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【能登半島地震】被災者はなぜ二次避難しないのか?

支援業務と自分の生活再建のため書く時間が取れなくなっています。このためしばらくの間、@Nahomamamuu さんに校正や編集をお手伝いいただいています。ありがとう。


地震から20日が経過しました


被災地には、初期の救援物資は行き渡り餓死の心配はなくなりました。
また、道路もかなりのスピードで復旧が進んでおり、金沢から能登半島の先端まで半日あれば行けるところまできています。

しかしインフラ面、特に水道に関しては全く進んでおらず、10万人が住んでいた七尾から北の地域は、いまだに水道の水がほとんど出ないと言う状況が続いています。
今では給水車が来るので飲料水は確保できますが、水が出ないと水洗トイレも使えないし、お風呂にも入れません。 もちろん洗濯もできません。

そんな地域に高齢者を中心に、未だ避難所だけでも10,000人、壊れた自宅に住んでいる人も含めればすごい数の人たちが現地で避難生活を送っています。
もちろん、行政側も民間の支援者もできるだけ金沢や他の安全な地域への二次避難を呼びかけ、受け入れ施設の整備やバスの手配なども進められています。

しかし 二次避難が進まない最大の原因は、受け入れ施設の数でも輸送手段でもなく、希望者が少ないことです。
奥能登以外に住んでいる家族が、懸命に説得を試みている例もたくさんあります。

なぜ二次避難が進まないのか?

水が出ず、家にも住めず、 復旧の目処すらついていないのに、なぜ移らないのかと思う皆さんもたくさんいらっしゃると思います。

ちょっと想像してみましょう。

自分が今80歳だとします。
足腰のレベルで言うと和式のトイレで用を足すと立ち上がれるかどうか自信がないと言う感じです。

生まれて80年間1度も引っ越しと言うものをしたことがありません。
今まで家族と共に暮らし、近所の人とは幼なじみ、都会で一人暮らしの経験などもちろんありません。
家から出ると近所の人たちが声をかけてくれて、野菜とか持ってきてくれます。自分も裏の畑で家庭菜園をしているので、時々その野菜を分けたりしています。
歳を取り動きが鈍くなってはいるものの、それなりに助け合って暮らしています。

そんな中地震が起きてしまいました。 家はもう一度住めるかどうかわからないレベルまで破壊されています。
思い出の品がたくさんあるので、できれば取り出したいですが、足腰が言うことを聞きませんし、何よりも危険です。

避難所でご飯はもらえるもののメニューはワンパターン。自分で作りたいのですが、食材も手段もありません。

そんな中、二次避難の案内が来ました。

金沢や加賀温泉のホテルに泊まれるそうです。しかも無料で。

「いつここに戻れますか」
「仲の良い人たちと一緒にいたいんですが、向こうでも一緒にいられますか」

と聞いたら
「できるだけ努力しますがわかりません」
と言われました。

加賀温泉のホテルに泊まっている自分を想像します。 おいしいご飯と快適な環境はありそうです。きっと周りの人たちも優しくしてくれるでしょう。

でもそれがいつまでなのか分かりません。
二次避難先に車を持っていけないので、自分で帰れるか分かりません。
地理も分からないし足腰は弱ってきているので歩きまわることも少なくなると思います。

避難した先に奥能登の人がいなかったら話し相手すらいないかもしれず、自分の住んでる家の状況も分からなくなる不安があります。

ひょっとすると、そこからどこか違うところで一人暮らしをすることになって、そのまま今の土地へ戻らずに人生を終えるかもしれません。

それを想像して、今の避難所とどちらがいいか考えることはなかなか難しいです。

ニュースで震災関連死の話を聞くと、明日は我が身かもしれないと思ったりもします。

でも、もし戻れなくて新たな土地で長生きしたいかと言われるとどっちもどっちのような気もします。

行政やボランティアの方が説得に来ますが、男性や標準語の人が多く、正直信頼できません。

私はどうするのがいいんでしょうか?


そんな不安があるから、二次避難の希望者が増えないのだと思います。
このような不安に対して、支援側は残念ながら今は回答を持っていません。

支援する側も役割分担で動いていますから、説得する役、バスを手配する役、宿を手配する役、現地でアテンドする役、全員が違う人であり違う組織です。

仲のいい人達と一緒にいられるか、着いた後はどうなるか、回答できる人は誰もいません。

しかもボランティアの支援者はトイレもベッドもない中で活動していますので、男性比率がとても高いです。
一人ひとりのお話を長い時間聞いてあげられる人も残念ながらいません。

そんな不安にぜひ温かい寄り添いを

一方で水道の復旧は今後も長期間見込めず、能登全体の半分位が住めない状況になっています。

十分な数の仮設住宅が建設されるまでには、まだまだ長い時間がかかります。
震災関連死は発災後1ヵ月で震災関連死全体の半分、3ヶ月で8割が発生します。
原因の多くは、 避難場所の環境が悪いことによる持病の悪化、エコノミークラス症候群、感染症などですが、 孤独が引き起こす心身の衰弱や、自死もかなりの数に上ります。

私も聞かれた時はできるだけ二次避難をお勧めしているものの、ほんとにそれが正解なのかは正直分かりません。

奥能登以外にいるご家族の皆様、どうか説得の前にゆっくり話を聞いてあげていただきたいなと思います。

ほくりくみらい基金からのお知らせ

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今回は緊急助成ということで、バックアップも揃わない状態ですでに被災地に入って活動している団体に優先的に助成を出しています。
審査も毎日行い、できる限り早い支援を目指しています。支援先団体の取り組みについても随時報告してゆきます。

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