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「アンチマリトッツォ」とかいう公演がなんでこんな大好評なんだよ

よしもと漫才劇場にて無観客で開催された「アンチマリトッツォ~奴が来たら終わり~」とかいう公演。

終演後、Twitterでは「アンチマリトッツォ」という言葉がトレンド入りするほどの感想ツイートが溢れ、大好評が巻き起こる……

……

大好評が巻き起こったのはいいけど、だから、「アンチマリトッツォ」ってまじでなんなんだよ。

そう感じている人もいるだろう。そんな人に向けて実際に本公演を視聴した身として「アンチマリトッツォ」は結局買うべきライブなのか、買わないべきライブなのかということについて言及していきたいと思う。

※ネタバレは極力控えていますが、より新鮮な気持ちで公演を楽しみたい人は読まずにさっさと買うのがおすすめです。

そもそも「アンチマリトッツォ」(略称:アンマリ)とは?

まず、そもそも「アンチマリトッツォ」という言葉を知らない人や「おさらいしておきたい!」という人に簡単に説明しておく。

マリトッツォという大量の生クリームをブリオッシュなどのパン生地でサンドしたスイーツ(マリトッツォ自体を知らない人はもうこのライブ買わなくて大丈夫ですが念の為)が流行りだしてしばらくした7月。

ある日マリトッツォを食べた令和喜多みな実河野さんがマリトッツォに対して”あまり肯定的ではない”発言をしている動画をニッポンの社長辻さんが撮影し、Twitterに上げた。

まあ「アンチマリトッツォ」と言い切ってしまうにはあまりにも不十分な内容ではある。

「(美味いけど)また買いたいな、とかはあんまりならんかった」とかその程度の弱ーい否定と、それを煽る辻さん。

しかし確かな事実として、「じゃあアンチマリトッツォですか?」という質問に対して河野さんは「大げさに言ったら、アンチマリトッツォやな」とは発言していた。

ここで「アンチマリトッツォ」という言葉が誕生し、同時にマリトッツォを食べた芸人は全員河野さんに写真を送って見ていただくというノリが発生。

すると「送ってくるな!!どんだけ食べんねん!」「これ以上マリトッツォを広めるな!」などというアンチ発言(ツッコミ)が自然と多発する。

周囲から「アンマリ先生」などと呼ばれ、全く関係のない芸人や別界隈の人からも無限にマリトッツォの写真が送られてくる(そしてその全てにツッコむ)という状況の中、次第に彼は真のアンチマリトッツォとなっていった。

これが「アンチマリトッツォ」という言葉の由来である。

そして気づいたら漫才劇場の10月公演一覧の中に「アンチマリトッツォ~奴が来たら終わり~」という公演があったのだ。

もともと買わないつもりだったが……

舞台上以外でのノリがそのまま劇場ライブになっているという異質な状況。

ただ、こういったライブも初めてではなく、最近巷で話題となったライブ「kento fukaya presents 非TikToker」なども、もともとはkento fukayaとスーズ高見によるYouTube上でのノリがライブになったものだった。

「非tiktoker」は「非」という言葉をいじったゲームコーナーなどで大盛りあがりし、ライブとして大成功を博していたため、「アンチマリトッツォ」も似たようなライブなのではないか?と多くの人が予想していたはずだ。

実際に私自身も(まあネタライブということはありえないため)トークかコーナーだろうと踏んでいて、もともとは買わないつもりだった。

個人的な傾向として、ネタが好きなので、どんなに視聴者の評判が良かったライブだったとしてもトークやコーナーのライブを購入すると思うような満足感が得られないことが多いからというのもある。

ただ、終演後の時間にTwitterを覗くと、「アンチマリトッツォ」を視聴した人の感想で溢れかえっている。そしてすこぶる評判がいい。

さらに、その感想を見ていくと「感動した」「衝撃だった」などとお笑いライブ終演後の感想とは思えない角度からの評判の良さなのだ。

まず「アンチマリトッツォ」とかいうふざけたタイトルの公演が人々に感動や衝撃を与えている事自体が意味わからないしめちゃくちゃ面白い。

そこで私も思い切って購入して観てみることに。

結果、めちゃくちゃずっと笑ってしまったし、衝撃も受けたし、何より公演としての満足度がとっても高かった。「アンチマリトッツォ~奴が来たら終わり~」は、誰も予想しなかった角度での「作品」だったのだ。

「アンチマリトッツォ」を観たほうが人

ここからは個人的な視点から「アンチマリトッツォ」を特に観たほうがいいい人を解説する。

チケットの購入を迷っている人の中で、以下の項目に当てはまる人は思い切って購入に踏み切ってもいいのかもしれない。

①アンチマリトッツォの歴史を追ってきた人

Twitterで、”よくわかんないけどなんか「アンチマリトッツォ」ってずっとやってるな……”と眺めていた人。

なんだこのノリ……とくだらなく感じていた人ほどおすすめ。

この公演を観ることで「アンチマリトッツォ」が一体なんなのか、よく分かる。

②ニッポンの社長のネタを普段から見る人、好きな人

この「アンチマリトッツォ」の企画原案はもちろんのこと、本ライブの監督・演出を務めたのはニッポンの社長辻さんである。

自分自身を含め、彼らのネタがツボな人には、かなりツボな内容なのではないだろうかと視聴中に感じた。

圧倒的な「不条理さ」が彼らのネタと共通しているからかもしれない。

③出演者のことを全員知っている人

出演者の普段の姿や人柄を把握した上で観るとより面白いことは間違いない。

逆に言うと、あまり「アンチマリトッツォ」が生まれるまでの歴史を把握していなかったり、辻さんの作るものにあまり触れたことはないという人もとりあえず出演者のことをきちんと知っていたら、多分楽しいだろう。

④マリトッツォが嫌いな人

ここまでの項目全て当てはまらなかったとしても、マリトッツォのことが嫌いであれば「アンチマリトッツォ」というテーマに共鳴してめちゃめちゃ楽しめるという可能性も、ある。

「アンチマリトッツォ」を観なくてもいい人

「全人類みてくれ!」というよりは「条件に合う人は漏れなく全員みてくれ!」という気持ちはある。身内ノリの極致みたいなところがあるからだ。

例えば口コミで超話題となった寄席や単独ライブの場合は、評判をもとにとりあえず視聴すれば間違いないかもしれない。

ただ今回は「アンチマリトッツォ」という特殊な作品のため、例えば初めて購入する配信ライブが「アンチマリトッツォ」になる人とかは………とりあえずその勇気は讃えられると思う。

【ネタバレ注意】「アンチマリトッツォ」が歴史的ライブである理由

※ここからは、このダイジェスト映像から分かる程度の範囲内でのネタバレを含みます。

個人的な感想としては、Twitterでのノリがあまりにもくだらなかったのに対し、全員がこの「アンチマリトッツォ」を作り上げるために超真剣に取り組んでいるということがまずめちゃくちゃ面白かった。

どんなシーンでもその事実が面白すぎて終始笑ってしまった。「感動!」「衝撃!」とか、「演技がすごすぎる……」とか以前に、「まじで、アンチマリトッツォってなんなんだよ」という原点の笑いが最初から最後まで止まらない。

この作品のために辻さんが3曲も作詞作曲をして書き下ろしていることもめちゃくちゃだと思う。

とにかく「アンチマリトッツォ」という存在が生まれてしまったというだけの事実に対してここまで広げた辻さんはすごすぎる。前日リハ後に突如増えた脚本も多かったようで、ここまでの完成度に仕上げた演者ももちろん只者ではない。

そして個人的に「アンチマリトッツォ」が歴史的にすごい公演だと思う理由が明確にある。

もともとガチのノリやちょっとした喧嘩、ドキュメンタリー的な内容を、舞台上に持ち込んでお笑いに昇華するというライブやコンテンツは数多く存在しているが、「アンチマリトッツォ」は、もともとなんの厚みもないノリをガチの作品に昇華し、仕上げているということだ。

こんなコンテンツは意外と存在しないのではないだろうか。

公演終了後の深夜に辻さん、さすけさん、河野さんで「まじでいいメンツでした」「またやりたい」と本気の胸アツインスタライブしてたのも良かった。公演名「アンチマリトッツォ」なのに。

世紀のダークヒーロー「アンチマリトッツォ」誕生の前日譚を、多くの人に是非楽しんでもらいたい。

笑った箇所は数え切れないほどだったが、芝居中にも普通に出てくるさすけさんの「あたし」「あーた」がもしかしたら1番だったかもしれない。

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