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2021年上半期 読んで良かった本 Part.1

今年も引き続き在宅ワークが中心で、休日もそこまで出かけてないのでいろいろと本を読みました。その中から特に面白かった本を備忘録的にメモしていきます。

ローマ人の物語 パクス・ロマーナ (14-16巻) 塩野七生 

文庫本だと全部で43巻ほどあるのでまだまだ先は長いですが、休日とかにちょこちょこ読み進めています。

文庫本の14-16巻は、共和政から帝政への改革を押し進めるも暗殺されてしまったカエサルの後を継いだアウグストゥスがローマ帝国の礎を築いていくパートで、ハンニバル戦記とかガリア戦記的な派手さはありませんが個人的にはお気に入りです。

英雄カエサルの「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」という言葉はかなり痺れますし、自分にも当てはまるなと思います。

しかし、カエサルは、国の指導者たちにその見たいと欲しない現実までを見せようとしたせいで命を落としたのではないか、と著者は言います。みんな薄々気づいているけど着手したくない問題を提起されたらそれは目障りですよね。世知辛いですが。

そこで、後継者のアウグストゥスは、見たいと欲する現実しか見ない人々に、それをそのまま見せるやり方を選んだのです。表向きは共和政万歳と言って旧来の指導者たちとの軋轢を避けながら、裏では着々と帝政へと進めていくというクレバーなやり方です。

そして、カエサルと比べてカリスマ性は薄く天才でもなかったアウグストゥスが自分のやり方で、天才が到達できなかった目標を達したのです。しびれるぜアウグストゥス。

THE SHORTEST HISTORY OF EUROPE John Hirst

日本語版も出てるみたいですが、勉強もかねて英語版で頑張って読みました。

ヨーロッパの歴史における重要要素として、「ゲルマン人の襲来」、「キリスト教」、「古代ギリシャ&ローマの知識」の3点をあげ、それらのポイントを中心にヨーロッパの変遷を辿っていく本です。

この本を読む前は、キリスト教支配が続いたヨーロッパ中世は、かつて古代ギリシャなどで発展した科学知識などが全く忘れ去れた暗黒の時代みたいなイメージを持っていましたが、正確にはそれは正しくなく、科学知識自体はは受け継がれていましたが、キリスト教の権威を高めるためだけに利用されたということが面白かったです。天動説とかそのあたりの説のことですね。(まぁ言い換えると科学を都合よく活用した、より闇の深い世界だったということですかね。。。)

そして、ルネサンスの時代には「古代ギリシャ&ローマの知識最高!」みたいになってましたが17世紀になると「天動説?いろいろ間違ってるよ古代ギリシャ&ローマ」みたいな時代になっていったなどという話が続いていきます。

ポイントがしっかり絞られ、それに則って論旨が展開されていくので英語でもすごく読みやすかったです。

脱線しますが、今の仕事ではスライドなどの資料作りをすることが多いですが、わかりづらい資料というのはデザインとかそれ以前にそもそも論理が通っていなかったり、伝えたいポイントが明確になっていなかったりします。逆に言うと、それらの構造がしっかりしていれば、デザインがいまいちだろうと伝わりますし、英語で書かれていてもスラスラ読めたります。

この本を読みながら、やはり英語も当然大事だけどそれ以前に日本語でちゃんと話を伝えられるようにならねばなとも思いました。笑

国家(上下) プラトン

4年くらい前に買って積読してましたがついに気合を入れて読みました。

プラトンめちゃ頭いい(という頭の悪い感想。笑)

哲学者は何を学ぶべきか、みたいな抽象的な問いから、地上にあるすべてのものはイデアの鏡像である、、、みたいなまた謎の観念的な話に広がっていきいきますが、「太陽」とか「線分」とか「洞窟」とか諸々の比喩を使った対話ベースで進んでいく話を追っていくと、なんだか納得してしまうんですよね。論理の展開が鮮やかすぎて痺れます。

「全ての西洋哲学はプラトンの脚注である」的な言葉がありますが、ロジカルシンキングとかレトリックとかちょこちょこ聞く意識高い系の概念の原点はこの人なんだろうなぁとしみじみ思いました。笑

(なぜかリンクが貼れなかった)

デザインのデザイン 原研哉

普段の仕事が結構理詰めで考えることが多いので、もう少し別の方向に頭をストレッチ したいと思って手に取った一冊ですが、デザイナーもよっぽど理詰めの職業なんだなということを実感させられました。

アートは問題提起、デザインは問題解決なんてこともいったりますが、「デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある」といった一節がお気に入りです。

他にも無印良品のコンセプトとして、「『これがいい』ではなく、『これでいい』という程度の満足感をユーザーに与える」という話も面白かったです。

」は自分で主体的に物事を選択するという、自由と隣接する価値観かもしれないと著者はいいますが、「」は時として執着やエゴイズムを生み、不協和音を発生させるという側面もあるとのことです。

あえてそれを排除することで、無印良品はブランドとしての存在感とほっとするような感覚を両立させているんだなと思いました。だから私も好きなんだろうな。笑

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まだまだ良かった本はたくさんありますが、疲れたのでまた次回更新します。笑

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