見出し画像

上司ニシグチを参考にVの者の立ち回りを考える(主に心と金)

ストーリージェニック名刺で売りまくる上司ニシグチ氏と、稼ぐに特化したカセグーンマエダ氏のトークイベント『上司タイガー』を見てきた。
さすがSNS活動が盛んなクリエイター、そのSNS手法は参考になりまくる。

※このnoteはVの者向けに書いています。

上司ニシグチ

2017年暮れからTwitterを始め、ストーリージェニック名刺を武器に一瞬でデザイン界隈のアルファツイッタラーに成り上がるタイガー。会社勤めの傍ら副業で稼ぐタイガー。

サンダーマエダー

WEBでも人でもなんでもデザインするマエダ氏。上司タイガーでは獣神サンダーマエガーとしてタイガーの心の内を引き釣り出す激闘を演出。

以下敬称略

上司ニシグチのレイヤー構造

上司ニシグチのSNS戦略として、『上司ニシグチ』そのものが中の人西口氏をモデルとしたキャラクターであって、その発言や表現は脚色や改変…つまり、一般大衆向けにエンターテイメント化された物であるという。
いわゆるプロデュース型のレイヤー構造を持ち、周囲が望む『デキる上司』を具現化するように西口氏のコントロール化にあり、デキる上司のデキた発言が話題を呼んだモンスターキャラクターである。

Vの者のレイヤー構造

対して昨今のVの者はどうかと言うと、いくつかあるタイプの中でも、自己顕在型やアバターなど一番表面に来るVレイヤーが『自分自身』である事が多い。特に前者はリアル社会での抑圧が活動のきっかけとなり、むしろVの姿そのものが『中の人』であり、リアルの人間体こそが『外の人』であるという解釈をしているものも居る。
いずれにせよ、ネット活動における対外的な姿が自分自身であるケースが多く、キャラに対するセクハラや中傷が自分自身に直撃する
もちろん西口氏と同様のプロデュース型や意識の独立したタルパ型など、自身の精神と切り離ししている者も居る。

2大テーマ「心」と「稼ぎ」

ここまではとりあえず前振りで、本noteではこの上司ニシグチとVの者における「心」と「稼ぎ」の違いを言語化し、Vの者の防御力と攻撃力の底上げを促したいというのがテーマである。

心のケアにRP

『上司ニシグチ』はある意味でデザイナーにおける『上司感』をテーマにしたキャラクターであり、その発言は西口氏によって「周りが思う上司感」を損なわないように実話の改変、脚色、あるいは創作されているが、これはもう『ロールプレイング』に他ならない。
「話題」「対応」「言葉遣い」等々これらが西口氏によってプロデュースされている
最上層『上司ニシグチ』は本人の外殻にあたり、ここへのクソリプや攻撃のダメージは基本的に本人には通らない。あくまで西口氏と上司ニシグチは別人格のテイを取り、俯瞰視点でマネージメントが行われている。

元々の世界観の強さはVの者の方がファンタジックなものまで扱える分有利なので、本来上司ニシグチと西口氏よりもギャップは生まれやすいはずなのだが、トークや動作など本人の身体の動きをデータとして乗せる必要がある関係上、キャラクターと本人が強烈に結びつきやすい状態にある。『Vの姿がRの心を具現化したものである』という見方が演者側にも視聴者側にもあり、ビジネス的にも精神的にも切り離しが非常に難しい。
演者が切り離し出来なかったアズマリム問題、切り離しがしたが故に起こったゲーム部問題、切り離せないことを前提にした視聴者参加型バーチャル蠱毒オーディションなど、ビジネス的戦略上で起こりうる姿と心の切り離しに起因する騒動が後を絶たない。

さて、Vtuberブーム始めの2017年暮れから活動する個人Vで、いまだ中堅に位置し数万フォロワーを稼いでる人はどうかと言うと、「最果ての魔王ディープブリザード」「動く城のフィオ」を始めロールプレイ色の強い人が多い。自分自身と自分のキャラの切り分けが出来ていて、この切り分けをリスクマネジメントへ応用しているからこそ、精神的ダメージを軽減出来てなおかつ活動が長続きしているのではなかろうか?と推察する。
とはいっても心無いことを言われればイラっとするだろうし、そこに人の存在を見出すというのは必要不可欠であるが。

そこで思い当たるのが言葉である。
やや無理のある言い回し、語尾、設定等々、現実ではまず使わない言葉を無理にでも使い徹底することで、VとRの自分に境目を作っているのではないかという仮説を立てる。
見た目と同じようにしっかりとキャラメイクしVの心を作り上げる。R側から俯瞰視点で見ることができるようになり、本当の自分がやりたかったV活動の内容自体には影響を及ぼさない。
前々から言われていたことではあったが、可能な限りVの自分を同一視しないというプロデューサー方式は確かに長期的視野で見るとかなりのメリットがあると思われる。

上司ニシグチに限って言えば、西口氏本人と比較しても多少口調がマイルドなぐらいで、さほど親しくない人に対する猫かぶり営業モード程度の違いしかない。いわゆるVtuberほどの差異がないのは、主戦場がTwitterのみに収まっているからだろうか。いずれにせよそれぞれ区別をつけて活動を分けていると考えられる。

思ってみれば、仕事や学校などの社会的愛想笑いが板についてしまった自分とは別の「本来の姿」を具現化するためにVの者となった人達も、「社会の自分」と「本来の自分」には、前提として区別がついていたからこそのV活動のスタートである。一方で上司ニシグチについては、西口氏本人の西口氏という限りなく本来の姿に近い状態で社会的生活をこなしているからこそ、そのさらに社会性の高い側の「上司ニシグチ」をキャラクターとして昇華させることが出来ているのではないかと推察する。

Vの姿を持つのが社会的自分でも本来の自分でも、いずれにしても言えることは、Rの生活基盤を支える側の自分にある程度の充足感と余裕があって初めて、防御力の高いV活動が始められると言えるのではないだろうか。

お金の話

さて、人がお金を払うというメカニズムにはどうしても避けて通れないのが『信用』である。心を見せないと信用は得られないというのがよく言われるところだろう。

『上司ニシグチ』は固有の稼ぎ口を持っていない…というよりも、Vの文法で言えばルートとしてプロデューサーである西口氏が受け口になり、上司ニシグチのイベントを開く際は西口氏の身体を借りて上司ニシグチを派遣するという解釈が自然だろう。その奥に裏垢として自分自身を表現する別レイヤーが存在し、そのさらに奥に有料のオンラインサロン、その奥に本人への仕事受付があるという4段レイヤー構造を作っている。

視聴者の奥レイヤーへの移動は興味や好意、あるいは仕事の要請やスキルアップという気持ちが原動力となり、これ自体がある種のフィルタリングの役割を果たす。ある意味で接触する人間が丁寧に濾されているため、単価が高く仕事のウェイトを重くかけるべき本業へのクライアントの質が自動的に高いものになる。
西口氏本人をすこらないと発注に至らないという考え方であり、オンラインサロンやそれこそ名刺の発注などの入り口は上司ニシグチにはない。
あくまで西口氏が稼ぐための上司ニシグチという構造である。

一方Vの者は、一部トップ選手が地上波番組に出演するなど既存アイドルよろしく稼いでいるが、個人活動でのVtuberやVライバーであればスーパーチャットが最終稼ぎ口になりつつある。一部本職クリエイター勢はスパチャ解禁前でも制作活動としてモノを売ることができる…が、いずれにせよ労働はVの姿で行う。RPの弱いVの者は評価そのものがRに貫通しやすく、モチベーションが大きく左右される。また、現状知る限りではアイコンやイラストなど発注者側も個人であったりと小口での製作案件がメインとなっていて、法人相手に3DモデリングやLive2Dセットアップなどの案件は数えるほど、それも20万を超える事例はほとんど見かけないという状況だ。
モデリングとセットアップとは別にイラストも出来る人ならば4,50万狙えるかどうかというところだろうか。

V名義で仕事を受注することの法的な問題点に関してはVNOSの方でクリアを模索するとして…

実際に個人Vとして生活をするだけの稼ぎができるのかとなると、スーパーチャットだけではどうしても配信1回あたりのスパチャ額にムラッ気が多いためかなり難しいと思われる。企業案件を積極的に拾っていくか、クリエイター系であれば大物案件を受注できるだけの信用を重ねていきたいところ。
上司ニシグチを参考にするのであれば、次のような形が望ましい形だろう。

1. Twitter上などでのコミュニケーション
キャラクターとしての理解をスタートとしフォロワーを集める。ここの掴みはVの者は一般人よりもハードルが低いのが強いところ。また、先述の通り社会的な自分と一線を画す難易度はかなり低い。

2. 配信や動画作品を無料で展開
次にパフォーマンスアピールの段階としてスキルを使った遊び物コンテンツで技術的なアピールを行うのと同時に、ファン交流の側面を持たせ距離感を縮める。フォロワー数に対しておよそ5~10%がこの段階に来る。
また、その流れで実際に有料で受けた仕事の公開。いわゆる事例紹介。リアルだと権利関係でかなり難しいが、V関係コンテンツ制作はなぜか製作者を表に出す事が多い。
クリエイター系はメイキングを見せることが多くなるが、視聴対象者は多くが同業者になってくるため、この段階で止まってしまうので注意。

3. ドアノッカー
少額有料コンテンツの配信。おおむね作業時間1時間から3時間程度、高くて1万円ぐらいの小口案件を拾いに行く。対象者は個人をメインとして「使える」ものを作っていく。つまり「作ってもらいました」の一言で終わってしまうものではなく、アイコンやサムネイル、背景、立ち絵のように用途が確立されているうえに一定期間で飽きるものを狙っていく。
また、FanBOX等の月額型の限定コンテンツ配信などもありだろう。
スパチャなどはここにあたるので、ライバーはこの先を考えなくてはいけなくなる。

4. 大口案件・本業誘導
10万円以上の案件を拾いに行きたいところ。イラストレーターやモデラーであれば新規Vtuber開発案件、作曲系であればBGMではなく歌唱曲、ライバーであれば企業案件などだろうか。本業スキルを発揮して「仕事」を行う。
ただ、配信者向けコンテンツ制作はどうしても牌の食い合いになるので、R社会向けのアプローチを考える必要もあるだろうし、場合によってはその部分はR自分に引き継ぐのも一つの手段になる。

思うこと

「フォロー+RTで抽選1名に無料で製作します」など、最終地点の成果物を撒き餌にフォロワー増やしをするパターンを見かけるが、これはオススメしない。
無料で貰ったものと買ったものではどうしても思い入れに差が出てしまうし、それを目的でフォローしてきた人が待っているのは「無料」であってコンテンツそのものではないからだ。上のフローで言えば1から先に来ることはない。
本当に「誰の物でもいいから作って宣伝したい」のであれば、誰でもいいから「〇〇円でいいから作らせてくれ」と営業をかける方がまだ健全。100円でもいいから有料にするほうが後々でクリーンな関係に育っていく芽がある。

おわりに

こんなところだろうか。おそらくお小遣い程度であれば上記3ぐらいだろうが、「生きていく」となると仕事として考えなくてはいけなくなる。つまりビジネス的戦略を持って取り組む必要性が出てくるわけで、現状食えてる個人Vが謎に包まれている以上はケーススタディとしてクリエイター系のツイッタラーを参考にするのが今のところのベストかと思う。

特に上司ニシグチについては、とても自然でありながら「Vの者」性を持った特異な存在で、西口氏本人の上司ニシグチに対するマネージメントはV活そのものだ。上司的お言葉やグラフィックワークに限らずそのビジネス手法についても「デザインされたもの」なので、いろいろと参考になるはず。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?