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8月2日の日記「人に薦めるにはまず自分から」

 

 うちの部屋のクーラーは壊れている、と、僕は思っていた。

 去年の夏頃だろうか。最初は、リモコンが効かなくなった。電池を変えても直らないから、たぶんリモコンそのものの故障だろう。それでも、直接エアコンのスイッチを押せば起動はする。自動設定で、こちらでは温度の調整ができないため、完全にエアコン側の感覚に委ねるしかないのだが。まあ、夏にあったかい空気を出すことさえしなければ、ぜんぜん許容できる。夜、寒くなるまでいったら立ち上がってエアコンを消し、暑くて寝苦しくなったらまた立ち上がってエアコンを点け……と、リモコン操作と比べてダイナミックな動きが要求されることになったが、それも許そう。

 しかし夏の終わり頃、エアコンのボタンの方も不調になった。そりゃ、エアコンの方もまさか直接ここまで押されるとは思ってなかっただろうし、しょうがない(しょうがなくないのは、ちゃんと直さない自分の方だ)。ただ、もう窓開けるだけでやり過ごせるくらいの気温になってきたし、冬はストーブあるし、来年の夏までに直せばいいやろ、と思い、放置していた。

 そしてまた、夏が来る。

 ここまではサークルの後輩から卒業記念のプレゼントに貰った扇風機で凌いできたけれど(今思うと扇風機をねだった時点で、エアコン直す気なかったのでは)、もうそろそろ限界だ。でも、今のご時世的に修理屋を家に呼ぶのは気が引けるし、何より人を呼ぶために部屋を片付けるのが面倒くさい。そこで、案外放置してたら直ってないかなーと思い、また直接エアコンのボタンを押してみた。点かない。力点を変えて、もう一度押す。点かない。また変えて、押す。点いた。

 あ、点くのね……。

 なんどか試してみたが、的確な部分を強く押せば起動するっぽい。よし、これでこの夏もやり過ごせるな! ただ、そんな変な押し方をしていたら、押し方うんぬんじゃなく完全に破壊されてしまう日も近い気はするが……ま、今が良ければ全部OKしょ!(刹那主義)

 と、言うわけで、今日は1日部屋で動画見ながら過ごしてた。友達からアイマスのライブ配信のログと、sideMのアニメをちょっと見た。他人におすすめされたコンテンツをちゃんと試聴する、そんな誠実な人間はそういませんよ。それがわかっているから、僕は他人に自分の好きなもののオススメをあんましない。どうせ見ないでしょっていうのはあるし、もしちゃんと見てくれたとして、その上で相手にハマらなかったら申し訳ないからだ。ただ、たまにオススメして、相手がちゃんと見てくれた時は、面白く思ってもらえることが多い。なので、そこらへんのセンスはそんな悪くないと思っている(思いたい)。

 そんで今回は、こっちもちゃんと見るからそっちもちゃんと見てくれよ、というニュアンスで、『仮面ライダークウガ』をオススメしておいた。なんなら、自分でも見返した。『仮面ライダー』や『特撮』という括りを超えた、僕の人生で最も好きな作品の一つだ。「もし現実に仮面ライダーと怪人が現れたら」の描写が丁寧で、非日常なのにリアリティがすごい。警察の対応とか、マスコミの反応もそうだし、個人の描写もだ。怪人が蔓延る世の中で、新しい生命を産むことに悩む母親がいる。悪を打ち倒すヒーローに嫉妬し、それに比べて自分の人生はなんて矮小なのだと卑屈になる男がいる。そのような人間模様も、クウガの大きな魅力だ。てか、逆にドラマパート長すぎ。クウガの戦闘パート毎回5分くらいしかないんですけど!?(そしてその短い戦闘パートが、めちゃくちゃ格好いい) 昔からクウガ好きだったけど、よく試聴に耐えられたな、俺。人もめちゃめちゃ殺されて、かつその殺され方エグいし。「4日後に肥大化する針を脳内に打ち込み、4日間たっぷり死の恐怖を味合わせたうえで殺す。その恐怖に耐え切れず自殺した被害者も出た」みたいなエピソード、日曜の朝に流すんじゃないよ!

 でも、相手が極悪非道な怪人だから、そいつらを殺す暴力は完全なる正義なのかと問われたら、そうじゃないんですよね。少なくとも主人公の五代雄介は、怪人に振るう拳にも苦痛を感じている。また、作中でどんどん怪人に対抗する力をつけている人間が、怪人側に近しい存在になっていきている、という示唆もあった。そんな一元的じゃない善悪の定義も、考えさせられるものがあるし、そんな世界の中で徹底的に「いいヤツ」である五代雄介が本当に眩しく見える。「皆が笑顔でいてほしい」「人を傷つけてはならない」など、五代雄介の口にすることは綺麗事ばかりで、あるエピソードではついに他人にそれを指摘される。そこで五代雄介は、「皆が綺麗事を綺麗事だっていうのは、それが綺麗だから、それが本当は1番いいんだって思ってるから」と返した。五代雄介は、自らの理想が綺麗事だとわかったうえで、それを叶えるために戦っている。自分は仮面の下で泣きながら、拳を振るい続けている。そんな姿を見ているとこっちも、五代雄介を作中でも言われていたように、「なんでだよって言うくらい、いいヤツ」だと思ってしまう。そういう風に感じ始めたのは、ある程度歳を重ねた後に見返してからだけど。そこから幼い頃より更に、この作品が好きになったと思う。


 まあ、オススメした子がそこまでハマるとは思わないけど、少しでも共感してもらえたら嬉しいな。とりあえずもう2話は見てくれたらしく、その時点で「ちゃんと見てくれたんだ……!」と感動した。皆さんも本当に他人に布教をしたいときは、「そっちのオススメもやってみるので……」と交換条件を出して、しっかり「契約」した方がいい。相手にハマるか以前に、相手が最初の一歩を踏み出すかどうかが重要なのだ。だから皆さんも僕に何か勧めたいときは、「仮面ライダークウガ見ました」って言おうな。それだけで5万までなら出してやるぞ!!

 


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