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ストーリーのあるショッピング体験

買い物、それも日用品や食品じゃなくて「生きるために、別に必要でもないもの」を買うのは、この上なく贅沢で誘惑に満ちています。

先日、ある宝飾店でリングを買いました。

もちろん、リングに限らずアクセサリーを買うのは別に初めてではありません。
それなりのお店に入ったこともあります。

でも、そのお店での体験は、
「ショッピングって、こういうことなんだ!」
と、深く心に残る素晴らしい体験でした。

リテールでお仕事をされている方は、きっと日頃から「顧客のショッピング体験」を意識して接客してると思います。

今回は、私という一消費者の目から見た「感動するショッピング」の例として、そして何より私自身の日記代わりに、この記事を書こうと思います。

今回のショッピングの背景

2019年秋、父の緊急入院などもあり、実家の両親も気になるし、自分もそろそろこちらでの生活を締めくくって、日本で改めて生活(人生)をスタートしたい、と思うようになりました。

決めてしまえば早いもので、11月には本帰国を決めていました。

そして12月。
毎年この時期には街が華やかになります。
でも、どんなに華やいだ街を見ても、あきらかにクリスマスショッピング帰りとわかる買い物バックを両手に持った人を見ても、「これがこちらで最後のクリスマスか…」と寂しい気分になるだけ。
見慣れた風景だけに、余計に滅入ってきます。

晴れない気持ちで街(日本なら銀座のような通り。ブランドブティックが並んでる)を歩いていたら、ふと目に入った宝飾店W。
ブランド名も特徴のあるデザインも前から知っていたし、気になってはいたんですが、これまで買わずにいたブランドです。
決してお安くはないので、そんなに手が出せるわけでもないですしね。

「見るだけなら…」と思って中に入りました。

営業じゃなく「カウンセリング」

お店の1階は受付で、実際の店舗は2階部分。
階段の途中には鍵のかかったガラスドアがあって、お店の人に案内されてやっと上に行ける…という構造です。
1階の入り口でさえ、お店の人がドアを開けてくれないと入れません。
なかなか厳重。

2階部分は壁に沿ってショーケースがあり、フロア奥にはバーカウンターもあります。ソファも各所におかれ、壁のショーケースがなければホテルのラウンジかと思える内装です。色調は、ブランドカラーであるブラウンを基調にマットなゴールドがアクセントになっています。

時間も閉店間近な遅めの時間だったせいか、客は私だけ。

案内されたのは、テーブルの席。
「何か飲み物は?」と聞かれ内心焦ります。
『もしかしたら何も買わないかもしれないのに、こんなにおもてなしされると心苦しいんですけど…』と思ったのですが、断れる雰囲気でもなくて無難にコーヒーをお願いしました。

他に、シャンパン、ワイン、紅茶、ミネラルウォーター…と品揃え豊富のようです。(バーが後方にあるくらいですしね)
コーヒーはチョコレート(それも2段のエタジェリー)付きで出されました。
(ここでさらに焦ったのは言うまでもありません)

もちろん、最初に聞かれたのは「何か特定のもの」を探しているのかどうか。

「リングなんですけど…」と答えたら「どんな機会に合わせてですか?」と。
結婚や婚約、誕生日といった「機会」ではなく、カラーや石や金属の種類の話でもなく「指輪を欲しいと思った背景」を知りたい、と。

そこから私の長い説明が始まりました。

自分が日本人であること。
もうこちらに長く住んでいるが、この国を去ることにしたこと。
この国の思い出になにか身につける記念が欲しいこと。
(Wはこの国のブランドなのです)
前からここのデザインが気になっていたこと。


そんな風に、自分の「これまで」と「これから」について、
お店の人の質問に促されながら、たくさん話していました。

アクセサリーを買いに来たというより、カウンセリングのようです。

デザイン決定

アクセサリーに関しては、私は好みが割とハッキリしてます。
具体的なデザインや材料の話になって、私が出した条件は

・ホワイトゴールドかロゼゴールド
・エマイユはボルドーレッドかダークグリーンかロイヤルブルー
(エマイユは、七宝のことです)

もちろん、お店の方の推薦は、それも考慮したいことも伝えました。

エマイユのカラーバリエーションが豊富なのと、微妙にデザインが違うので本当に目移りがしてしまいます。
たくさん試させていただきました。

最後に決まったのは「ホワイトゴールド、ロイヤルブルーのエマイユ」

一番好きな色の組み合わせだというだけではなく、配色的に私の肌に一番良く馴染むのです。

値段の高い・安いは個人の感覚ですが、この指輪は私にはお安くはないです。
でも「自分のストーリー(思い出と想い)が込められたリング」に値段なんて付けられるでしょうか?

ここまで来ると、もう「買う」以外に選択肢はなかったです。

デザインが決まったら、サイズを確認して、オーダー確定です。
(基本的に受注生産。店頭にあるのは見本のようなもの。気に入ったものがあって、しかも自分のサイズに合えばその場で買えるかもしれませんが…)

出来上がってくるまで2ヶ月くらい、とのこと。
特に、今回はクリスマス休暇が入るので、私のリングは「来年2月末」となりました。

お迎え

2月14日。バレンタインデーに、電話がきました。
「リングが出来てきました」と。
早速15日、リングをお迎えに行ってきました。

この日も客は私だけです。
時間も少し遅め、18時過ぎだったので、そのせいかと思ったら、その日は招待客を集めた交流会と商品説明会があったので、少し前までどちらにしろ私はお店に入れなかった模様。「いいタイミングで来ましたね」と言われました。

おもてなしでは「リングが出来てきたお祝いに、今日はシャンパンにしませんか?」と勧められるままにシャンパンをいただきました。
もちろんチョコレートも。

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チョコレートにはブランドロゴが入ってます。

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リングの受け取りです。
実際に指にはめた時の感動はひとしお。

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支払いは全額前払いをしていたので、普通ならここで包装して「ありがとうございました」で終わるのでしょうが、このお店では違いました。

私にリングを確認させるだけじゃなく、私の日本行きのことを聞いてきたり、このブランドの歴史を話してくれたり、日本に行ってからメンテナンスが必要になった時にどうすればいいかなどの説明も含め、とてもフレンドリーで楽しい会話が続きました。(ちなみに、保証はこのリングが存在する限り続くとのこと。私がこれを子供に譲っても保証が続くそうです…まあ、子供はいないですけど)

リングはもう外すつもりがないので、箱(写真でも見えますが、結構重い木の箱です)と保証書を一緒に袋に入れてもらって、帰るときに「こんなに素敵なリング、どうもございました」とお礼を言ったら…

「いいえ、お礼を言うのはこちらの方です。アクセサリーには持ち主のストーリーがあります。今回、こうしてあなたのストーリーに合った、あなただけのリングを一緒に作ることができて、私たちもとても嬉しかったです」と。

もちろん、お店としてはひとつリングを「売った」のですから「お買い上げありがとうございます」となるのかもしれません。
でも、ここではそうじゃなかったんです。

初めての体験でした。
感動しました。

アクセサリーは「自分ストーリー」の具現化

趣味で、単純に「綺麗だから」で買うアクセサリーもありますが、それなりのお値段がするものは、これまでも人生の節目節目で貰ったり、買ったりしてきました。私のアクセサリーは私にはどれも思い出のあるものが多いです。

それでも、今回のショッピングほど特別感のあるものは初めてでした。

このお店以上に世界的に有名なお店で買い物をしたこともあります。
バックなど、他のアクセサリーも含めれば、今回のリングより高い買い物もあります。

それでも!…なんです。

こんなに感動したショッピングはなかったし、自分で買った「物」がこんなにも特別で、こんなにも愛おしく感じられることは、これまでありませんでした。
「欲しかった物が自分のモノになって嬉しい」という所有欲とは別物です。

何を売るかで目的や方法は違ってくると思いますが、アクセサリーのように生活に必ずしも必要でないものの場合、どれだけ「買い手の気持ちに添えるか」でショッピング体験は大きく変わってくると思います。

値段やブランドじゃない。
その人のストーリーに寄り添うものを、一緒に「探す」「つくる」
そこに喜びや感動が生まれる
のではないか…と。

ちなみに私のリングのカラーネームは「忘れな草」でした。
ほんとうに偶然ですが、絶対に忘れません。
この国も、このお店も。

とても良い思い出ができました。


20年以上の海外生活に終止符を打ち、2020年後半には日本へ帰国します。サポートは皆さんとお会いするときのお茶代として還元させていただきます。