『THE FIRST SLAM DUNK』感想②キャプテン継承
前回【三井寿という罪深い男】まで書いたのでその続き、赤木剛憲との関係について。前回はこちら↓から。※今回も前回もネタバレありです。
【最後の円陣のリョータの声かけが何であんなにエモいのか】
試合残り時間少なくなって、リョータから湘北メンバーに声をかけて円陣を組む。
流川に対して「行けそうならそのまま行っちゃえ」
赤木に対して「流川を見てて」
そのあとにリョータがハドルの締めをする。
この一連のシーンめちゃくちゃ良かったな〜と初見の時はポーッとして帰った。
そのあとに『THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE』を読んだらこのシーンの絵コンテの注釈がこうなっていた。
これは…『キャプテン継承シーン!!』
赤木が無言でリョータに顎で「お前がやれ」と伝えて、リョータも無言で自分を指差して「俺?」とリアクションするほんの数秒のシーン。
初見時はサラッとしすぎてたのと、試合へ興奮でこのシーンの意味することを咀嚼しないまま終わった。
井上雄彦先生が描いたre:SOURCEの絵コンテ。リョータの指示をもらった後の赤木の表情がね、めちゃくちゃ良いんです…!
圧倒的上司にしたい父性を醸し出しているというか。CG時のゴリもいい顔してるんだけど、絵コンテのは柔らかさがあるというか。ゴリラ扱いしていたみんなが「トゥクン…」てなるいい表情。
そこで、re:SOURCEのインタビューの一文を思い出した。
リーダー。そうか!キャプテンか!
現キャプテンの赤木と次期キャプテンのリョータ。
映画で追加された赤木とリョータのエピソードは、二人がそれぞれ自分の資質にあったリーダーシップを開花させるまでを描いているんだ。
その到達点にあるのがこの円陣のシーンだった。
【湘北の中のリョータ】
バスケのスキルはあるし、仲間が見えているのに自分から声をかけてコミュニケーションを取りながらプレイするのが苦手。周囲から一歩引いている。
【赤木の負の側面】
湘北の大黒柱、湘北の魂。揺るぎない意思を持っている頼り甲斐のある主将。
映画においてはその「独裁者」というキーワードで負の側面を押し出している。山王戦が始まってからは責任感から「自分がなんとかしなければ」と思うあまり視野狭窄に陥り、対河田意識過剰になって本来のプレイが発揮できない。
【二人がそれぞれリーダーの資質が開花させる】
山王戦で赤木はセンタープレイヤーとして良いところが少なかった。
でも映画全体を通して見ると、後輩を指導したり庇ったり、リーダーシップの良い面を発揮してる。この指導は後々のリョータにちゃんと影響を及ぼしている。赤木が転倒して目を覚ました時、周囲に頼れる仲間が居ることに気づいて「任せる、一歩引く」ことができるようになった。
リョータは山王戦に挑む前に、母親に手紙を書いて自分の気持ちを伝えている。自分から声をかけ、コミュニケーション取れるようになっている。
山王戦が始まってからは、3年の三井がへばって赤木の意識が周囲に向いていないのを「流れは自分たちでもってくるもんだろがよ!!」と喝を入れる。自分から一歩前へ出られるようになった。
この二人がいつもの自分がとる行動とは違うことを選択した。
自分の殻を破った。
その重なり合った瞬間があの最後の円陣のシーン。
【リョータ流のキャプテンらしさ】
赤木はポジションがセンターで体が大きいというのもあって、中心にドンとある大黒柱のような求心力でキャプテンを務めていた。
リョータはポジションがポイントガードで味方の状況を広い視野を持って的確に一人一人を把握する。
最後の円陣でリョータが他のメンバーに声をかける。
流川に対して「行けそうならそのまま行っちゃえ」
赤木に対して「流川を見てて」
この時の声の感じがすごく優しく感じる。
感想を漁っていると同じように感じている人が多くいた。
この、声をかけていろいろ教える優しい感じって、冒頭のソーちゃんじゃない?
リョータがリーダーシップを発揮するその理想のリーダー像がソーちゃんだったんじゃないかな。
この、リョータの姿を見て赤木が締めをリョータに任せる。
これこそが赤木のリーダーシップの到達点だと思った。
山王戦で自分が活躍できなくても、まぎれもない湘北のキャプテン。
「お前のプレイはチャラい」「喋れ」「宮城はパスができます」とリョータをここまで育てた。
このキャプテン継承の流れ。エモすぎるだろ…!
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