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【回文〆日記】 #41 方言とお年頃
生まれた育った土地(石川県)から動いていないので、方言を話す比重が大きい。
それでも、初対面の人と話すときは標準語寄りの言葉で話すよう意識する。相手が地元民でない可能性を考えて。
一方、私の知る限りでの話だが、シニアである親の世代の地元民たちは、初対面の人にも濃い方言を使いがちだ。
買い物に行った店の店員さんに
「あっら、こっれ、やっすいじ?」
(あら、これ、安いね)
家の修繕に来た工務店の職人さんに
「雨どいがぁ、傷んどってぇ」
(雨どいが傷んでいて)
もちろん相手も地元民だとあたりをつけてのこととは思うが、若いころはそういう大人を見て、「え!いきなりタメ口?」と違和感を覚えていた。しかし、その世代の地元民は「方言=タメ口」という感覚ではないようなのだった。地域の自然な一体感の現れというか。
メディアの普及によって全国の言葉が均されていく傾向にあるのだとしたら、地域色豊かな言語文化のある暮らしは、けっこう貴重かもと思うようになった。
とはいえ、自分が初対面の人にいきなり方言を使うのは、やっぱり抵抗がある。
そう思っていたはずの私が、ついに先日…。
宅配便を受け取ろうとしていた。配達員さんはポップな雰囲気の若者。
受取票にシャチハタで印を押したつもりが、インクが薄かった。
私「あ、薄かったですね」
配達員「あ、まぁ、いいですよ」
私「ま、いいけ?」(まあいいですか)
若者は軽くほほえみ、「ありがとうございましたー」と言いながらサッと配達車に乗り込み、風のように走り去った。
荷物を手に、しばし玄関で立ち尽くした私。
ま、いいけ?…。
私、今、「ま、いいけ?」って言った…。初対面の人に…。
私の口からこんな「地元のばあちゃん」的な言葉が自然に出るんだ…。へえ…。
中年になって自意識が薄くなってきていることは認識していたけど、方言を使わないと決めていた状況でごく自然に方言を口にしたことがちょっと驚きだった。より口が慣れている、楽な言い方に流れたのだ。
ただ、恥ずかしトリガーとなりうる発言をしてしまったのに、あんがい大丈夫な自分にも驚いた。年齢とともに恥ずかしいことが減るって、こういうことか。
ま、いいけ、を逆から読むと、けいいま。
無意識に言葉をひっくり返してしまうのは、回文脳を内蔵している人間の性、避けがたい思考。
おっ、回文になりそう!
この一瞬のひらめきに、快感があるのだ。
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私、「ま、いいけ?」言いましたわ。
→ わたしまいいけいいましたわ ←
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