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横須賀市に聞く!自治体における生成AI活用とは?

団体・ご所属:経営企画部 デジタル・ガバメント推進室 ご担当者様

「自治体のDX推進」の中でもChatGPTに代表される「生成AI」の活用が急速に注目されています。しかし生成AI活用には情報セキュリティや制度、職員間でも心理的な抵抗感といった障壁があり、「自治体での運用はまだまだ使用は難しいのでは」といった声をよく耳にします。
今回は、自治体の中でもいち早く庁内全体で生成AIを運用している横須賀市さまに、現場の状況や自治体で活用するためのヒントをお聞きします。


すでにここまで進んでいる!生成AI活用の実際

横須賀市はどんなところ?

横須賀は、神奈川県の南東にある三浦半島の中核都市
東京湾・相模湾に面しており、市の三方を海に囲まれています。日本の開国のきっかけとなったペリー来航の舞台は、横須賀・浦賀でした。古くから軍港として栄え、軍の施設跡やアメリカ文化を取り入れた名物などが街中で見られる、独自の文化が魅力的なまちです。

驚くべき横須賀市の生成AI運用開始のスピード感

2022年11月:OpenAIが「ChatGPT」を公開
2023年4月:横須賀市全庁での活用実証の開始
   6月:実証報告書公開&本格実装開始
   8月:AI活用の問合せボット運用開始/自治体AI活用マガジン開始
   10月以降:生成AI活用についてのイベント、コンテスト開催等

改めて、行政でのこのスピード感、本当にすごいです。
横須賀市では、2020年に「デジタル・ガバメント推進室」という部署を設立し、デジタル技術を導入するだけでなく、様々な業務を根本的に見直していく取り組みを行っています。こうした組織風土が、生成AI活用という新しいテクノロジーの迅速なキャッチアップ、効果的な運用に繋がったのではないかと感じました。

横須賀市さんの活動はこちらのnoteでも情報発信されています!

生成AIを全庁的に運用しわかったこと

ー生成AIでよくある”3つの悩み”について、実際に運用をしてみていかがでしたでしょうか

悩み1:生成AIは正解でないことも、あたかも正解のように回答してしまう
回答:生成AIの回答した文書はあくまでも下書きとして利用していただくこ
   と。また上長の確認をきちんと取っていくことを徹底することで、部
   下の文章を確認することと同じように、AIにおいてもきちんと確
   認していただくことを徹底しました。
悩み2:自治体で生成AIが使える部署は限定的なのではないか
回答:自治体の業務において、文書作成は、どの部署にも共通する業務であ
   り、利用できる点が多いと感じました。
   セキュリティ面を考えると、チャットツールとAPI連携して利用する
   など、工夫が必要かもしれません。
悩み3:費用がかさんでしまうのではいか。
回答:横須賀市ではAPI利用料以外ほとんど発生しないような形で運用して
   おり、できる限りコストがかからないように工夫しています。

―実際に運用されて、庁内からの反応はいかがでしたか?

ヒアリングで分かったのですが、消防等、事務が苦手な人の事務レベルを一定のところまで引き上げている、ということも特徴として見えてきました。
生成AIはパソコンや電卓と同じものだと感じており、活用できるのはパソコンを利用している人すべての業務だと思います。
言い換えると、火をつけるのに、火打石を使うかライターを使うかといった選択肢だと思います。

世の中に書籍やインターネットで多くの活用方法が出ており、そこに「ChatGPT」の使い方の答えはあります。ただし「使わせ方(運用)」の答えはないと思っています。そういった意味では、庁内でも試行錯誤を続けています。
他市では志木市さんの取り組みとかは面白いと思います。

<志木市 デジタル推進課の取り組み事例>

生成AI活用、どうしたら庁内で運用できる?

―生成AIを多くの職員に、効果的に使ってもらう、という「使わせ方」について横須賀市さまの取り組みを教えてください。

DXに必要なのは「X」

DXで大切なのは、デジタルではなく、「X(トランスフォーメーション)」の部分。職員の意識の改革が必要だと感じています。デジタルを導入すれば解決する話ではなく、「テクノロジーとセキュリティはお金で買えますが、モチベーションはお金で買えません!」というのがモットーです。

「ついやってみたくなること」を仕掛ける取組み

新たな有効なテクノロジーを導入しても、触ってもらわなければ意味がない。いかに職員に継続して触ってもらうかが大事だと考えています。
活用のハードルを下げるために、「個人情報、機密情報を入力しない」ということ以外制限をかけずに運用をスタートしました。
また、「チャットGPT通信」という、生成AIに関するとにかく、
ゆるすぎる、ふざけすぎてる庁内報を隔週くらいで出しており、多くの職員に読んでもらっています。
結果として生成AIを身近なものとして感じてもらい、高い利用率に繋がっていると感じています。

デジタル・ガバメント推進室が刊行する「ChatGPT通信」

こうした取組みをベースに、専門アドバイザーによる、活用研修も2回実施。全体の活用スキルの底上げを図っています。
リアルタイム、アーカイブ含めると、両研修共に400名近い参加で、庁内での自主的な参加の研修としては、市役所史上最大でした。
さらに直近では、これまで身に着けたスキルをチャットGPT活用コンテストで発揮してもらい、事例を全庁へ横展開&ヘビーユーザーのモチベーションの向上を図っています。
 
運用面で「とにかく、楽しく取り組んでいくこと」がとても大事だと考えています!

自治体での生成AIの活用はもっともっと身近になる、かも!

いかがですか?自治体でも生成AI活用、面白そうですよね!
横須賀市では、さらに運用の輪を広げていくため、行政の枠にとらわれず「地域内外の企業・個人」も巻き込んで生成AI活用のコミュニティを拡大されていくとのこと。1月に実施の合宿は、60人の参加枠に対して、100名を超える応募があったそうです!

私も参加したい!皆様のご活動、今後もぜひお聞きかせください!

(担当:柴田)