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【図解】1分でわかる「上海電力 大阪咲洲メガソーラー問題」

はじめに

いわゆる大阪咲洲(さきしま)メガソーラーを巡る『上海電力問題』については、主要メディアがほとんど報じていないこともあって、一般の方々にはあまり知られていません。
他方、関心の高い方々は、ウェブ、SNS、動画などですさまじい情報収集を行っていらっしゃって、その熱量に私も非常に驚かされています。

しかし私は、この問題の複雑さや不透明さが興味のない方やじっくり時間を割けない方々を遠ざけてしまっている感がすごくあって、非常に重要な問題であるにも関わらず、議論が錯綜したり、論点がずれたりしていることに、少なからず懸念を抱いておりました。

そこで改めてこの問題を整理するとともに、これまで関心のなかった方や詳細まではわからないという方々にも、この問題について知っていただこうと本稿を緊急執筆した次第です。

「とりあえず【図解】だけ見たい!」「1分で知りたい」という方は、次の目次の2だけお読みください。

全文は論点を絞ってできるだけ簡潔にまとめたつもりですが、それでも読むのは10分くらいかかるかと思いますのでご了承下さい。
さらにもっと知りたいという方は、すでにネットに膨大な情報の蓄積がありますので、検索してみてください。

【図解】1分でわかる「上海電力 大阪咲洲メガソーラー問題」

とりあえず、「上海電力 大阪咲洲メガソーラー問題」について簡潔に知りたい方のために、図解(一枚絵)を作成しました。
この図は内容を改変しない限りは配布自由とさせていただきます。ご自由にご活用ください。

上記画像は内容を改変しない限り配布自由です

以下よりは、本文です。

「上海電力問題」とは何なのか

一言で言うと「橋下市長時代の大阪市で、奇妙な契約手続きによって、中国政府の強い影響下にある企業が、太陽光発電事業を始めた」というものです。

この問題に対しては「経済安全保障」「国防」「電力問題」「山林開発」「行政手続き」「政治家の国家観や倫理観」など様々な観点から意見が百出し、すべてを追いかけるのは不可能なくらい議論が広がっています。

しかし私は、この問題はシンプルに「入札や公募といった行政手続き上の疑義」であると捉えています。
おかしな入札や公募案件、あるいはズバリ「汚職」というのは、全国の自治体でたびたび問題となっていて、その点から言えば確かに、本件は取り立てて珍しいものでも、規模の大きなものでもありません。

しかし、

  1. 事業が私たちの生活に最も重要な「発電インフラ事業」であったこと

  2. 中国共産党の強い影響下にある企業が落札したこと

  3. 契約の流れが誰がどう見ても不自然であること

  4. 毀誉褒貶ある市長や政党の絡む案件であったこと

  5. 関係者や展開や背景に小説や映画のような「奥行き」があったこと

などの理由により、ネットを中心に議論は大きな広がりを見せることとなりました。

何が問題だと言われているのか

前述したように、本件は議論や指摘される点が多すぎて、すべてを網羅するととてつもない長文になります。
すでにネットや雑誌にも膨大な記事や論考が出されておりますので、詳細はそちらに譲りたいと思います。

ここでは一点のみ、実質的な中国政府の国営企業である「上海電力日本」が、どうやってこの「咲洲メガソーラー(以下、咲洲MS)」を始めとする全国の発電事業に参入したかについてだけ記したいと思います。

咲洲MSは当初、伸和工業株式会社と日光エナジー開発株式会社という二社による企業連合体が落札しました。
しかしこの二社は太陽光発電の実績もなく資金的な裏付けも希薄で、通常であれば選定の難しい企業でした。日光エナジーにいたっては入札の一年前に設立された企業です。

ところが咲洲MS事業は、18日間という非常に短い募集期間と、土地活用のプロポーザル(事業提案)ではなく「太陽光発電事業に特定した市有地の賃貸借契約の入札」であったことが影響したのか、この連合体一者のみの入札となり、公募価格をわずかに「1円」上回る価格で落札されます。

実は咲洲に隣接する夢洲でもMS事業は行われていましたが、【図解】を見ていただければわかるように、これら二つの事業は同じMS事業でありながら事業者選定の経緯が全く異なります。

さて、この事業者は奇妙なことに契約締結後、全く太陽光発電を開始しようとしませんでした。
契約書には半年以内に発電を開始することが定められていましたが、契約から半年経った時点で着工すらされていませんでした。その間、何もしないまま賃料だけが無駄に支払われる状態が続きます。

さらに奇妙なのは、この契約不履行を大阪市は黙認し、契約解除はもちろん特段の指導を行うこともなかったということです。

この間に、事業者と大阪市の間にはもっと不可解なことが起こりました。

契約から年末年始をはさんでわずか9日後、伸和工業の社長西村浩氏は「咲洲MS大阪ひかりの泉プロジェクト」という合同会社を設立します。(社名から咲洲MSのための会社であることは明らかです)
そして事業を放置したまま10ヶ月が過ぎたころ、なぜか先の伸和工業と日光エナジーがこの合同会社の社員となります。
その1週間後、大阪市との契約者である連合体は、この合同会社に事業を譲渡します。構成員が全く同じである「連合体」から「合同会社」に事業が移されたのです。
本来であれば、入札案件の他者への事業譲渡は認められていませんが、なぜかこのケースでは「構成する企業は同じだから」という理由で大阪市は容認しました。2013年10月29日のことです。

この時点においても、事業は一切進められていませんでした。
明らかな契約違反状態の事業者になぜ事業の譲渡まで認めたのか、非常に不可解に感じざるを得ません。

連合体から合同会社に譲渡された後も事業の放置は続きます。
そして事態が動いたのは契約から一年以上が経った2014年3月でした。

2014年3月11日、全く事業に手を付けないまま突如、日光エナジー開発が合同会社から退社します。入札に参加した企業が事業に手を付けることもないままなぜ撤退したのか、理由はまったく不明です。

一方でその5日後、ついに咲洲MSの着工のための起工式(地鎮祭)が行われました。
が、驚くべきことに、この起工式に参加したのは契約者である合同会社と(この時点で)何の関係もない「上海電力日本」でした。さらには上海電力のウェブサイトには「大阪市から起工式に招致された」と掲載されているのです。
この記述が事実であれば、上海電力と大阪市は一体どのような関係にあったのでしょうか。
この時の経緯を議会で問われた大阪市の職員は、答弁を避け明言しませんでした。

その起工式の約1ヶ月後、なんと上海電力はメガソーラーの完成を目前にしたタイミングで「咲洲MS合同会社」に社員として加入します。
結果、入札時とは全く形態の異なる事業者が公有地を利用した発電事業を行う形ができあがりました。
公共入札において応札した事業者と全く別の企業が事業を行うという「ステルス参入」のスキームが実現したのです。

咲洲メガソーラー
海を挟んだ奥の陸地が万博・IR会場となる夢洲

ステルス参入の「大阪モデル」は全国に拡大

さてここまでの経緯は「客観的な事実」のみを書きました。
本件の流れを知って感じるところは、ひとそれぞれだと思います。
しかし不可解で不明なことが多いからこそ、本件に関する議論や調査がここまで盛り上がってるのだと思います。

本稿に私の予断を記すことは致しません。
真相は時間が解き明かすかも知れませんし、霧に閉ざされたままかもしれません。

現地視察の様子

最後に、これも事実のみを記しておきたいと思います。

この大阪咲洲MS事業の後、上海電力の参入を仲介した伸和工業は泉佐野市にある自社ビルに次々と再生可能エネルギー関連の合同会社等を法人登記し、全国の事業に進出しました。
いわば「大阪モデル」の全国展開です。

大阪市会でも指摘されていましたが、この「ステルス参入」スキームでは外国企業であろうが反社組織であろうが阻止することが難しく、合同会社自体を売買することも可能です。
私には知見がありませんが、発電事業だけでなく「他の事業」にも応用できるのかもしれません。

私たち住民の貴重な財産が外国資本や反社会的組織に奪われることがないよう、本件にはらむ課題をしっかりと調査分析することが必要でしょう。
今後の動向を注視するとともに、抜け穴を防ぐための方策を自治体と国が協力して早急に整備することが不可欠であると感じます。

参考文献など


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