#48 記憶はどこに宿るのか

音楽と記憶は紐づいている。

よく言われることだけど、この現象はなんと名付けたら良いのだろう。

その曲を耳にしただけで、その時の感情がぐわっと湧いてくる。なんとなくノスタルジックなあの感じ。不思議だ。

卒業アルバムをみて思い出を振り返るのとはちょっと違う。それは「頭」で出来事を思い出すイメージだ。懐かしい気持ちにはなるけど、感情が駆り立てられるような感覚にはならない。

音楽を聞くと、まるで「体」がそのときの感情を思い出すかのようだ。そのときに吸った空気、感じていた気温、心臓の鼓動、あらゆる感覚が記憶を再現してくる。

音楽だけでなく、香りとか懐かしい駄菓子の味とかも同じような機能がある。

そうなると疑問なのは、「記憶はどこに保存されているのか」ということだ。

一般的に考えられるのは脳、つまり頭だと思うけど、それではこの現象に説明がつかない。頭でいくら想像したってあの感覚は再現できないのだ。

耳なのか、目なのか、舌なのか、肌なのか、心臓なのか、血液なのか、肺なのか。

思い出は、体のどこに記録されるのか。どことも言えるけど、どことも言えない。言うなれば体全部、細胞そのものに保存されるのかもしれない。


記憶は細胞に宿るのだ。


だけどそれではあまりにも無機質な表現だ。

もしかしたら、そんなことを考えた誰かが、それを「心」と名付けたのかもしれない。



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