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#4環資「微生物の生育に光が与える影響」

[プロフィール]
佐野翔平 Sano Shohei
・東京農工大学大学院 農学府 
・ワンダーフォーゲル部


農工大のパンフレットにも掲載されていた写真


研究内容


 光を照射したときに微生物の生育が抑制されるメカニズムを明らかにする研究をしています。微生物は,私たち人間を含めた様々な生き物が排出する物質を餌として増殖することから,生態系での物質のリサイクルに重要な役割を果たしています。そのため,微生物の生育がどのような条件によって制御されているかを理解することは,地球全体での物質の循環を理解することの基礎となります。
これまでの研究では,光合成を行わない微生物の生育は,光によって抑制されることが明らかにされてきました。つまり,光を当てると上手く増殖できなくなってしまうのです。不思議ですよね。そこで現在は,光がどのようなメカニズムで微生物の生育を抑制するのかを明らかにする研究しています。

この分野に進んだ理由


 きっかけは,大学での授業です。自然由来のリンや窒素をはじめとした栄養源だけでなく,人間由来の人工化学物質の循環には,生物が大きく関わっていることを学びました。
さらに,その大部分は我々の目には見えない微生物の力によることも明らかになってきています。しかし,それだけ重要だと考えている微生物ですが,地球上に存在するなんと99%以上が培養することができていないのが現状です。
つまり,微生物にとって生きることができる環境を,我々はまだ人為的に作り出すことができないのです。
人間の管理出来ない、未知なところがすごく魅力的ですよね。だから微生物を研究しようと思いました。


山梨県と長野県の県境にある金鋒山


問題意識


 現在は特にプラスチックごみに問題意識を持っています。
一見,微生物の研究とかかわりがないように思われますが,実は強く結びついているのです。プラスチックは海や河川に流れ出ると,水や光など力によって小さく断片化していきます。さらに,マイクロプラスチック,ナノプラスチックへと断片化していきます。中には微生物が食べることができるサイズもあり,微生物への影響も懸念されます。
先に話したように,微生物は地球全体の物質の循環を司っているので,プラスチックの問題は微生物レベルのみならず地球規模で重要な問題になりうるのです。
科学を志すものとしては,プラスチックそれ自体が微生物に与える影響や,プラスチックがあることで生じる生育環境への影響を評価していくことが必要だと思っています。しかし,科学的アプローチと同時に,社会科学的アプローチも重要だと思っています。特に,ルールや制度の面です。例えば,最近ですと,紙おむつがトイレに流せるようになるかもしれないといったニュースがありました。紙おむつを使う人々にとっては,非常に便利になるでしょう。しかし,おむつはプラスチックで出来ているので,環境的には大きなリスクを伴います。そのリスクを科学的に評価し,ルールや制度を設計するときの一つの判断材料を提供することが,科学と社会を結びつけることに寄与すると考えています。

学生のうちにやりたいこと


 プラスチックの使用を削減していく取り組みを行っていきたいと思います。しかし,単に使用を制限していくのではなく,使わないことが「メリットだ」「やりがいあるな」と思ってもらえるような仕組みを作っていければと思っています。
例えば,多摩地区にある専門の異なる様々な大学の学生と協力することで,我々のプラスチック削減という目標と彼らの目標とを同時に叶える「何か」を模索してみたいです。

将来やりたいこと


 環境問題とビジネスを結びつける仕事を行いたいと思っています。環境問題の解決に今まで以上の「価値」を見出すことができれば,あるいは価値を生み出す「仕組み」を作ることができれば,環境科学が社会にもっと還元されると考えます。
これから参加させていただくいくつかのインターンシップを通じて,環境問題をビジネスや制度に落とし込むスキルやマインドを身につけていきたいです。

2018年3月27日 文章:上木康太郎


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