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Jクラブと音楽フェスの互恵関係について考えてみる

皆さん、こんにちは。野村です。

夏真っ盛りですね〜。夏になると人が集まる場所といえば、夏フェスですね〜。

もちろん、祭りや花火大会もありますけど、有料イベントとして日本で大きな市場を形成しているものの一つとして、夏フェスが挙げられます。

夏フェス(音楽フェス)は2000年代から徐々に全国各地で増え始め、2010年代には更に市場を拡大していきました。

私自身は大学生だったとき、2006年に香川県で行われていたMONSTER baSH(モンスターバッシュ)という音楽フェスに行ったのが最初の音楽フェス参加で、上京後は毎年FUJI ROCK FESTIVALに行くなど、関東を中心に音楽フェスに何度も参加しています。

今回は、私が20年ほど音楽フェスに参加してきた経験に、いくつかデータを加えつつ、Jクラブと音楽フェスの互恵関係について考えてみて、最後にレノファ山口が音楽フェスとコラボする意味はあるのか?ということに触れてみたいと思います。

Jサポと音楽フェス参加層について

Jサポの年齢層は、正確にはJリーグIDの分析が必要なのでしょうけど公開されていませんので、参考にできるデータとして、デロイトが公開している「Jリーグ観戦体験分析レポート」があります。

直近の2023年度分のレポートが7月末に公開されていますので、こちらを参照してみることにします。

これによると、J1・J2・J3それぞれのカテゴリで少しだけ差があるものの、観戦来場者のうち50代が約31%、次いで40代が30%弱、次に30代が約13%で、20代はなんと全体の10%未満という状況です。20代が想像以上に少ない。

デロイト トーマツ コンサルティング「Jリーグ観戦体験分析レポート 2023年度版」より引用

一方で、音楽フェスの参加者層はどうでしょうか。統計はいくつか見つかりましたが、2023年LINE調べのデータでは、音楽フェスに参加したことがある年代は、30代が最も多く、次いで40代(33%)、20代(31%)の順でした。

また、音楽フェス別にも年代層に若干の違いがあり、よく3大フェスと称される「FUJI ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に関心がある中で、最も20代の割合が高いのは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」でした。

AMIPLE調べ「日本3大フェスの比較調査」より引用

3つのフェス全てに参加したことがある私の体感でもこのデータの通りで、出演者の傾向からも、FUJI ROCK FESTIVALは最も参加者の高年齢化が進んでおり、ROCK IN JAPAN FESTIVALは最も若者の参加が多いと思われます。

【整理】
・20代のJリーグ観戦者は、他の年代と比較すると少ない(割合は10%未満)
・音楽フェスの参加者は20代がそこそこいて、大規模フェスの中ではROCK IN JAPAN FESTIVALの20代参加者が多い。

Jクラブと音楽フェスのコラボ状況

ここ数年でJクラブが音楽フェスとコラボレーションする機会が増えてきました。具体的には、音楽フェス側にJクラブが協賛出店するパターンと、音楽フェス側のグッズにJクラブとコラボレーションしたグッズを販売する、という大きく2パターンがありますので、いくつか事例を紹介します。

SWEET LOVE SHOWER SPRING × ヴァンフォーレ甲府

毎年夏に山中湖畔で開催されるSWEET LOVE SHOWER、通称ラブシャ。このラブシャの春バージョンが今年5月に同じ山中湖畔で開催されました。参加者の年代層的にはROCK IN JAPAN FESTIVALと比較的近く、20代の参加者割合が比較的多い音楽フェスです。

ヴァンフォーレ甲府はこのフェスのアクティビティの一つとしてキックターゲットを開催。JリーグID登録&甲府をお気に入り登録の条件付きでキックターゲットに参加でき、公式球やレプリカユニフォームを景品として提供しました。

LuckyFes × 茨城ロボッツ(B1)・鹿島アントラーズ・水戸ホーリーホック

茨城県ひたちなか市で開催していたROCK IN JAPAN FESTIVALが色々あって千葉へ移転し、茨城で音楽フェスを存続させるために地元企業の協力を得て2022年から開催されているLuckyFes。

このLuckyFesの総合プロデューサー堀義人氏がバスケB1茨城ロボッツのオーナーでもある関係で、茨城県のプロスポーツ3クラブ合同で出展し、キックターゲットなどを開催。

ROCK IN JAPAN FESTIVAL × ジェフユナイテッド市原・千葉

先述したROCK IN JAPAN FESTIVALが2022年に茨城から千葉へ移転し、移転先の会場は、フクアリもある千葉市蘇我スポーツ公園に。フクアリ内でライブは行わないものの、フクアリのトイレや座席が開放され、その他のグラウンドなどにステージが設営されています。

2022年から毎年、ジェフとのコラボシャツが販売されており、多くのジェフサポ+フェス好き属性の方がコラボシャツを購入している模様です。このシャツは毎年かっこいい。

ちなみにROCK IN JAPAN FESTIVALと同じ主催者が、ゴールデンウィークに同じ場所で開催する音楽フェス「JAPAN JAM」でも、ジェフさんとのコラボシャツを販売しています。ずるい。

あと、毎回フェスにジェフさんが協賛看板を出していて、いちいちかっこよくてこれもずるい。

SUMMER SONIC × ガンバ大阪

今年のビッグなニュースとして、SUMMER SONICの大阪会場が万博記念公園ということもあり、ガンバ大阪とのコラボユニとコラボタオルの販売が決定とのこと。このように、Jクラブと音楽フェスのコラボレーションが年々増えています。

(番外編)FUJI ROCK FESTIVAL Jリーグ苗場支部

最後に、アンオフィシャルなイベントをご紹介。日本の音楽フェスの草分け的な存在であるFUJI ROCK FESTIVAL。毎年7月最後の金土日3日間で開催されていますが、この2日目土曜日の午前中にJサポがユニフォームを着て集まり、各チームのチャントを歌ったりして盛り上がるイベントが「Jリーグ苗場支部」。

私もフジロックに行っていて存在は知っていたものの、レノファ山口を応援するようになったと同時に結婚して子どもが生まれ、フジロックに行ってもこのイベントに参加を合わせることができず、未だに参加できないままです。

レノファ山口サポは、毎年大阪在住のこなべさんが参加してくださっています。私もいつか参加したい!

【整理】
・Jクラブと音楽フェスのコラボレーションイベント、コラボグッズが少しずつ増えてきている。
・Jサポ×音楽好きから一定の支持あり。
・イベントやコラボグッズ販売を通したファン層の拡大状況は不明。
・音楽フェス側のメリットはイベント出展ならフェスの盛り上げ?グッズの場合はJサポの購買意欲喚起?

レノファ山口が音楽フェスとコラボする意味はあるか?

Jリーグが2023年に発表した成長戦略の中で、このような記述があります。

-J1からJ3まで全てのクラブが、それぞれの地域で1.2倍・1.5倍・2倍・3倍に成長していくことで、Jリーグ全体の価値を向上させていく
-そのためには、各クラブがそれぞれの地域で圧倒的に露出を増やし、そして、地域ごとのスターを生み出し、ファンを拡大していくことが重要

2023年2月27日 スポーツ未来開拓会議 「Jリーグの成長戦略について」
野々村チェアマン説明資料より引用

※引用元の資料はこちら
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sports_future/pdf/002_05_00.pdf

各クラブが当然としてめざすべきは、各地域での認知度拡大、ファン層の拡大。行き着くところは興行主として観客数やグッズ販売の拡大=収益の拡大です。

その中で、今後ファン層の拡大が見込める20代へのアプローチは必要になってくると考えられます。

レノファ山口でも県内の大学生が集まった団体「シンセダイ」のメンバーが仲間集めやイベントの企画などをしています。このような自主的な動きをクラブがサポートすることには大きな意味があると思います。

でも、まだまだ20代へのアプローチが足りないと個人的に思っています。(各クラブによって抱えているファン層やターゲットが異なりますので、一概に同じアクションにはならないと思いますが。)

そこで、ですよ。山口県では「WILD BUNCH FEST.」(以下、ワイバン)という音楽フェスが、阿知須の山口きらら博記念公園で行われています。今年は8月23日(金)〜25日(日)の3日間で開催される予定。

音楽フェスの規模としては西日本最大級で、昨年ベースだと3日間で約7万5千人の集客。広島や九州でもこの規模の音楽フェスはありません。

ワイバンの参加者層は調査・公表されていませんが、出演者のラインナップから推察すると、ROCK IN JAPAN FESTIVALに比較的近い出演者ラインナップで、20代の参加者が山口県を中心に西日本全域から集まることが推察されます。

山口県内で大規模な人数が集まるイベントとしては、下関の海峡まつり、海峡花火大会、岩国航空基地フレンドシップデーなどがありますが、20代の若者をターゲットにできるイベントかどうか。(こちらも統計は見当たりませんでしたが)

スポーツ観戦と音楽鑑賞には正の相関があるという、なかなか興味深い川崎市の市民アンケート結果分析もありまして。

やはりレノファ山口がワイバン参加者の、特に山口県に住む20代へアプローチするという方向性は有効ではないか、と私は推察しています。

ぴあ株式会社グループおよび株式会社日本政策投資銀行(DBJ)グループが調査結果をまとめた、2021年に川崎市民に対して実施された市民アンケートの結果分析がこちら。なかなか興味深い。

※引用元資料はこちら
https://corporate.pia.jp/csr/pia-soken/pdf/piasoken-dbj2022.pdf

と、ここまで書いたところで、そもそもレノファ山口側のターゲットが違うとか、ワイバン側の思惑だとか・・・色々あるでしょうから、私がいくら「レノファとワイバンコラボはよ!」と思ったとしても、簡単にできないだろうと思っています。

Jクラブと音楽フェスがコラボした(例えばコラボTシャツを販売)として、音楽好き(notレノファサポ)が「あ、レノファ山口とコラボしたTシャツが珍しいから買おう」とはならないんですよね。基本は。

音楽好きの購買行動は、多くはアーティストグッズへの投資で、Jクラブとのコラボグッズを購入するのは、Jサポかつ音楽好きという限られた属性と考えます。

もし私が音楽フェスのグッズ担当で、Jクラブからコラボグッズの売り込みがあったならば、売れずに在庫を抱えるリスクを回避したいので、発注量をコントロールするか、クラブ側で在庫を持ってもらうとか受注生産の提案をするかなと。

ということで、互恵関係(特にカネに繋がるかどうか)があるかというと正直難しいですが、地域全体を文化の力で盛り上げるということには通じる部分があると思います。

WILD BUNCH FEST.は広島の夢番地というイベンターが、SETSTOCKという広島で行われていた音楽フェスの後釜として、山口へ移転して始めたものです。

きらら浜へのアクセス問題はありますが、山口にこれだけ音楽好きが大勢集まるイベントが定着したことを山口出身の音楽好きとして嬉しく思います。まずはワイバンが長く続いて、地域の皆さんを含めて愛され続けて欲しいなと思っています。

音楽を通じて地域社会の発展に貢献するのが音楽フェスの理念のひとつだとすると、Jクラブのそれと通じるところがありますよね。

いつか、レノファ山口とWILD BUNCH FEST.のコラボが実現し、山口県全体がこれまで以上に盛り上がると良いなと心から願っています。

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