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幽霊じゃない

週刊台本 #32  漫才

A:この間さ
B:うん
A:ひとけのない夜道を歩いてたのね
B:うん
A:結構夜遅かったから、車通りとかもなくて、ずーっと歩いていくと、なんか後ろからつけられてる気がしたの
B:ああ
A:で、それがね、だんだんと近づいてくる感覚があって。ずーっと歩いてると、3メートル、2メートル、1メートルって足音が近づいてくるのがわかるの
B:おお
A:それで、どんどん歩いてったら、もうついにとうとう真後ろ、自分の真後ろに人の気配がするの。で、追い抜くのかなって思ったら行っても行ってもずっとビッタリ後ろにいる気配がして
B:おお
A:もう怖いから振り払おうと思って全速力で走ったんだけどそれでもビッタリ後ろについてきてて。で、意を決してバッて振り返ったら……
B:……おお。何?
A:振り返ったら!
B:何?…幽霊?
A:幽霊じゃなくて!
B:幽霊じゃなくて!?
A:顔が真っ白で髪の長い女の人だったの……
B:……それ幽霊だろ
A:いや、それが、幽霊じゃなかったんだよ
B:幽霊だろ、顔が真っ白の女が追いかけてきたんだろ?
A:うん
B:幽霊だろ、どう考えても
A:いやでもあれだよ、服は真っ白で裸足だったよ
B:だから幽霊なんだって
A:手には首のとれた人形持ってたし
B:それも幽霊が持ってそうなアイテムだよ
A:幽霊じゃないんだよ
B:なんでそこかたくななんだよ。絶対幽霊だろ。何?なんか絶対に幽霊じゃない確信でもあるの?そいつと会話でもしたの?
A:いや、話しかけようとしたら、ファーって消えてったの
B:幽霊確定じゃん
A:いや〜だから、あれなんだったんだろうな〜って思って
B:幽霊だよだから
A:不思議な話だよな
B:「不思議な話」じゃねえよ。「怖い話」だよ。話のカテゴライズが間違ってるよ
A:で、他にも最近、変なことがあってさ
B:何?
A:夜さ、なんか珍しく急に目が覚めることがあったのね。で、いやーな感じがして、そしたら、ドンドンドンドン!って玄関のドアを叩く音がしたの
B:ほお
A:で、なんだよこんな夜中に、と思ってドア開けたら誰もいなくて
B:おお
A:でそしたらさっきまでいた部屋の窓がバンバンバンバンって叩く音がして、3階なのによ?で、部屋まで戻ってカーテンを開けたら、またそこには何にもないの。で、またドアの方をぱって振り返ったら……
B:おお
A:部屋の真ん中にいたのが!
B:何?……幽霊?
A:幽霊じゃなくて!
B:幽霊じゃない!
A:白目を剥いた男の子が立ってたの
B:幽霊だよ、だから
A:幽霊じゃないんだよ
B:さっきまでいなかった男の子が入ってきたんだろ?
A:うん
B:幽霊じゃなきゃおかしいだろ
A:で、その子が、「僕のお家は上の階なんだけど、入れなくなっちゃった」って言い残して、またドアからいっちゃったんだよ
B:おお
A:で、後から調べたんだけど、上の階の子供は、2ヶ月前に川で溺れて亡くなってたんだよ
B:幽霊じゃねえかよ
A:だからそれが幽霊じゃねえんだよ!
B:なんでずっとそこだけ譲らねえんだよ
A:ほんっと、意味わかんないよな!
B:なんでキレてるんだよ
A:むかつく話だよほんとに
B:だからずっと話のジャンル分けが間違ってるんだって。怖い話として話せよ。もったいねえ
A:じゃあ、今度は廃病院に行った話聞く?
B:もういいよ

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