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迫る、大阪カジノ・IR計画の認可。課題をおさらい&国への要望に行ってきます!

「日本のための新たな道しるべ」代表、野村ともあきです。

日本国内初となるカジノの認可が迫っています。
本稿では間近に迫った認可を前に、改めて大阪カジノ・IR計画の課題を整理するとともに、この間、新たに気づいた課題や懸念についてもまとめておきたいと思います。

なお本稿は要点のみをできるだけコンパクトにお伝えすることを主眼としておりますので、詳細な内容は別稿等をご参照いただければと思います。

大阪カジノ・IR計画の課題 四分類

私は、大阪カジノ・IR計画の問題点を大きく次の「4項目」に分類しています。

  1. 事業計画、整備計画がありえないほどずさんである

  2. 大阪カジノ・IRは成長戦略にはなり得ないどころか地域経済を壊滅させる恐れがある

  3. 風紀・治安・倫理上の課題

  4. 行政手続きの不透明さや「住民合意」の不在、欠如

以下、順に見ていきます。

荒唐無稽な数字が並ぶ「事業計画」

日本のIR制度は、民間事業者によるカジノ運営を認める代わりに立地自治体に納付金を納めることを定めています。
大阪市の松井一郎市長(日本維新の会 前代表)は大阪府・大阪市をあわせて1000億円以上の納付金(入場料収入を含む)があると喧伝していますが、そのためにはカジノ事業者は約4900億円の粗利(利益=客の負け)を出す必要があり、この利益を出すためには客が7兆円を賭けなくてはならないとの試算もなされています。
しかしこの金額はラスベガスやマカオやシンガポールのカジノを遥かに超える水準であり、非現実的であると言わざるを得ません。

ちなみにインバウンド需要がピークを迎えていた2019年の“日本全体”の訪日外国人旅行消費額が4兆8000億円です。大阪IR一施設でどうやってこれだけの金額を支出させるというのでしょうか。

また年間2000万人(IR全体)と想定されている来場者数は近隣にあるテーマパークUSJの1.5倍の規模に相当します。老若男女が来訪するUSJを大きく上回る客が、年齢制限も入場料もあるカジノに来るのかは大いに疑問があります。

このような荒唐無稽とも言える数字を基にした事業計画に対し、現在大阪府・市は湯水の如く公金を投入しており、自治体の財政運営として危険極まりない状況に足を踏み入れています。

際限なく膨らみ続ける「整備費用」

大阪カジノ・IRの開業予定地は、2025年の大阪万博の開催地と同じ「夢洲(ゆめしま)」という大阪湾上の人工島です。
ここは本来、廃棄物や土砂の処分場で、都市計画上の用途としても人を集める商業利用を想定していませんでした。それを無理に商業地域にしたため様々な不都合が生じています。

地盤は極めて脆弱で、土壌汚染の恐れがあり、生活・交通インフラともに未整備で、防災機能は皆無です。もちろん病院も消防も警察もありません。
このような場所に年間2000万人を集客する施設や万博を誘致しようとするわけですから、整備計画は著しく難航し、それに伴い建設費用も青天井で膨らみ続けています。

自民党の川嶋広稔大阪市会議員の試算を基にしたダイヤモンド・オンラインの記事(有料)は夢洲および周辺の整備費用は2020年の2275億円からわずか一年で4030億円へと異常な膨張を見せさらに膨らむ恐れがあると指摘しています。
中でも懸念されるのが土壌汚染対策のためにIR事業者に支払われる788億円という巨額の公費負担です。しかもこの金額は事業者の要求でさらに増額される可能性があります。

一方で、これだけの支出をしながら、目玉だったはずの国際会議などを誘致するためのMICE(マイス)機能は当初計画の10万平米から2万平米へと大幅に縮小されています。
これは国際的な水準はもちろん、既存のインテックス大阪にさえ遠く及ばない規模であり、大規模な国際会議や見本市などの誘致はもはや不可能であると言わざるを得ません。

その他、防災機能の整備や環境対策には現状ほとんど手が回っていない状況なので、今後どれほど費用がかかるか(かけられるか)は未知数です。
特に、埋立地である夢洲は津波、高潮、液状化、ライフラインの寸断などの災害リスクが極めて高く、対策は不可欠です。
2年後に開催予定の万博まで、さらにはカジノ・IR開業予定の7年後までに可能な限り防災機能を高めることが求められます。

事業の成否、どちらに転んでも経済にマイナス

実は大阪カジノ・IR計画は当初の内容から大幅に変更されています。
もともと万博やIRの誘致が立案されたのは新型コロナウイルスの流行以前の観光インバウンドが旺盛な時期でした。ところがコロナ禍によって世界の観光産業や観光地は壊滅的な打撃を受け需要は激減しました。

大阪カジノ・IR計画も中国やアジアの富裕層を当て込んだビジネスだったと言えますが、その後計画は大幅に変更され、国内邦人がメイン客となりました。外貨を稼ぐ政策が日本人の富を海外事業者が吸い上げるビジネスモデルへと変容したのです。

先に7兆円の掛け金などあり得ないと述べましたが、仮に事業が「成功」したとしたらどうなるでしょう。それだけのお金が日本人の財布から夢洲のカジノに吸い上げられれば、ミナミや心斎橋、梅田、その他周辺自治体も含めた地域の経済は干上がってしまうのは確実です。

IR・カジノ施設はその一箇所で飲食や買い物、遊びや宿泊が完結し、カジノ業者はできるだけカジノに客を囲い込もうとします。観光客にしろ地元住民にしろ、地域を回遊することなくお金と時間はすべてIRで消費されてしまうことになるでしょう。

客の50人に一人がギャンブル依存症に

カジノ事業者自身が認めるところによると来場者の2%はギャンブル依存症になると想定されています。計画通り2000万人の来場があれば40万人がギャンブル依存症になる計算です。
これはもはや他人事ではない水準で、皆さん自身がカジノに行かないとしても、家族や友人、会社の同僚や近隣の住人が依存症になる可能性は大いにあります。

大阪の治安の悪化は不可避


ギャンブルは治安の悪化にも影響します。この課題に対しては大阪IRの区域整備計画にも対策が盛り込まれています。
カジノで負けた客が直接的に窃盗や特殊詐欺に手を染める可能性はもちろんのこと、闇金融や密売など非合法なビジネスが横行することは容易に予想できます。

さらにそこから生まれた「ブラックマネー」の資金洗浄にカジノが利用される恐れもあります。
カジノとマネーロンダリング(資金洗浄)に強い関係があるのは周知の事実で、マカオやマニラは中国国内の汚職や犯罪で生み出された「汚れた金」の資金洗浄の温床となって来ました。
「汚れた金」はさらなる「地下経済」を生み出し、循環することで、反社経済圏を拡大します。

門倉貴史氏の著作「日本の「地下経済」最新白書 闇に蠢く26.5兆円の真実」によると、脱税を除いた日本の地下経済の規模は2016年で約6.9兆円とあります。
大阪に巨大なカジノが生まれれば国際的なブラックマネーも巻き込みながら大阪の地下経済は一気に拡大することが懸念されます。

特に私が何よりも心配するのは、このような地下経済の拡大が半世紀(※カジノの契約期間)以上も続くことによって、大阪の街から明るさや活気、安全安心が失われ、退廃的で虚無感に満ちた荒廃した街になってしまわないかということです。

「私はカジノには行かない、ギャンブルはしない」では済みません。
むしろ無関係な人ほど、カジノの整備に税金が使われること、カジノによって家族や友人や子どもたちの生活や未来が脅かされることに「反対」の声を上げて欲しいと思います。

行政が主導してギャンブルを整備することは適切か

ギャンブルは客の財布から胴元のポケットへと「その場」で金が移動するだけのゲームであり、対価として手元に残るものはありません。つまり経済効果が極めて低い消費活動です。

倫理的にも、カジノの利益は人の不幸の上に成り立つものです。

飲食店がおいしい食事を提供してくれたことに対する支出や、お店が便利なものを作って売ってくれたことへの支出とは根本的に異なる異質なビジネスです。

このような産業に国や地域の経済成長を託すということに私は強い違和感を感じますし、国や自治体が率先して整備することに強く異議を唱えたいと思います。

IR・カジノに成長を託すな

私は以前から観光産業自体が脆弱な産業であることを指摘して来ました。
象徴的だったのは日本中がインバウンドに沸いていた平成30年に台風21合が近畿地方を襲い大きな被害が出たときです。関西空港へのアクセスが麻痺し、観光客が大阪の街から消えました。あの時見た道頓堀商店街の閑散とした風景に強い衝撃を受けました。

そしてその後にはコロナ禍が起きました。

著名な海外の投資家は「観光産業は疫病、災害、戦争、外交問題が起きれば真っ先に潰れる産業であり国が主導してやるべきではない」と喝破しました。正鵠を射た言葉だと感じます。

観光産業は他に売るものがない国や地域であれば意義もあります。
しかし確固とした既存の産業や強固な経済的地盤、長い歴史と伝統、新しいものを生み出す十分なポテンシャルを持った大阪の町で最優先で入れあげる産業ではありません。
大阪にすでにある地域を支える産業をしっかりと成長させれば、観光は後からついてきます。要するに大阪は「政策の順序」がおかしいのです。

ひるがえって夢洲は、もともと私たちの日常生活や産業活動を支える重要な廃棄物の処理場であり、埋立が完了したエリアは重要な物流拠点として稼働しています。
現在、物流における国際競争は激化しており、その中で日本の港湾は遅れを取っています。整備しなければならない港湾機能はいくらでもあります。
先述したようにすでに数千億円もの巨額の予算が夢洲の「誘客のための整備」に費やされてきました。780億円もの港湾会計からのカジノ事業者への支出は財政を硬直化させ、さらに貴重な港湾の土地を失うことは、将来的な大阪の商業機能を大きく損なうことになるでしょう。

「カジノに反対するなら対案を示せ」とはよくある指摘ですが、夢洲で何をすれば良いかは明白ではないでしょうか。

大阪カジノ・IR計画に住民合意はあるか

「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」は、3月24日に大阪府議会で、同29日に大阪市会でそれぞれ可決、承認され、国に提出されました。

府・市議会での可決後には、カジノの整備に住民投票を求める直接請求署名運動が行われ、法定署名数を大きく超える約19万筆の署名が集められました。これを受けて大阪府の吉村洋文知事は7月29日議会を招集しましたが、議会はこれを否決しました。

現在、計画案は国の認定審査中にあり今秋中には結果が出るのではないかと言われていますが現時点で審査の経過状況は不明です。

国の認定審査は二段階あり、第1段階では観光庁が19項目の「要求基準」を審査し、第2段階では有識者委員会が25項目の「評価基準」を審査する流れになっています。

各項目の詳細については割愛しますが、重要となるのが要求基準、評価基準ともに項目として設定されている「地域との合意形成」です。
要求基準では合意形成の手続き方法について、評価基準ではその結果について審査されるものと思われます。

両審査機関がどう判断するかは未知数ですが、私は大阪IR整備計画においては合意形成手法も合意形成結果も到底基準に達していないのではないかと感じています。

大阪府IR推進局は、住民からの意見を聞く公聴会をわずかに4回しか開きませんでした。それでも参加した合計40名の公述人のうち35名は否定的な意見を述べたと聞きます。

一方で住民への説明を行う説明会もわずかに府下で11回/6市で開催が計画されたのみでした。しかも府は新型コロナウイルスの感染拡大を理由に開催を7回で打ち切るという対応をし批判の声が上がりました。

その他にも、IR事業者との契約交渉内容について情報開示を求めた請求についても大阪市はこれを非開示として退け、行政としての説明責任を果たそうとしていません。(その後、訴訟を起こされています)

これらの様々な経過を見る限り、どう考えても「地域との合意形成」は成されているとは言えないのではないでしょうか。

観光庁の職員、有識者委員会の皆様におかれましては、この事実をしっかりと認識していただけることを切に願うばかりです。

国に対し大阪カジノ・IRに関する要望に行ってきます

最後に。
詳細はまだ固まっていませんが、近日中に所管の省庁に対し大阪カジノ・IR計画の現状を伝え、要望を行うため上京します。

このブログを最後までお読みいただいた方は、どれほど大阪のカジノ・IR計画がおかしなものかおわかりいただけたと思います。
私はこのまま計画を進めてしまえば大変なことになると強い危惧を抱いています。
どうか国に「反対」の声をしっかり届けるために、是非とも下記の署名にご協力ください。

No! 大阪IR・カジノ「大阪IR・カジノ」認定にあたっての国への要望運動
団体賛同 https://forms.gle/5N2R5kM8SHzbznYq7
個人賛同 https://forms.gle/WNWHcF2KYEWUmxPZ8

もう署名したよ!という方も、できるだけ多くの方に署名の輪を広げていただき、我々の活動に力をお与えください。「数は力!」です。

どうかよろしくお願いします。

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