは仕方ないと甘受しないといけないのかしら、ふわふわり

→逆にその裏で流れてるシード♯ーソ♯ーファ♯ーシ♪のメロディはなぜかスッと入ってくる。歌メロとのバランスなのかオンコードになってる(?)のが合うのか(コード進行は後述)理由はわからないけどちょっと感動的で好きな部分

・ユニゾンの中でも賀喜ちゃんとか久保ちゃん(久保史緒里)の声は聴き取りやすい。

・Bメジャーキーのカノン進行で始まるので、初めて聴いたときは本当にジコチューじゃん!と驚いた

→ジャケ写が公開されたときもジコチューっぽさが指摘されていて、そういう周期なんだろうなあと思った。個人的に今作のジャケ写は結構好き(ちょっと保守的でもあるけれどまあそういう周期なんで)

・コード進行も比較的王道な感じというか、人口に膾炙かいしゃする色んな進行の組み合わせになっていて、野村陽一郎さん作曲っぽさをここで感じる。
いろんな進行を組み合わせて繋いでいくのは『ドレミソラシド』辺りが分かりやすい例で、安定してポップでありながら動的かつドラマチックに展開していくのが良さな気がする。もっとループで使えそうなところを次々取り替えてくみたいなイメージ。
(そういえばいつもとビートの感じが違って聴こえたのは坂道ではいつも日向坂メインで乃木坂は珍しい野村さんだからですかね)

→「ポップでドラマチック」って30thの節目に合ってませんか?

~ちなみにちょっとコード進行(Bメジャー)~

○イントロ
Ⅰ・Ⅴ/Ⅶ・Ⅵm・Ⅴ→Ⅰ・Ⅴ/Ⅶ・Ⅵm・Ⅲm・Ⅳ・Ⅰ/Ⅲ・Ⅱm・Ⅴ(カノン進行)⦅みんな大好き⦆
○Aメロ
(Ⅰ・Ⅲm・Ⅳ・Ⅴ→Ⅰ・Ⅴ/Ⅶ・Ⅵm・Ⅴ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅰ)×2⦅降りてくやつエモくて好きなんです⦆
○Bメロ
Ⅳ・Ⅴ・Ⅲm・Ⅵm(王道進行)→Ⅳ・Ⅴ・Ⅰ・Ⅰ7→Ⅳ・Ⅴ・Ⅰ・Ⅴ/Ⅶ・Ⅵm・⦅エモくて好き⦆→Ⅱ/Ⅳ♯・Ⅴ
○サビ
(Ⅰ・Ⅴ/Ⅶ・Ⅵm・Ⅲm(カノン)→Ⅳ・Ⅴ/Ⅳ・Ⅲm・Ⅵm・Ⅱm・Ⅴ(ほぼ王道))×2
→Ⅰ(2サビではⅠ7追加)
⦅(ほぼ)王道進行2つ目のコードが恐らくⅤじゃなくⅤ/Ⅳの形(オンコード)で隠し味的な響き
○Cメロ
Ⅳ・Ⅴ・Ⅲm・Ⅵm→Ⅳ・Ⅴ・Ⅵm・♭Ⅶ→Ⅳ・Ⅴ・Ⅰ・Ⅴ/Ⅶ・Ⅵm・Ⅴ→Ⅱ/♯Ⅳ・Ⅴ
○落ちサビ前は同様に進んでⅡm・Ⅲm・Ⅳ・Ⅱ/♯Ⅳ・Ⅴ→♯ⅤでCメジャーに転調⦅高揚感⦆

人口に膾炙しまくる人気のコード進行の組み合わせで出来てるけど一曲通して組み合わせがビタ当ての曲はなさそうな感じが野村陽一郎さんっぽい。

~コード進行おわりです~

・落ちサビの半音上転調もよくある感動ポイントで特に新鮮さは無いけれど、同時に耳に馴染みやすい最適化された音楽ということでもある

→トラックに注目して聴いてると本当にちょっと泣けてきちゃう。私の耳はポップに抗えない。

・5分半は長いと思う(本当にそうか?)

・Cメロ3、4小節目 飛鳥ちゃんと山(山下美月)の〈こっちへと振り向かせたくなる〉の3度上ハモリのところが優しくてとても好き
(あんまりうまく言語化はできないけど、KAT-TUNの『喜びの歌』のハモリに近いものを感じます)

・楽曲が良く言えば王道、ただ悪く言えば凡庸な部分もあるといった調子なのでMVとかパフォーマンスみたいな周辺要素で評価が変わってきそう

→な局面で、好きロックはMVが素晴らしいと思う

3.MV(+振付)

・「夏休みの予定を決めたい賀喜ちゃんの脳内会議」の設定がすでに勝ってる。ほどよいユーモアに賀喜ちゃんとの親和性を感じる

→個人的に賀喜ちゃんの好き理由が心の中でフフフと笑える小粋なユーモアなので心地よい。賀喜ちゃんのユーモアは言葉遊びというか表現の面白さを前景化した人畜無害なものが多いと思っていて、そこに程よさを感じている

賀喜ちゃんは指が長くて綺麗なのも好きです
「手が綺麗」は乃木坂的な品位だと思う

・熟考に飽きたりキレちゃったりするユーモアが個人的に好きで笑ってしまう。

遊んでもうてる
言い争ってもうてる
その表情絶品
なんか数えてもうてる

・こう見るとメンバーそれぞれ"らしい"キレ方してる気がする。
(監督が神谷雄貴さんで、MVはアドリブ多めで撮影してた、みたいな話を誰かのラジオで聴いたような)

・MVで特定のメンバーを目立たせるかまんべんなく映すか問題について。それぞれメリットデメリットあると思いますが愛され賀喜ちゃんの場合後者が自然に感じます。

弓木ちゃん(弓木奈於)が芸術肌人格としてプレゼン始めたところでは感動した
(弓木ちゃんの言語感覚がひとつの芸術として認められたような気がしたから)

かっこいい

→いろんなラジオで笑ってはいけない脳内会議での弓木ちゃんのゴッホプレゼンの話題になっていて面白い。
(もし乃木中でMV解説(懐かしの)があったらきっと弓木ちゃんのプレゼン再現はやると思う)

・このようにメンバーの個性が平等めにMVに反映されてるのは否応なしに好印象を抱いてしまう

・画面が鮮やかで楽しい。この辺はジャケ写からアートワークに一貫性があっていいと思う。
どんよりモノトーン会議室とカラフルプレゼンVRの反復浴

グリーン一色から…
ひっくり返ってカラフル〜!も

・ジャケットやMVでテーマを統一するかバラバラにするか問題について。作品として評価されやすいのは前者だろうけど、アイドルの持つ「何者にもなれる」カメレオンポップな性質を活かして活動期間中にいろいろ挑戦したいのも分かるので何とも言えない。

・ストーリーとしては主人格の賀喜ちゃんが大長考の末、夏休みに「全部やる‼︎」の一手を選択するというもの

→(私が思うに)賀喜ちゃんってレギュラーラジオとかSHOWROOM配信だと結構ラフな感じでスラスラめに話してたまに小考するぐらいなのですが、乃木中とかある程度ちゃんとしないといけない場ではコメントにローディング挟まりがちなときがたまにあって、なので「納得がいくまで考える」演出は割と彼女に適合しているのかなと思う。

→「決議」で賀喜ちゃんがニヤリと笑うシーンが印象的。

ニヤリ

→ 選抜発表で二度目のセンター就任を告げられたとき、(隣にいた飛鳥ちゃんいわく)「手が震えてなかった」という賀喜ちゃんの成長、強さ?みたいなものと重なる部分がある

→谷川浩司十七世名人が二度目の名人位を獲得した際の「これで並みの名人になれました」じゃないけれど、さくちゃん(遠藤さくら)同様、二回目センターはある程度の自信が感じられて、割と信用して見れる、気がする

お強い

・空港でのMV、飛び立つ飛行機、「全部やる‼︎」

空港といえば「どこへでも行ける」ですよね
(別にそんなことはないよー)

・LINEのメッセージ動画でこの飛行機はCGじゃないって言ってたんですけどマジですか?!
(大フェイク説あり)

→神谷監督『I see…』の山手線と同じこと飛行機でもできちゃうんだすごい

・「でんちゃんねる」でもともとMVは砂浜で撮る予定だったらしい話をしていたらしいことを知った

→(元の予定がどんなのかは知らないけど)結果的にお話としてよくまとまってると思う

・振付がWARNERさんということでところどころ『命は美しい』や『裸足でsummer』っぽさを感じて、最近の表題曲とはダンスの趣がはっきり違う。

→ちょこまか細かい動きになぜかRTAみを感じる(?)。あんまりキャッチー、とかではない感じ。
(個人的には他でいまいちハマれてない、というか咀嚼しきれてない部分もある)

→ダンスの練度が上がったら割と好きになれそうではある(Mステのとか結構良く感じた)

ここのステップ主体の振付は好き
てか暗い会議室とスーツ姿も案外いいですよね


・夏曲あるある課題として振り固めとかにあんまり時間かけられなかったんだろうなと思う場面がちょこちょこあって、特典映像にせずYouTubeに4Kで公開することだしクオリティ上げることの価値はめっちゃ大きくない?と思う、けど、そんな時間はありませんと言われそう(キリもない)。ごめんなさい…

・あと、このカラフルなMVもある意味よくある感じではあって、どれぐらいクリエイティブか?という部分もあるにはあるような気がする。
(けど、こんなに衣装の種類が多いの地味にめっちゃ挑戦的でよくありはしないか)


4.結論

というわけで、

『好きというのはロックだぜ!』は前作の影響もあってか乃木坂にしては珍しいほどド真ん中の王道アイドル夏曲で、個人的にこれはセンターの賀喜ちゃん(強化後)に託したひとつの道(希望)でもある、ような気もする。

トラックは滅茶苦茶ポップで耳に馴染むうえにドラマチックに展開していって、ある意味で30枚目という節目にふさわしくも感じる。歌唱も特にサビのユニゾンの一体感に今の乃木坂を感じたり、ところどころのハモリも気持ちいい。

MVやジャケットには一貫性があって内容もなかなか良い。今のメンバーの個性が発揮されたモノトーンでカラフルなMVは何度も観たくなる。

ただ、より戻し的な守りも見えて、クリエイティビティについて少し考えてしまう部分もある、

といった具合に落ち着きました。

早くパフォーマンス見たいですね〜。


とか割とポジティブ風に感想してる中で、個人的にはこの「凡庸さ」が結構気になっていて、目新しさとか独創性を評価したい自分としてはモヤモヤが残っていた。
あと、これからの乃木坂大丈夫かな…とも少し。


5.???

5.反転 | CDTVライブライブ神宮中継

そんな中で、CDTVライブライブでの神宮公演の『好きというのはロックだぜ!』パフォーマンスの生中継を観た。

ちょっとこれがすごすぎた……

フルサイズのありがたくて絶妙な演出とそれに次々と応える乃木坂の人たち(会場ブーストあり)とで、特に賀喜ちゃんの歌声は音源を超えた良さがあったし、落ちサビ前の和ちゃん(井上和)は閃光だった。他にも、生き生きと(言語化とか全然追いつきません!)。そこには情熱があったし、後景には音楽があった。
画面越しに伝わる空間は驚くほど全てがキラキラしていて、テレビの前で私は思わず見入ってしまった。

まるで全てがひっくり返ったようだった

それと同時に、自分が音楽を評価するうえでの評価関数がいかに限定的で不完全なものであったかを思い知った。

例えば、音楽の三要素はリズム、メロディ、ハーモニーと言われており、その内のハーモニーに該当するであろうコード進行は楽曲の雰囲気を大きく左右するため、コードに関する議論は音楽を評価するうえでもまぁ重要そうで、私は楽曲を感想する過程で根拠やアシスト材料のようにコード進行を用いているのだが、ことライブにおいてはコードにおけるクリエイティビティなんて衣装の差し色ひとつに過ぎず、「メロディがシンプルで歌いやすく一体感が出る」みたいな要素がむしろ大きかったりする、みたいな場合があるはず。

イヤホンで「再生」して聴くぶんには、例えば、自分が曲を聴いてどう感じたか、そこから音楽理論を参考にしたりしなかったり、あるいはサウンドメイキングの質、歌詞の文学性や社会的意義、押韻から聴き心地まで、他にはブランドイメージや詞曲の相互的なつながり、独創性・新規性や社会的影響などなどに着目したような評価がなんとなく妥当に見えるが、ライブパフォーマンスで理論的な最大値を示すような楽曲に対しては局所的で正鵠を外したヘボいものになってしまうのかもしれない。
一流シェフが作った玉子豆腐を「まずいプリン」と言ってしまうようなものか
(もちろん「再生」して聴いたときを想定した歌い手に依存しすぎない評価には十分価値があって必要なものではあると思う(ただ「再生」でライブの風景を思い出せてしまうとまた評価の領域がややこしくなってしまいそう)。デザートコーナーで売られている玉子豆腐は「まずいプリン」だし)

何が良さに寄与するのだろうか。
私の場合、ライブだと例えば歌詞を線で追うことはあんまりなくて、彼女ら光景を眺めながらたまたま耳に飛び込んできた単語のイメージが無意識のうちに重なり合って情感になっているような…言葉以外の音も当然作用してるだろうけど何がどう反応してるんだろう…定量的な評価とか、少なくとも無賃ではできる気がしない。というかよく分からない

自分のことを「網羅的に音楽を聴いてきたわけではないが、音楽理論を少しかじっており、かつ割と自由に鍵盤も弾けるから音楽をある程度実践的にも理解できて、さらに音楽評論のようなものもちょこちょこ読んだりしてるから楽曲を相対的に、鋭く分析・評価できてしまう、文化的でセンスがある人間」だと少しでも思っていた傲慢さと了見の狭さを恥じた。

さながら批評っぽいものをディープラーニングさせたAIが出力した文章のような、ガワ(語彙)こそ一丁前だけど香ばしくてがらんどうな感想(に擬態させたレビューのようなもの)を書いてしまっていたのではないか。

いや、自分の音楽性とか評価軸に自信を持つことは別にそんなに有害ではないだろうし、ほとんど定性的な評価しかできないような作品を上手く評価する競技は意義のあるものだとは思うけれど、思考ロックに陥りかけてはよくないな、と思った。視野は定期的に広げたほうがいい


みたいなことを書いていたら、「でも、全てがひっくり返ったとか言ってるけど画面越しのパフォーマンスなんかで簡単にひっくり返るのなら何見てもひっくり返るんでしょう?」「いや、あるいはライブに行けない寂しさや疎外感から少しでも解放されたのが嬉しくて世界がキラキラに見えてるだけなんじゃない?」と脳内の論破肌人格の奴らに詰められてしまった。

いざ詰められてみると「別に全てがひっくり返ったわけじゃなかったかも…」と脳内の主人格の奴がその弱さを露呈しはじめる。ちゃんと見たら別にそんなでもなかったかもな…?

でも、最近何を見ても心が動きづらくてしゃーないでお馴染みの私があの時、あの音楽で、今の乃木坂に確かな希望を感じて、涙するより感動していた事実だけは脳内会議で共有しておいてほしい。

好きロックの主人公みたく、岩のように堅固な意志を持って「全てがひっくり返った」と決議で断言!できたらいいのに。ロックな生き方には憧れる。
(別に憧れてない)

いや、でも、雑にでも断言した方が説得力あるし、何よりそういうのはネットでよくウケるんだけど、私は誠実でいたいので、組織としてあんまりそういうことはしたくないのです。

短い言葉で端的に断言!「目から鱗のレトリック」!冷笑的なパワーワード炸裂!の方が早くて良いと思うんだけど、私はあんまりそういうことはしたくないのです。やってもいいけどね? やってもいいけど、私はあんまりそういうことはやらないです。

これはこれでちょっとロックなのかも?


Pale Wavesを聴いていると初めの方に書いたんですけど、今はGinger Rootとか聴いてます。
ポップポップ。

好きロック、結構アリかも?です




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