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乱筆感想「ミラーズエッジカタリスト」高層ビル群を駆け巡る快感と失速感


はじめに

本作は2016年4月22日に販売EA、開発DICEよりPC/PS4/XB1向けにリリースされた一人称視点パルクールアクションゲームです。
シューティング要素はなく戦闘は格闘のみとなっているので、今作は"FPS"ではなく"FPA(Action)"と言えるでしょう。

初代「ミラーズエッジ」
開発は同じDICEで2008年にPC/PS3/XB360でリリースされた、"一人称×パルクール"の先駆け的作品。
ちなみにモデルは開発者のフィアンセだそうな。


開発者曰く、カタリストは初代ミラーズエッジの続編やリブートというわけではなく「リバース(生まれ変わり)」との事だが、実質リブート作品と言ってもよい。
主人公のフェイス以外のキャラクターは全て一新されているので、初代を遊んでいなくてもすんなりと入っていける。

ちなみにフェイスのモデリングには若干の変更が施されており、今作の方が個人的に好みだったりします。(誰も聞いてない)

カタリスト版フェイス
個性的な右目のタトゥーは変わらず、初代とはまた違った方向性の格好良い系女性へと生まれ変わった。


あらすじ

白を基調とし原色の色が散りばめられた風景が美しい
「ガラスの街」

舞台である"ガラスの街"は権力を掌握した複合企業により支配され、そこでは圧政に抵抗するグループや支援者が存在していた。
住民達は監視用のマイクロチップ入り腕輪が装着され常に監視されているような状態であり、それを主導しているのが敵企業の「クルーガーセック」である。
主人公のフェイスは、腕輪の装着を拒み反企業的な姿勢、闇の仕事を請け負っている「ランナー」に所属していた。

約2年もの間、収監されていたフェイス
看守に対しての反抗的な目付きがたまらない。

今作の物語は、クルーガーセックの収容施設から釈放をされる場面から始まる事になる。
そこから仲間と合流しランナーに復帰したフェイスだが、任務中ひょんなことから未知のデータを入手し陰謀に巻き込まれていく事になる。
陰謀の解明、解決に向け仲間達と共に複合企業に立ち向かい打倒していくといった流れです。


味わいのない物語と登場人物達


正直な事を言ってしまうと、本作に登場するキャラは主人公のフェイス以外、殆どが記憶に残らなく愛着の湧く者がいなかった。
どのキャラも喜怒哀楽に乏しく仏頂面でフェイスと関わってくるので、フェイス目線で見ているプレイヤーからすると愛着など湧くはずがないのです。

嫌みを吐かれるフェイス。
全キャラバックボーンや内面の描き方が総じて足りない印象が否めない。

更に愛着不足のキャラ救出ストーリーが展開していく為、本編ストーリーにたいしての没入感も損なってしまうという悪循環に陥ってしまっている。

主人公のフェイスに関しても、やはりバックボーンの描写不足感が否めないというのもある。

カタリスト前日譚や若き日のフェイスが描かれたコミック「Mirror's Edge: Exordium」

商業的な事なので、偉そうな事はあまり言えないのですが、ストーリーの深みを出す意味では前日譚を描いたコミックの有料展開は失策だと感じてしまいました。
出来ることなら、デジタルコミックとしてゲーム内に収録し、本編開始前に読めたら低調な没入感も変わってきたかも…と。


高層ビルを駆け巡る疾走感

今作では、まず地面の土を踏む事はなく、基本的に高層ビル内外でのパルクールアクションとなります。
もちろんしっかりと地面の描写はされていて、眺めると車や人の往来もあるのだが、地面を踏む事=落下死と思ってもらってよい。
"パルクール失敗=死"といったスリル溢れるアクションの一つ一つを一人称視点で感じ、ビル群を駆け巡る爽快感を味わえるのが、本作最大の魅力と言ってもよいだろう。

夜の下界の街並み
タマヒュンしてしまう眺めだ。

初代ではステージクリア制マップだったのが、今作ではオープンワールド化を果たしていて、広いマップを自由に駆け巡り、新たなマップを切り開いていくワクワク感があるのも進化した点と言えます。

パルクールアクションに関しては、「ジャンプ、着地時の受け身、壁走り、障害物のスライディングor乗り越え、敵からの逃走時の捌き」などの判断を瞬時に求められるので、集中力を持ったプレイが常に要求され、結果として没入感のあるパルクールアクションに仕上がっている。

赤いラインで描かれるナビゲーションシステム
「ランナービジョン」
記憶が定かではないのですが、初代ではナビゲーションが無く迷った記憶があるので、ありがたい追加である。

ランナービジョンの他には、"MAGロープ"というガジェットアクションが追加されており、「ビル間のスウィング移動、障害物の除去」が可能となっている。
スウィング移動に関しては、パルクールアクションを更なる段階に引き上げ、爽快感を高めるものとして機能している。

前作では考えられなかった距離感が移動可能に!



FPSとしての側面を排除した英断

まず前作にあった、敵の重火器を奪いFPSとして戦えたのが今作では出来なくなっている。
前作の"FPA時々FPS"としての戦闘を、完全にFPAに振り切った形です。
アクションが減った事でネガティブな印象を受けるかもしれませんが、フェイスのキャラクター性を考えた時に"敵の射殺"が可能な前作は違和感を感じた部分であったので、個人的には英断で支持したいと思います。

鳩を見つめるフェイス(その目は優しかった)
殺しをいとも簡単にやってのけるキャラクターとは思えないのですよね。



練り込み不足で退屈な戦闘

基本は、「通常攻撃=パンチ、強攻撃=キック、ステップ回避」の3つのアクションから構成されている。
そこに更にパルクールアクションのジャンプやスライディング、壁走りに攻撃をプラスしていくといった形である。

スライディングキック直撃の瞬間

       はい、以上です


そこの「はっ?それだけ?」と思われた方、筆者も初戦闘時はつい疑ってしまったのですが、本当にこれだけなんです・・・
他作品FPAにあるような、「防御、パリィ、打撃武器」がなく、コンボ的な物も一切ないのです。

このようにアクションの幅が狭いので、終始単調な戦闘を強いられる事になります。
敵によっては、正面から攻撃を放っても裁かれてしまうので、"ステップ回避で背後に回り攻撃"、これを繰り返す事になり、マンネリ感のある退屈な戦闘に仕上がっている。

ここまで批判ばかりになってしまったが、一つ擁護をさせてもらうと、ダメージを一定以上与えると発生するフィニッシュアクションが格好良く、視覚的な爽快感があるのが好印象だと言えます。

フィニッシュアクション
三人称視点に切り替わり発生する物もある。


街を駆け巡るクエスト・アクティビティ

あらすじで紹介した物語を辿るメインクエスト、周囲の頼み事をこなすサブクエスト、到達タイムを測るアクティビティ、収集物(記録品、オーブ)などが街に散りばめられている。

マップ全体図
ファストトラベル可能な拠点も存在している。

基本的にクエストとアクティビティは、終始「AからB地点に向かえ」といったものなので、非常に単調なものとなってしまっている。

中盤で「MAGロープ」の入手、その後のアップグレードとパルクールアクションのマンネリ対策はしてくるのだが、激的なものではなく、残念ながらマンネリ解消には至らなかったという印象である。

敵を全滅させるパートも途中数ヶ所あるのだが、それに関しては格闘システムの不出来のせいで完全に裏目に出てしまっており、苛立ちを感じざるをえなかった。



作品の長所と短所

<長所>
・独特かつ美麗な色彩感覚の世界観
・爽快感あるパルクールアクション
・オープンワールド化を果たした世界
・珍しいアジア人女性主人公であり、強く格好良いフェイスさん

<短所>
・個性に欠け、描写不足の周辺キャラクター達
・練り込み不足な戦闘アクション
・単調で代わり映えのしないクエスト群



最後に

少々手厳しい事を綴ってしまった「ミラーズエッジカタリスト」ですが、上記長所の魅力のおかげで最後までプレイする事が出来ました。

背中で語る女フェイス

長文の感想となってしまいましたが、ここまでお付き合い頂けた方、本当にありがとうございました。

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