ポリーニ

先日、4Kに対応している録画機を購入して番組表をチェックしていたら、ポリーニとサヴァリッシュ指揮、NHK交響楽団によるブラームスのピアノ協奏曲第1番という1978年の懐かしいコンサートが目に入り早速予約録画した。直ぐに観ようとBDに焼いてOPPOのユニヴァーサルプレーヤーでスタートしたら全く反応しなかったため調べたところ、現状では録画した機械以外での4Kの再生は難しいこと、ステレオ装置のD/Aコンバータに繋ぐにはARC端子からしかないことが分かった。そこでARC(HDMI)をSPDIFに変換するもコンバータをAMAZONで探して入手、接続してようやっとまともな音で聴けるようになった。そんなこんなで1978年のポリーニを通して聴けたのは2024年3月22日であった。30代半ばのまだ若々しい姿ではあるがすでに大家の風格で、安定した解釈と立派で美しい音には納得しかなかった。N響もサヴァリッシュのような一流の指揮者の時は違うと当時言われていた通り、ミスはほとんど無かったようだ。続いて聴いた、同じディスクにダビングしてあった1999回N響定期演奏会のリストのピアノ協奏曲第1番では、N響が一流の、それも世界に伍するレベルのオーケストラとなったと改めて感じさせられた。50年近い時の流れはさすがに大きいということであろう。ちなみにソロを弾いたアリス=紗良・オットも厚みがありながら繊細さも兼ね備えたスピード感もある素晴らしい演奏で、コロナ前の録音と比較して著しい成長を遂げたと言えよう。アンコールの前に流暢な日本語で喋った時の笑顔の美しさにも、最近よく言われるルッキズムに触れるかもしれないが、敢えて触れておきたい。

そして、3月23日となった。数年前の演奏会キャンセルの報道と年齢から覚悟はしていたが、10代の頃からその背中を見続け、発売された録音のほとんどを持っている自分にとって、偉大な音楽家逝去の報道には久しぶりに悲しみを覚えた。もう、演奏会や新録音の情報に触れられなくなったこと、二度目のベートーヴェンの全集が未完となったことなど、残念という言葉だけでは表しきれない喪失である。わが青春時代の音楽界の若き英雄であと残っているのはアルゲリッチだけか・・・

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