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だいたい15年前のこと

品川のタワーマンションで約半年、当時の夫以外誰にも会わず連絡も取らない時期があった。

誰からも何からも影響を受けたくなかった。

きっかけは交通事故、というと
事故によるPTSDのようだがそうではない。

「その後に起きたこと」に対して
衝撃を受けていたせいだ。



日曜の朝のランニング中に
信号無視をしたミキサー車とぶつかって
後ろに倒れて頭を打った。

痛みと同時にとにかく猛烈に腹が立った。

倒れた私の所へ、車を停めた運転手が駆け寄ってきて
「大丈夫⁈ごめんね、ごめんね」と声をかけてきた。
私は痛みと怒りと涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら

歩行者信号が青だったことを訴えた。

「ふざけんな、こっちが青だったじゃねーか」

おかしいじゃん
私、お前になんかした?
なんか嫌なことした?
他人じゃん
お前の恨みとか買ってないじゃん
他人同士で何の関わりも無いのに
しかもこっちは車が少ない横断歩道でも
信号無視しないできっちり待って
ルールに従っているのに
何でお前がルールに従わなかったしわ寄せを
他人の私が喰らわなくちゃいけないんだよ、と
とにかくもうめちゃくちゃに怒っていた。

その後の約12時間くらいの間のことは割愛するが
色々あってとりあえず帰宅しベッドに入り
あちこち痛いわ腹は立つわで伏せっていたら
加害者の運転手とその上司がお詫びにと
我が家へやってきた。

インターフォン越しに応対していた元夫が
どうする?と聞いてきたが勿論出るつもりは無かった。
だってそいつは敵だから。

不必要に無意味に私を攻撃した時点で
そいつは私の敵だ。

(この当時の私には罪を憎んで人を憎まず、的な概念は無かった)



本題はここからだ。

私の代わりに応対した元夫が数分後に寝室に戻って来てその時の様子を報告をし始めた。

上司っていう人と一緒に菓子折り持って来たよ
申し訳ありませんって頭下げてた
元ヤンって感じだけどハンサムな子だったよ〜


…今なんつった?

…ハンサムな子って言ったか?

何にこやかに対応してんだお前
そいつは私をこんな目に遭わせた敵だぞ
その敵に対してだ
私の痛みや怒りに同調せず
代わりに私の恨みをはらすこともなく

何をヘラヘラとして い・る・ん・だ・よ‼︎‼︎

これはもう駄目だ
絶対に駄目なやつだ
こいつ(元夫)は私と共闘してくれる味方ではない
こいつは私の気持ちや考えよりも
世間と上手くやることを優先する人間だ

私が何一つ間違えていないのにも関わらず
味方になってくれないなら
私が間違えた時は一体どうなるのか

私はこんな人と
これから先の自分の人生を共有するつもりなのか



否!
どう考えても否 !
圧倒的否!




ここから約半年、親とも友人とも誰にも会わず

連絡も取らない時期を過ごした。

いくつもの物件を一緒に(時にはひとりで)回って
これからのふたりの生活に丁度良いね、と選んだ
新築タワーマンションの25階で
ふたりの趣味どちらにも合うように、と何度もショウルームを回って選んた家具と調度品に囲まれた部屋で
ふたりで気持ち良く生きていく為に、と丁寧にしつらえたベースキャンプだった筈の場所で
静かに、あの日に受けた衝撃と向き合っていた。


誰からも何からも影響を受けたくなかった。
ただひとりで、考えていた。

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