8月上旬に考えてみる、東京ヤクルトスワローズの2024年ドラフト

ぶっちゃけ思い付きです。書きたくなったんだからしょうがないじゃない。

1990年代の暗黒時代真っ只中の阪神タイガースは「5月からストーブリーグが始まる」なんて言われていた気もしますが、そんな自虐ネタでなくともオールスター明けの7月下旬以降に上位進出の目がなくなったチームはどうしてもその手のネタが(ファンの間では)上がりやすくなると思います。それに乗っかります。

視点や角度はいくらかありますが、今回はドラフト。他のアプローチを書く気は今のところないですが、個人的に思ったことをつらつらと垂れ流します。


まずは現有戦力の確認から

成績は全て7月末時点です。あくまで主観。

先発投手

今季に関してはM.ヤフーレが先発ローテーションで概ね稼働しているのが個人的には嬉しい誤算でしたが、さすがに研究されたか疲労も出たか、最近は成績を落とし気味。社会人から2年目で先発ローテーションを担う吉村貢司郎も成長の跡は見せているもののエースと呼べる成績ではなく、反対にこれまで主力として先発ローテーションを担ってきたサイスニード、高橋奎二、小川泰弘らは不調。奥川恭伸はまだ病み上がりでイニングを食えず、スタッツがチーム内では優秀な小澤怜史が現状便利屋扱いされている現状を踏まえると、先発投手の補強は相変わらず最重要課題です。

二軍に目を向けて見ると、昨季横浜DeNAからトレード移籍した阪口皓亮は6勝を挙げ防御率1.27と優秀な成績を残していますが、一軍では結果を残せていません。投球回数で括ると高梨裕稔と原樹理がイニングイーターとしてそれなりの成績を残していますが、この2人が(来季もいるかはともかく)一軍でこの先結果を残せるかと言われると微妙なところ。次いでイニング数の多い育成の沼田翔平は支配下登録するには物足りないスタッツです。
ちなみに二軍成績では、山野太一が3勝を挙げ防御率1.29とこちらも優秀ですが、一軍では1勝を挙げているものの防御率8.31。一軍初登板初先発初完封をマークした松本健吾もその後は一軍で結果を残せず、二軍ではしかし防御率1.08の成績。この阪口・山野・松本健と言った、いわゆる「二軍の帝王」やそれに類する立ち位置の選手をきっちり一軍の戦力にしていけば層は厚くなるんですが、それは現状叶っていません。

救援投手

救援陣は先発陣と比べれば相対的にマシで、今季は清水昇が絶不調で二軍調整を強いられているものの、大西広樹・木澤尚文・星知弥・石山泰稚・山本大貴・田口麗斗らを揃えた救援陣は決して他球団にも劣らないと思います。
起用法うんぬんだと「なんで丸山翔大を一軍に上げないんだろうな」と個人的には強く思いますが、概して「優先事項ではない」でしょう。30代中盤の石山に代わる枠は想定しておくべきですが、これは丸山翔で埋められそうな気はするんですよね。
二軍では柴田大地と尾仲祐哉が防御率1点台を記録している一方で、大卒以下の世代である竹山日向や坂本拓己は現状壁にぶつかっている状態。チームの育成に対する力量を見るなら、下位指名だったとはいえこの2人のうちせめてどちらかはモノにしないといけないんですが、それも厳しそう。

ドラフト戦略に関して言えば、東京ヤクルトは「最初からリリーフ向きの投手をドラフトで獲らなくていい」と思っています。東京ヤクルトは…………特に現行の高津臣吾監督の下では…………先発として目されていたドラフト上位指名の投手を簡単に救援に回しがちで、放っておいても誰かが救援に回って来るから。清水や木澤がその典型で、現状だと小澤がその立ち位置になりかかっています。
そもそもドラフト市場においては先発のほうが救援より価値が高いので、最初から救援専門の投手はよっぽど何らかの実績かポテンシャルがないと指名しなくていいくらいですし、先発→救援は容易でも救援→先発が難しいプロ野球において「大は小を兼ねる」は「先発が出来る」が前提になります。その辺りのチームの現状(育成実績の不足、先発育成の我慢の不足)は不満ですが、かと言って選手がプロとして長く飯を食っていくためには配置転換が必要なことも当然認めなければいけないので、ここは相当にジレンマを抱えてるところ。

捕手

現状は実績豊富な中村悠平と今季台頭してきた松本直樹、そして第三捕手として西田明央が一軍に帯同するのが基本パターン。
SNSではぼくはしょっちゅう言っているんですが、特に西田に対しての「なんで一軍にいるんだ」は「本来一軍にいないといけない古賀優大と内山壮真が怪我で戦線離脱しているのが悪い」。これで松本直もイマイチ結果が出ていなかったら…………と思うとゾッとします。現に捕手が足りなくて橋本星哉を支配下登録し、独立リーグから中川拓真を緊急的に獲得したくらいですからね。
しかし「次世代の正捕手」となると、中村の後継は古賀か内山か、はたまた高卒ルーキーながら鮮烈なデビューを見せた鈴木叶かと候補はいるので、ドラフト戦略においては一番後回しでいい部分です。数としては補充的に育成ドラフトで誰かしら指名したほうがいいとも思いますが、本当にそれくらい。

一塁・三塁

現状のレギュラーは一塁にJ.オスナ、三塁に村上宗隆。オスナは2025年から新たに3年契約を結んだので、しばらく心配はいらないはず。村上は2022年に三冠王を獲った時は「2~3年後にはメジャーだろうな」と思ったのですが、現状はとてもメジャー移籍は出来ない数字なので、これもしばらくいるものと思っていいでしょう。
なのでぶっちゃけここも優先度は低いですが、怪我に強い2人とは言え不慮の怪我や極度の不振、もしくは(特にオスナは)疲労を考慮してスタメンから下げる選択肢もないわけではないので、その代替も考えないことはない。ただこれもユーティリティーとして宮本丈、北村拓己、増田珠、太田賢吾らがいるので、やはり現状は優先度は高くないでしょうね。

二軍では候補として西村瑠伊斗、北村恵吾、育成の髙野颯太の名前が挙がるか。育成高卒ルーキーの髙野は相当な時間が必要な成績ですが、大卒2年目の北村恵は二軍では打率がまずまず、高卒2年目の西村も成長の跡は徐々に見せつつあるので、まだ「一軍で使おうか」と言うほどのスタッツがないとは言え後継としてはこの2人が現状は候補になるはず。ただしこの2人が両方ともモノにならなければ、その時はジリ貧です。

二遊間

遊撃手の長岡秀樹はまだ22歳と若く、それでいて既にチームの軸にまでなっているので優先度は低いです。仮に長岡が不慮の離脱をしても、後述する二塁手候補の誰かが埋められる穴と言っていいと思います。

現状大きな課題となっているのは二塁手で、山田哲人が不振から抜け出せない上に故障離脱も頻発するなど、世代交代を嫌でも考えなければならない時期に来ました。候補になるのは長岡と同期の武岡龍世か宮本丈、二軍では伊藤琉偉か小森航大郎が挙げられます。本命は守備では既に一軍クラスに成長して来たと言ってもいいだろう武岡ですが、残念ながら7月末時点で打率は.196。ゆくゆくは武岡に二塁手レギュラーの座を射止めて欲しいとしても、この打撃成績では当然「安泰」とは言えないので、武岡を突き上げる他の選手の活躍がチームにとって重要になります。
宮本は今年29歳を迎えるシーズンなので後釜には考えにくいから、台頭して来てほしいのは現有戦力では伊藤か小森のどちらか。二軍では伊藤と小森が打席数でそれぞれ1位と3位となっており、首脳陣からも期待を受けているのは確かでしょう。個人的にルーキーイヤーの伊藤はまだ二軍で課題が山積していると思うものの、3年目を迎える小森は持ち前の機動力で17盗塁をマークし、打率も.252と打低傾向にあってはひとまず及第点の数字を残していると思うので、残りシーズンで一度小森の一軍昇格は見てみたいです。

外野手

高津ヤクルトで主力を張って来たD.サンタナと塩見泰隆は30代を越え、ともに故障離脱が頻発。試合に出られれば期待に応える活躍を見せる実力は疑う余地がないものの、故障のリスクが多い2選手を抱えると目先のことも考えたくなります。
出場試合数で言えば新加入の西川遥輝、そして今年スタメンを多く勝ち取っている丸山和郁が外野手のキーパーソン。ただし西川がここから再びレギュラーとして一線級の成績を残すとは考えづらいので、まずは丸山和がしっかりと一本立ちするのが編成として重要になります。

本来であればベテランの青木宣親が、今でもちょくちょくスタメンで出ているのはまずい状況。青木はそんなチーム事情を無視して「俺が俺が」と結果を残してくれれば個人的には嬉しいのですが、俯瞰で見るとやはり青木をベンチに追いやれない若手の現状は厳しい。今季支配下登録され、ガッツ溢れるプレーでファンの心を掴みつつある岩田幸宏ももう27歳で、プレースタイルを見てもレギュラー定着はまだしも(そこは塩見と言う前例がある)、「軸になれる」とは考えづらい。
となると期待したいのは赤羽由紘、濱田太貴、並木秀尊、今季はまだ一軍に上がっていない澤井廉なんですが、赤羽は結果を残しつつある矢先に死球で故障離脱。濱田は一軍では大ブレーキで二軍でも濱田の名前からしたら物足りず、並木と澤井は故障で思うようにプレーが出来ていない状態です。実は詰みかけているのが現状の戦力です。

あくまで外野の一ファン視点として、じゃあドラフトでは誰を指名する?

ドラフト候補の詳しい情報をぼくは持ち合わせていないので(名前を知っている程度)、「具体的に誰を指名して欲しいか」と言うのはここでは書きません。
あとついでなので言及しておくべきこととして、ドラフト指名はファンが思っているより多分「縁故採用」が多いと思います。一見不可解・非合理的に見える指名も、突き詰めていけば多少は縁故だったり「大人の事情」が絡んだりしているケースは多いんだと思います。チラッと聞いた又聞き程度の話を主張するのも不誠実ではありますが、野球界もまた人間社会の一部だと捉えれば、社会の仕組みや成り行きをある程度知っていると、そこで「関係ないだろ」とぼくは強弁できません…………。

ともあれ、ドラフトでどんな選手を指名するか。
セオリーからしたら、投手力に明確な課題を抱える東京ヤクルトは、馬鹿の一つ覚えと言われようと投手…………それも「即戦力」と呼ばれる投手に突っ込むのが自然だし、そこで失敗してもそれは結果論と言っていいと思います。
ただしそれを踏まえた上で、個人的には「1位入札は野手に行って欲しい」。

現有戦力の確認の項ではほとんど触れていませんでしたが、2024年の東京ヤクルトにおいて、野手のレギュラーで20代中盤以下の選手は三塁手の村上と遊撃手の長岡だけ。あとのポジションは概ね30代を越えており、若手の突き上げは現時点であまり激しくないのです。
要は「野手で次世代のコアとなれる選手が不足している」と言う話で、これは投手力不足を克服しようと近年のドラフトでは上位2名をほぼ投手に使って来たツケでもあります。
それでも投手力の脆弱さが克服できていないのは今の論点ではないので触れませんが、そろそろ野手でコアになる選手を獲っておかないと「ジリ貧まっしぐら」になるのは想像に難くありません。

候補として具体名を挙げるなら、2024年3月の侍ジャパン対欧州代表戦で大学生ながら招集された明治大・宗山塁青山学院大・西川史礁の2人か。
現場のスカウトは恐らく宗山のほうを評価しているように思います。宗山は大学では遊撃手を務めていて、そのままでは長岡とモロ被りしますが、東京ヤクルトでは特に「遊撃手として指名した選手を他のポジションにコンバートしてレギュラーまで育てる」実績があるので、もしかしたら山田の後釜として二塁手候補に考えているのかも知れません。
個人的に推したいのは優先度が高いと判断する外野手を守る西川ですが、先述の侍ジャパンでは故障で出場できなかった宗山とは対照的にセンセーショナルな活躍を見せた西川を、他球団が放っておくわけはない。この辺りはまさに駆け引きなんですが、投手にも目玉と言えるドラフト候補がある程度揃っていそうな今年においては、競合覚悟で野手に突っ込むのは負っていいリスクだと思います。まあ言うだけならタダなんだけど。

もし宗山か西川のどちらかに入札して当たりクジを引ければいいですけど、叶わなかった時は状況次第であるものの即戦力を見込める投手に入札していっていいと思います。投手力も課題であることに変わりなく、「競合覚悟の選手はリスクを負わないと獲れない」と言うだけで、その後のリスクヘッジは外れ1位の段階で十分回収できます。
もう少し言うなら、1位・2位の2枠のうち片方は野手で行って欲しいのと、欲を言えば2枠とも野手に突っ込んでもいい。節操がないとも言われるでしょうが、打高環境にある東京ヤクルトがこれまで投手陣強化を狙って投手の上位指名を行って継続した成果が出ていない以上、1回くらいは逆に振り切ってもいいと思うんです。苦手を鍛えて強みにした人がいないのと同じような理屈で。

3位以降は退団選手の兼ね合いもあるので現時点では断言できませんが、ここ数年のパターンからすれば支配下で指名する投手は大卒か社会人。もし高卒で獲るなら育成だけと割り切ってもいいくらいか。野手は外野手は即戦力寄りで、内野手は多少高卒を入れてもいいくらい、捕手は補充程度が全く部外者のぼくが考えるプランです。

ドラフトまではあと2~3ヶ月ありますし、その中で現場でプロが擦り合わせることを、外野からああだこうだ言うのは楽しみのひとつでもあります。
それが例えネガティブなものであってもぼくに止める力はないんですけど、現場の判断は我々ファンには見えない情報も把握し分析した上で出す結論のひとつだと思うので、今から釘を刺すならば「現場とファンで見えている世界が違うことは自覚しておくべき」、と言うことでしょうか。ドラフトに限った話ではないんですけどね。
まあ、まずは2~3ヶ月前からドラフトに逃げるような戦いをしないように、チームの奮起を願いますけども…………。

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