遅ればせながらバレンタインの話

 この媒体に長々と言葉を連ねるのは自分が自分の中に籠っていた時期だったから、こうして今改めてそれをのぞくと懐かしさと自己嫌悪で不思議な気持ちです。

 でも今、思い返しても「そんなこともあったな」と軽く受け止められるほど、わたしは満ち足りてます。

 タイトルにはバレンタインと書いたけど、これはその1週間前の話。友達の友達の彼と今度は向こうの地元近くである横浜に行くことになってた。

 はじめて会ってから連絡は絶えることなくて、電話も頻繁にしてたからか改札の外で待つ彼は簡単に見つかった。今思うと、どこの改札とか言ってなかったのにあそこに出られたのすごいな。

 この日の予定は彼の地元のピリ辛坦々麺と、赤レンガと、大桟橋。どれも私の知らない横浜でずっと楽しかった。繋いでくれた友達が同時に横浜にいたらしく、それに少し振り回されたりしたのもなんだかんだ私は楽しかったんだよね。

 坦々麺は思ったよりも辛くなくて、夜の赤レンガは想像以上にロマンチックだった。赤レンガに着いて、裏のベンチに座ると、それまでふつうに話してた彼のテンポがどんどん遅くなるのを感じた。「眠いの?」と聞くと、観覧車を見つめながら「ううん」と言って、「そろそろ大桟橋いこっか」と立ち上がった。

 少し不思議に思いながら大桟橋に向かう。何か失態をしてしまったんだろうか、来週のイルミネーションやっぱりやめようとか言われてしまうんだろうかとかいう不安と比例して寒さが増し、それとは反比例に彼との会話は盛り上がっていた。

 大桟橋につくと、そこは冷たくて強い海風がずっと吹いていて、でもすごく綺麗で。横浜がほとんど一望できる側のベンチに腰掛けると彼は「相談があるんだ」と切り出した。何?と返すと、「あっち(橋の先端)に行こう」と。

そして先に着くと「これからする話を〜がどう思っても、来週のイルミ、一緒に行ってくれるって約束してくれる?」と言って指切りを催促した。

私も勿論とそれに応えた。

「〜は、好きな人、いる?」 典型的とも言えるその質問のはじまりで、わたしは察しがついて心が震えた。

まさか、と思いながら、でも、思い浮かぶのはひとりだった。

「うん、いるよ」 そう答えると彼は「そっか、」と。

そして話を続けた。

「俺は、〜のことが好きです。」 

時間が止まって欲しかった。こんなにも待ち望んだ瞬間をもっとスローで刻みたいと思った。一言も逃すまいと必死に彼の瞳を見つめたから、あの時の彼の目は暗闇ながらにちゃんと覚えてる。

「だから、これからもっと彼女彼氏として沢山色んな所に行きたいと思ってる。俺と、付き合ってくれませんか」

 伝えられた言葉はシンプルで、確かで十分だった。

「私も、〜のことが好き。だから、こんな私で良ければ、こちらこそ。」

 ずっとこうなることが決まっていたみたいにすんなりと、出会ってから結ばれるには早すぎるようで、出会うのだけが遅かったのかもしれないけど。もう少し早く出会いたかったと思うほど私も彼を求めていた。離したくなかった。

 私の言葉の最後の音を聞いたか聞いてないかくらい間髪を入れずに彼は私の手を握って「ほんと?!?!ほんとに?!?!」とか「ありがとう、ありがとう」とか「これからよろしくね」とかをこれでもかと言ってくれた。

 先端に人が居なくなるの待ってたらしいけど、あんなに騒いだら何が起きてるのか丸わかりだよね笑

 どうしてあんなに苦しいはずの過去を持ってるのにこんなにもまっすぐで純粋でいられたのか、そしてそのままで私に出会いに来てくれたのか、いずれ私はこの人に傷つけられるんだろうかなんて微塵も想像つかないようなあなたと、できる限り長く一緒にいたい。


ごめん、長くなったからバレンタインの話はまた次回。笑

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