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やる気が出ないのは、出したくないからではないだろうか?

私たちは、もしも「病気になること」によってハッキリとなにか「トク」になると確信できたなら、病気になり得ます。

それをはっきり言ったのがフロイトです。

フロイトというとなんだかすごく奇妙な話をとても小難しく述べた人というような印象があります。

でもたとえば「ドーラの症例」などを読むと、これのどこが難しいというのだろう、と思われるのではないでしょうか。

ドーラとは少女で、父親がK夫人という人と不倫関係にあることが我慢できません。

そこでフロイトが「精神分析」を引き受けます。そしてお互いの信頼関係が築かれたころにこんなことを告げるのです。

あなたが狙っているのは、まさしくK夫人からお父さんを奪うことにほかなりません。それは、お願いによっても、議論によっても、うまくいきませんでした。

ぜひこちらの文庫を読んでいただきたいと思うのですが、ちょっと高すぎますね。いまでは新刊が出回っていないのです。残念なことです。

つまりフロイトに言わせればドーラはK夫人とお父さんを争っているというわけです。もちろん少女らしい正義感もあるとは思うのですが、そんなことはほとんど問題にされていません。

そしてそんなことがまったく何の役に立たなかったにしても、少なくともあなたはお父さんに復讐ができるというわけです。お父さんがどれほどあなたをかわいくおもっているかは、あなたもよく知っています。お父さんが、あなたの健康のためにK夫人はあきらめると宣言すれば、あなたはすぐさま元気になるでしょう。私はそう確信しています。

もういちど書きますが、これの何が難しいでしょう。じつにわかりやすく、あからさまで、本質をズバッと突いていて、ただあまりに露骨すぎやしないかとちょっとヒヤヒヤするくらいです。

大切なのはドーラは「仮病」を使っているというわけでもないところです。そういうところこそ本を読んで確認して欲しいと思うのですが、つまりここにフロイト流の「無意識に願望を叶えるために病気を引き起こす力」が発見できるわけです。

でもこれは病気です。だからよくない手段なのです。こんなことを繰り返すうちに人は目先の利益のために病気から逃れられなくなってしまいます。

冒頭のタイトルにも書いたとおり私は、こうして私たちはたとえば「やる気を出せなくなる」ような気がしているわけです。

仕事に全力を尽くすのはつかれそうとか、やるべきことになぜかすぐに取り組めないとかいった話は巷にあふれています。よくある話です。それへの「マインドハック」も「ライフハッカー」などにたくさん用意されているでしょう。

でもなにより

やる気を失うと何かトクすることがあるんではないか?

とフロイト流に自問してみる価値はあると思います。

しかし、私は、お父さんがそんな気を起こさないことを望みます。そんなことになれば、あなたには自分が絶大な権力手段を手にしているのがわかってしまいますし、そうなれば、将来、何か機会があるたびに、かならずあなたはまた発病の可能性を利用するようになるからです。他方、お父さんがあなたに譲歩しないなら、あなたはそう簡単に病気であることをやめようとしないでしょう。私にはそれがはっきりわかります。

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