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軒下書斎(コモリ部屋)

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家族との向き合い方とか、心を掘り下げた結果とか。悶々と考えたことを書斎に収めました。
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#エッセイ

あの人の『ありがとう』は切れ味の悪いナイフ

どういう訳か、 ある友人に『ありがとう』と言われると 釈然としない気持ちになった。 礼を言われて気落ちするというのは珍しい。 「君に礼を言われる筋合いはない!」 なんて台詞をよく耳にするが、 私とその友人に限ってその台詞は当てはまらない。 礼を言われる筋合いのある、旧友だからだ。 その友人をPさんとしよう。 付き合いも長くなったあるとき、 Pさんが持つ二面性に気づいた。 『誠実』と『不誠実』。 Pさんの中に内在するギャップだ。 というより、 私から見えるPさんのギャッ

1997年エヴァに取り込まれた中3の夏。

2021年。シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇が公開され、旧アニメ版の放送から二十五年の歳月を経て物語に終止符が打たれた。 エヴァの最終話(25話、26話)は、旧アニメ版、旧劇版、シンエヴァと存在するわけだが、 私の成長過程でいつも傍にいたのは、なんといっても旧劇版だ。 ――――― 壊滅的に破壊され水没する街。 朽ち果てた電柱から避雷器が外れ落ち、 空虚な音をたてて静かに水紋が広がる。 物語のはじめから世の終末を感じさせる退廃的な世界に、 中学三年の夏、私は沈み込んでいっ