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肥料はどう効くのか

窒素肥料として「硫安」を施すことがあります。硫安がどういうわけで窒素肥料になるのか、いくつかの資料を元に考察してみました。

硫安の正式名称は「硫酸アンモニウム」といって、化学式では(NH₄)₂SO₄ と表します。これは2つのアンモニウムイオンと1つの硫酸イオンが結合した状態で、見た目はお馴染みの通り白、と言いたいところですが、光の乱反射で白く見えるだけで本当は無色の結晶です。(雪が白く見える原理と同じ)

硫安は土壌中でアンモニア態窒素となり、アンモニア態窒素は土壌中の硝化菌のはたらきで硝酸態窒素になります。ただし水稲はアンモニア態窒素を好んで吸収するとされておりますので、アンモニア態窒素で考えていきます。

アンモニア態窒素というのはアンモニウムイオン中の窒素の量のことです。アンモニウムイオンの出所は、水に溶けた硫安です。先述の通り、硫安はアンモニウムイオンと硝酸イオンが結合した物質でした。これを水に溶かすと、水分子によって結合が解かれ、バラバラになります。


こうして生じたアンモニウムイオンの水溶液が根から吸収されるということです。

ちなみに、植物はどのようにして養分を吸収しているのでしょう。「吸収」とは、養分が細胞膜の内部に入ることを言い、これを司る「輸送たんぱく質」というものがあります。

輸送たんぱく質はそれぞれが吸収する物質が決まっています。アンモニウムイオンの場合、アンモニウムイオントランスポーターという輸送たんぱく質がこの吸収を担当します。こうすることで、植物は不要な物質を吸収しないようにしています。

以上、硫安を施肥してから作物が窒素を吸収するまでの流れを追ってみました。

参考書籍
・土づくりと作物生産, 日本土壌協会, R3/4/8
・作物の養分吸収から見た堆肥と化学肥料, 農家の友 2024年1月号, 北海道農業改良普及協会, R6/1/1
・生物, 東京書籍, H27/2/10
・化学, 東京書籍, H27/2/10


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