戻らない風景
胸高鳴った夏の日
どうしても手に入れたいものがあった
紅い太陽が天まで昇る
──何故?
と私が呟く
羞恥とは得難い体験の一つとして
記憶とは失うことのできない存在として
どこまでも付いてくる
砕けた心の一つ一つに命が宿る
見て見ぬふりできぬ光源のように
私の記憶は痺れ動けない
──いいんだ、それで
──仕方がなかったんだ、それは
また私が呟く
──バイバイ
──また明日
──それじゃ
──また今度
──さよなら
──さよなら
同じ符号
同じ言葉が意味するものは必ずしも同じではない
──もういいんだ、もう
誰かが呟く
それは私かもしれないし、あの人なのかもしれない
惨めで輝かしい日々は失われる
──日はどこから昇るの?
──日はどこからも昇らない
太陽が見えなくなる
何も見えなくなる
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?