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【回文〆ショートショート】 #2 鳥たちのいる水辺

           ※鳥が苦手な方 閲覧注意

俺は物心ついた頃からずっと、鳥が好きだ。でも飼えなかった。姉ちゃんの鳥嫌いのせいで。庭に来る野鳥の餌づけも許されなかった。

中学生になって、ある水辺に行ったとき、野鳥の大群に出会った。すぐ目の前で飛び交う迫力にすっかり心を奪われた俺は、度々そこを訪れるようになった。

最初は見ているだけだった。フォルム、飛び方、鳴き声、全部がかっこよくて、ぜんぜん飽きなかった。

通いつめたある日、俺は、鳥たちと会話している自分に気づいた。言葉を介さず、心と心で、色と温度のある靄のようなものを交換する感じだ。まさかこれほど通じ合えるとは!大空を飛び回る自由な者たちを知って、いつしか籠に鳥を飼いたい願望は消えていた。俺は誰にも言わず、鳥たちとの時間を重ねた。


その日は姉ちゃんと言い争いになり、いやな感じだった。相変わらずのエキセントリックな言動、もううんざりだった。予知能力がついたとかで不吉なことばかり言って、本当に気分が悪かった。俺は家を飛び出して、水辺へと走った。

鳥たちはいつもの場所にいた。一目見ただけで俺は、怒りが静まってくるのがわかった。これまで鳥たちに、どれだけ支えてもらったことだろう。




水辺にたどり着き、鳥たちに挨拶したところで、人の声がして振り返った。少し離れた場所に立っていたのは、姉ちゃんだった。まだ言い足りなくて追いかけてきたのか。俺の聖域に近寄るな!

結局、鳥が怖い姉ちゃんは、遠くから叫んでいるだけだった。なんて言っているかは、鳥たちの声にかき消されて、聞き取れなかった。




うようよ鳥類がいるぅ!予兆よぅ!

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