#62 テキトーな返事という優しさ

夜になるにつれて疲れもたまり、少し頭がぼんやりしてくる。

そんなときにお客さんからの問い合わせ電話があるとなかなか大変だ。相手の言っていることを理解するもの、それを踏まえた上で製品やトラブル解決方法の説明をするのも一苦労だ。電話で集中力が一瞬でも切れると、もう相手の言っていることがわかならない。なんとなく返事をしてうまくやり過ごしてしまうこともある。

こう書くとなんと不誠実な営業マンだと思う。しかし、今日気づいたのは、集中力が切れているほど、むしろスムーズに会話が進むときがあるのだ。嘘と思われるかもしれないがこれは間違いない。適当に相槌をうっているだけで、お客さんが満足してそのまま電話を終えられることがあるのだ。

逆に、下手に頭が冴えて細かい説明をしだすと、話が長引いてあちらこちらに脱線し、結果、時間だけ無情にすぎるということさえある。お客さんのフラストレーションも溜まってしまう。自分の集中力と客先の満足度は必ずしも一致しないのだ。

これには2つ要因があると思う。

一つは、そもそもそれが具体的な解決策を求めた相談ではないときだ。要するに「話せば満足する」類の問い合わせだ。この場合、細かい説明や論理的な解決案は必要ない。「そうですよね〜」の一言が大事。共感して、相手の話をちゃんと聞いているということが伝われば、それだけで話が終わることもある。手を抜くわけではなくて、相手の求めていることを把握してそれを提供するということだ。

もう一つは、話している間にお客さん自身が解決策を思いつくときだ。これも結構ある。人に説明するために、状況を言語化しようとすると、見落としていた点に気づいたり、別の要因を見つけたりすることも多い。相談することで自分の置かれている状況が整理できるのだ。

ここにも相談された側が一方的に説明をすることの弊害がある。むやみな憶測や意見をぶつけていくと、相談する側はその意見に対して反射的に反応してしまい、問題そのものからはある意味意識が離れてしまう。聞き手はどっしり構えていた方がよいのだ。

この2点は仕事上だけでなく、普段の生活でも同じではないかと思う。真剣にアドバイスしようとするとなぜだが反発を受けて変な空気になってしまうこともある一方、適当に相槌うっている方が相手が満足してくれることさえある。

だから、寝ぼけた頭で適当な返事をすることは、むしろ優しさなのだ。思いやりなのだ。話し手が楽しく、満足してくれればそれ以上は必要ないのだ。


以上、言い訳でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?