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【回文〆日記】 #36 並走のふたり

日没後の帰路で
ときどき出会う
ふたり組がいる。

決まって並んで
ランニングしている。

シルエットや気配で
前にも会った
あの人たちだと
わかる。

私のめざす方向からやってくるので
いつもすれ違う形になる。

あちらは走っていて
こちらは自転車をこいでいるので
近づくのは
ほんの一瞬だ。

すれ違いざま

まばらな街灯の
かすかな光のもと
目をこらす。

ふたりとも短髪で
男性のよう。

うす明かりに照らされて
闇に一瞬
浮かび上がるふたりの表情は

必ず
口角が上がっていて
楽しそうな感じ。

ただ
不思議なのは

示し合わせて自主練している
運動部の中学生のようでもあり

ルーティンを長年こなしている
大人どうしのようでもある

ということ。

いくら暗がりとはいえ
何度もすれ違っていて
まったく
年ごろが読めないなんてことが
あるだろうか?

まるで
睡眠中に
夢の中で会った人たちのような
あやふやさだが

現実である
自信はある
(と思う)。

ふたりは
ストイックでなく

自分たちに合った
自然なペースで
ただ純粋に
走ることを楽しみ

お互いに
相手と並走するひとときを
とても大事に思っている。

毎回
そんな雰囲気を感じ

ふたりの心が
反応し合って生まれた
まじりけのない
よきものに
触れたような気持ちになる。

暗い夜道を
あたたかい色の
大きい
まるい光がふたつ
その領域を交わらせて
細かく上下に弾みながら
移動していくイメージ。


そういえば最近
暗い時間に
その道を通っておらず

もうだいぶ
あの人たちと
遭遇していない。

ふたりと行き会うたび
芽ばえていた
幸運を得たような感覚は

虹や流れ星を
見たときの
それと
近いものだった
と気づく。



またいつか
すれ違えるだろうか。

夜の彼方からやってくる
バディを組んだ
「走るかみさま」と。


見目、悠々、朗ら。好み。軽し。走る神の子らが朋友。夢見?

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