妻と帽子をまちがえた男

「課題図書」としてこの本を読まされたあたりから、留学生活は転機を迎えた。といっても留学生活は毎日が転機のようなものであった。

それにしても本書は、度肝を抜かれた。邦訳もあったのだが、邦訳を手に入れることはカンザスでは不可能で、それは良かったと思う。サックス先生は文章が実にうまく、まったく苦労なく読めた。難しい単語もほとんど出てこない。まさに天才である。

こういうふうに書けるといいのだろうと思う。おそらく日本の高校1年生でも、単語レベルなら読める文章だ。専門書をこう書けるのが、才人というものなのだろう。

ちなみに、本書の原書は、次のようなタイトルで、実はそのままなのである。

The Man Who Mistook His Wife for a Hat

高校生でも読めるタイトルだと思う。おそらく、一度も辞書を引くことなく読めた。スゴイ体験だった。

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かなりプライベートなことや、半生をふり返って、いちおうの「情報」と考えられることを書いていきます。