2023年現役ドラフト、東京ヤクルトスワローズの動きを出来るだけポジティブに解釈したい

本日12月7日、第2回現役ドラフトが行われました。思い付いて即書いているので粗雑ですが、ご容赦をば。
結果は以下の通り。

端的に言いますと、東京ヤクルトスワローズからは梅野雄吾投手を放出し(指名球団は中日ドラゴンズ)、読売ジャイアンツから北村拓己内野手を獲得しました。
ぼく自身は好意的に捉えたんですが、どうもX(Twitter)を漁ると否定的な意見が目立つ。理由に察しは付くんですが、そこは後述します。それでも球団に罵詈雑言を浴びせる言動を擁護はしないけど。

では、早速本題に入ります。


放出した「梅野雄吾」について。

梅野の成績はこんな感じ。

今季こそ一軍での出番が得られず5登板に留まりましたが、2019年には68試合に登板して2勝4セーブ28ホールドをマーク。2020年には42試合、2022年には41試合に登板し救援陣の若手として活躍、通算216登板で74ホールドを挙げるなどの実績を残していました。

では、なぜ梅野を放出したか?

否定的な意見が多かったことの多くは、「東京ヤクルトは基本的に投手が弱点のチーム」と見られていることに起因しているはず。確かにそれは間違っていません。なので概説としてそれを否定は出来ないのですが、この投手陣を「先発陣」と「救援陣」に分けると少しずつ事情が変わってきます

東京ヤクルトの明確な弱点は「先発陣」にあるのは抑えたいポイント。今回の現役ドラフトでは先発投手が絡まなかったのでスルーしますが、「救援陣」に絞って言えば東京ヤクルトは(相対的に)そこまで苦にしていない部分である、くらいは言えるはず。
今季は投手陣が総崩れだったとはいえ、チーム最多登板の清水昇と木澤尚文が56試合に登板しともに防御率2点台。それに次ぐ50試合登板の石山泰稚は防御率4.40と不安定でしたが、抑えの田口麗斗は33セーブを挙げ防御率1.86の活躍を見せています。
以下、星知弥(47登板・防御率3.38)、大西広樹(46登板・防御率3.60)、山本大貴(42登板・防御率2.55)が40登板以上。今季は登板機会の減った今野龍太も26登板で防御率3.77、今季台頭の兆しを見せた丸山翔大が21登板で防御率4.05と続きます。
リリーフを防御率で見るのが適切ではないのと、上記9人を合計した救援敗戦(失敗)が26個もあるのはネックではありますが、数字を並べれば「一軍級はそこまで弱点ではない」と言ってもいいと、ぼくは思っています。

ただ問題視したいのは二軍で、ここはハッキリ言って運用も成績も壊滅的。件の梅野が35登板54.2投球回で防御率4.28で、以下主に救援として登板していたであろう投手の成績がこれ。

  • ライネル・エスピナル:20登板44.0投球回 防御率5.11※退団

  • 長谷川宙輝:38登板43.0投球回 防御率2.93

  • 柴田大地:40登板38.2投球回 防御率5.59

  • 成田翔:37登板36.2投球回 防御率5.15※退団

  • 竹山日向:14登板35.1投球回 防御率4.33

  • 久保拓眞:38登板33.2投球回 防御率4.54※退団

  • 尾仲祐哉:26登板30.1投球回 防御率2.67

  • 嘉手苅浩太:16登板29.1投球回 防御率5.52

  • 大下佑馬:29登板26.1投球回 防御率7.52※退団

  • 鈴木裕太:26登板26.1投球回 防御率7.18※退団

本当に酷い数字が並んでいて、二軍投手陣に関しては「育成の体を成していない」と言われればぼくだって口をつぐまざるを得ない
が、この件に限らないけれども「ファンが見ている視点・見えている情報」と「現場が見ている視点・見えている情報」が違うことは自覚していなければいけません
新人ドラフトではある程度稼働出来るであろう大卒・社会人の投手(1位西舘昂汰、2位松本健吾、3位石原勇輝)を上位で3人固め、育成前提ながらも先発候補としてミゲル・ヤフーレを獲得。育成ドラフトで指名した髙橋翔聖は高卒ですし、現在台湾にいる関係で1年目にイニングを稼ぐことをあてにしてはいけないものの、そこは「二軍投手が一軍を目指してイニング消化も含め奮起しなければいけない」のもあるし、「出来るだけ怪我による戦線離脱を無くす起用やアフターケアをする」こともしなければ行けない。
書いていて確かに不安要素が大きく、批判の声が多くなるのもむべなるかなと思いつつ、そこは現場の選手には奮起を、首脳陣には慎重さと大胆さを併せた運用と着実な育成を期待したいと思います。

身も蓋もないことを言ってしまえば一介のファンの立場では「起こったこと」を変える力などないので、善後策を考える見方が色々あれど(言葉さえ適切に選べば「批判」もしていいし)、最終的には「見守る、応援する」マインドが必要ですね。

獲得した「北村拓己」について。

北村の成績はこんな感じ。

2020年に57試合出場を果たし、翌2021年はスタメン出場の機会も度々得て53試合に出場し打率.250、4本塁打。2022年、2023年と出場機会を減らしてはいるものの、スペックとしては概ね「内野手をそつなくこなせて、打撃にも一定の期待が出来る選手」だと思います。
梅野の項でも言及しましたが、「投手力に不安を抱える」東京ヤクルトの強みと言えるのが「攻撃力」。北村のポジションである内野手はホセ・オスナ、山田哲人、村上宗隆、長岡秀樹としっかり固められているので(今季は成績を軒並み落としたが)、北村の獲得は「さて何ぞや?」となるのもこれはうなずけるポイントです。

なので、ここから精査したいのは「北村をどこでどう使うか」。
北村は特に身体能力が秀でているタイプではなかったはずですが、守備技術がしっかりしているので二塁手が出来ると言う利点があります。
二塁手には山田がいるじゃないか!」と思われた方はご名答。しかし山田はここ数年コンディションが思わしくなく、今季に関しては105試合で打率.231、14本塁打と山田比では物足りない数字になってしまっています。まだ山田も老け込む年齢ではないので復活には当然期待しますが、次世代を担うであろう武岡龍世もブレイクへの兆しを見せたとはいえまだ22歳(大卒ルーキー相当)、成績も84試合で打率.219、1本塁打。まだ競わせたい立場です。
バックアッパーとして考えるならば北村は代打も任せられそうだし、守備もある程度は計算出来る。そこは今季から加入した三ツ俣大樹と比較すれば北村の強みになり得る部分だし、他の内野手候補で年齢が近い元山飛優・太田賢吾・宮本丈への刺激にもなり得えます。スタメン、レギュラーと考えると北村がそれを獲る確度は低いと思いますけど、チームとしては決して「下策」ではないはずです。

「自分だったらどうしたか?」と、現役ドラフト全体への雑感。

現役ドラフトも割と選手やそのファンにとってはデリケートな部分だと思うので、言い辛い部分ではあります。

結果だけを論じるなら、投手を放出して野手を獲るムーブは率直に言って「想定外」でした。それに全体を通して見た時に、「速球派に分類できるリリーバー」は梅野以外にもオリックス→阪神の漆原大晟、東北楽天→広島東洋の内間拓馬、阪神→巨人の馬場皐輔、中日→オリックスの鈴木博志と出ているので、供給としては食い合ってしまった感があると思います。通算成績ではこの5人だと梅野が一番上だとは思うんですが…………。
なので、候補にした梅野を指名した球団数の多寡で東京ヤクルトの指名順が決まり、「そこからその時点で選べる選手」がどうだったかを慮る必要はあると思います。もちろん守秘義務があるのでファンの立場で全てを知ることは出来ませんが、もし残っていた中で北村を現場は「獲ろう」となったのであれば、そこは(梅野よりも需要が高そうな選手を出せれば、などの考え方もあるでしょうが)他11球団の動きや兼ね合いもあるので「そりゃ思い通りには行かないよね」と言う話だと思います。

ちなみに、それでも敢えて野暮を承知で「自分がフロントなら誰を放出候補に据えるか?」と言われたら、それはぼくだって投手陣は極力避けると思います。実名を出すと失礼もあるでしょうが、個人的には上述した元山飛優、宮本丈、太田賢吾あたりが(条件を満たしているならば)候補になるかなと。特に太田は二軍では好成績を残しているので、一軍で使う余地がないのなら他球団で活躍しているところを見たい選手ではありました。太田は太田で現状「打撃で成績を残さないといけないタイプ」なのが、厳しいところではあるんですがね…………。
そして獲得するなら、「実際に指名された選手」に限って言っても投手であれば、怪我がちでまだ一軍実績が少ない内間以外には突っ込んでよかったと思います。

これも梅野の項で言いましたが、「ファンの立場」でモノを言うときに「批判は言葉を選ぶこと」と「結果はファンには変えられないので受け入れて、応援の気持ちを持つ・作ること」は大事だとSNSを見て改めて思っています。
まあ多少オカルティックな話になるんですが、近年の東京ヤクルトはフロントの補強への動きに疑問符を持たれても関係なしに上位に行ってしまうことがあるので(もちろん下位に沈むことも少なくないが)、結局は選手の頑張り、首脳陣とフロントの頑張りに左右されます。退団した梅野の活躍もそうだけど、北村にも「あの時指名して良かった」と多くのファンに思われる活躍を期待したい。

あとまだストーブリーグは終わっていないので、どうしても批判したいにしたって最低でも来年2月まで待っても遅くないとは思いますよ。

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