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シャンディガフ

線路は血管で、電車は血液というのを見て、そしたらこの、ドア近くに立ち、私は赤血球だろうか、白血球だろうか。違いも分からない、この変わり映えしない灰色のコンクリート壁をぼーっとみているとピントが合わない。いつからだろうか、大学3年くらいからだろうか、それとも去年の冬くらいからだろうか…ずっとちょっとピンボケで、東京の地下を行ったり来たりしてる気がする。

「性癖、あんまりいえた話じゃなくて、正直。」
「えー、なになに、良いじゃん。」
「んー…なんか、あの、咀嚼物?が好きで、私。」
「噛むってこと?」
「うんそう、なんか例えばパンとか。好きな人にまず食べてもらうんだけど。その、噛んでぐちゃぐちゃになった後に、それを口移ししてもらうのが好きなんだよ、わかる?」
「わかんない。」
「引いてる?」
「聞かせて」
「え、うん。いやその、なんか元が乾いてるのが良くて。クッキーとか」
「ラスクとか?」
「そう!ラスクとかすごいいい。」
「何がすごくいいの?」
「ラスクってさ、普通は硬いじゃん。パリってなって。でもそれが、一口目から柔らかくて、もう甘いの。あぁ、好きな人の唾液で、作られた甘いものって感じがして、咽喉シラフで通せない感じ。」
「ぐちゃぐちゃになってるのが好きなんだ」
「好きな人の喉しか通らないはずだったのに、自分の喉通ってさ、体の中に入っちゃうんだよ?取り出さないの、で自分の何かになっちゃうんだよ?すごくない?」
「何かってなんですか?」(少し笑いながら)
「筋肉とかさ」
「エネルギーとかね」
「エネルギーとか、ね。そうそう。」
「たんぽぽっていう映画知ってます?」
「知らない」
「メインの話忘れちゃったんだけど、帝国ホテル?みたいな、高級ホテルに泊まってるカップルが、朝ご飯に出てくる卵を口移ししあうの。男の人が卵を割って、卵黄だけ取り出すの」
「殻と殻で?」
「殻と殻で、そう。で、卵黄を口に入れるの男の人が。で、対面で座って、男の人が上に乗って、口づけしながら、卵黄を女性の口に流すの。で、女性は割らないように受け取るの。」
「わぁ」
「で、そのまま順番こで、移し合うの、卵黄。」
「殻と殻みたいじゃん」
「殻と殻みたい、そう。で、最後ぷつって、卵黄が女のひとの口で割れて、顎にゆっくり垂れてくのね。黄色いのが。で、確かそこで終わり。」
「えーやばいね、それ」
「でしょ?でもいいね、そのそういう性癖。」
「思ってないでしょ」
「思ってますよ。その、特に旦那さんとそういうことできるのがいいですよね。」
「あ、ううん。旦那とは5年レス。さっきの、ナンパの。」

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