オタクを虜にするファンサービス

私は1年半振りに会場へ足を踏み入れたその公演は、長年デビューを夢見て活動していたグループがようやくデビューを果たした記念すべき舞台で会場は劇場なものの、2部はショーというなの団扇を持つことができる実質コンサートのようなものでした。

Cちゃんが用意してくれたチケットは2階ではあるものの最前列で非常にステージ全体が見やすく、何よりも久々に感じた会場の雰囲気、黄色い歓声、目には見えないはずなのに溢れんばかりのキラキラを放つアイドル達に一度はアイドルから離れたはずの私もみるみる魅了されていったのです。そして1年半振りに見た推しは着実に実力を伸ばし人気を集めていたようで、バックで踊るメンバーの中ではほぼメインといっても良い立ち位置まで登り詰めていました。

そんな中、コンサートに参加している中で、会場に足を運んだ人にしか訪れないチャンスがあります。それはファンサービス、略してファンサです。コンサートの応援グッズとして必需品と言っても過言ではない、団扇を持つことでアイドルに反応してもらえるかもしれない、自分の存在に気づいてもらえる大チャンスなのです。私はあなたを応援しているよ!あなたを観たくて来たよ!と分かってもらいファンサをもらうのに気付いてもらう手段として使用するのがうちわです。デビューをしているアイドルはコンサート開催時に公式グッズとして顔写真がプリントされているジャンボうちわが販売されますが、当時デビューをしていないアイドル達の公式うちわが販売されていることは稀で、私の推しの公式うちわはもちろんありませんでした。その為、デビューをしていない子にうちわを使ってアピールする為には公演観劇前のCちゃんとのやり取りであったようにうちわを手作りする必要があります。手作りうちわは公式で促されている規定のサイズを超えないというルールさえ守れば持ち込み可能です。もちろん誹謗中傷などアイドルを不快にさせたり傷つけるような内容を書くことは暗黙の了解で禁止ですが、さすがに会場まで足を運んでまでそのような行為をするファンはいないと思うので割愛します。舞台観劇の際や会場によってはうちわでの応援を禁止される場合もありますがこの時は舞台であるものの、ショータイムが組み込まれていたので持ち込み可能だったのです。

ドーム規模など大きい会場になればなるほど座席によってはうちわを手に持っていてもアイドルから見えるようなステージから近い席ではないと気づいてもらうこと自体難しいです。そして肝心な座席はファンクラブ会員であろうとランダムであることから当選=ステージから近い席で参加することができる、と決まっているわけではないということ、そしてコンサートはあくまで歌やダンスなどのパフォーマンスでファンを楽しまれせることが第一であり、ファンサービスという名の通りあくまでアイドルからのサービスの一環です。近い席だろうとファンサをもらえない事ももちろんあります。ただし主催としてステージに立つアイドルと違い、バックダンサーとして踊っている子達はマイクを持って歌うことがほぼないことや会場のファンを煽って先輩達のパフォーマスを盛り上げるなどのお仕事もあるので比較的にファンを目に入れる機会が多く、ファンサをもらいやすい傾向にはあるのです。

しかし私は今までファンサをもらった事がありませんでした。それ故に気付いてほしい!ファンサがほしい!という概念さえなかったのです。Cちゃんはというと、私とは反対に何度も推しからファンサをもらったことがあるようでアピールの仕方さえをも身につけていました。せっかく来たんだからノミちゃんも絶対気づいてもらわないと!と、名前のうちわしか持っていない私にハートを作って♡と書いてあるファンサうちわをほぼ強制的に差し出してきたので片手にそれを持つことに。そしていよいよ推しが両手にうちわを持っている私の方へ向かってきたのです。

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