ソクラテスが友だちだったら

2020年 09月 22日

ソクラテスは
政治家や詩人やビジネスマンなど賢者と呼ばれる人を訪ねては
問答法で相手の論旨を打ちのめした。

そんなときの決めセリフは、
「あなたは賢者とよばれているが、
正しい行いがどういうものかは私のほうがよく知ってるかもしれない。
わたしも徳をなしたわけではないが、
わたしは自分が徳を成しえてないということを知ってるだけに
あなたよりも賢いだろう。」だ。

若干イラっとくるでしょ。
謙虚というこん棒で殴られてる感じするから
多少気分悪いの。

ソクラテスは晩年、メントスくん
(正しくはメレトスなんだけど覚えにくいのでメントスとする)
に告訴されて裁判にかけられる。

メントスくんもソクラテスの問答法の餌食に打ちのめされた一人だった。
メントスくんがソクラテスを訴えたのは、
個人的にいらっときてたのもあるし
ちょっと言葉が立つだけで若者の人気を買って
なんか最近世間を扇動してねっていう理由からだ。

ここで、プラトンの『ソクラテスの弁明』は
もちろんプラトンがソクラテスの言葉を残そうとして書き上げた書物だから
ソクラテスの発言に焦点を当てるのが当然なんだけど

いかんせんソクラテス、
話が長くてまわりくどいのなんの。
3行くらいで言えることを3ページ使うから
3ページ読んだ後で、
ソクラテスよ、ここもっと短く言えたよねってなる。

メントスくんが1行の半分もしゃべらないのに
それに対するソクラテスの弁明が数ページに及ぶの。
メントスくんもめっちゃしゃべるなこのおっさん。
無駄に質問した、とか思ったはず。

昔会社でめちゃめちゃ話が長くて相槌うつスキも与えられず
5時間くらいしゃべり倒す上司がいたの思い出してこわくなった。
トイレ行かせてもらうすきもなくて膀胱炎なるかと思ったし
午後いちでミーティング始まって19時退勤するまでしゃべり倒されたうえに
一緒に退勤して会社でてからも会社の玄関口でずっと立ち話され、
このひとを黙らせる最適で最短な相槌はなにか熟考してたんだけど
「それは悲惨でしたね」とか安易な相槌を添えようものなら
「悲惨といえばさ」って、また悲惨関連の新しい話が30分以上でてくる
仕組みだったからあれは今思い出しても本当に苦痛だった。

その時の上司を思い出した、ソクラテスみて。

で、結局裁判で有罪判決下されて死刑判決でるんだけど
親友のクリトンが脱獄を手助けしようとする。

「だれも君にこのまま死ぬことを望んではいない
監守にいくらか持たせれば脱出はできるんだし
ほかの土地にいって君の偉大な生き様をもっとみせてくれよ」
みたいにクリトンが説得するんだけど

「クリトン、私が今まで説いてきた正しい行いとは
死を目の前にしても変わることはないよ。」なんていって
結局逃げないんだよね。

倫理的にめっちゃ正しいし、
死を恐れない様はかっこいい。
これが紀元前300年にぐさっとくるかっこよさなのか
って思う一方で、
これも無知の知のときと同様に、
正義感というこん棒で叩かれてる感が多少残って
なんか爽快に受け入れられないんだよな。

わたしがクリトンだったら
くあ~~アテナイの牢獄なんて逃げたければ
逃げられるようにできてるのにさこの頑固おやじが!
お前このままだと明日毒杯飲むんだってばー!って思っちゃう。

とりあえずソクラテスみて、わたしも日常生活で
「無知の知」や「謙虚」で相手を殴るこん棒は
無駄にふるうことにないように気をつけようと思った。

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