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takumisuzuki
黄色いマーカーを引くと記憶する!
人間というのは実に不思議なもので、やっても意味のないとわかりきっているようなことでも、“神秘的な力”によって意味のあることのように思ってしまう。
溺れる者は藁をもつかむともいう。そのわらがたいそうなものだと感じられるわけだ。
1日6ページ読めば何とかなる!教にとりつかれて以来、私は連日、ただひたすら英文を経文のように読みまくる日々を送ることになった。
ドライに見れば、1日6ページ読むことだったらできるから、6ページ読む私はこんなにがんばっているんだし、それでなんとか手を打ってくださいと、空の誰かに懇願しているだけであった。
テストがある。
だから本当は「読むだけ」ではいけない。覚えなければならない。だがそこまで考えてしまうと、恐ろしさのあまり読むこともできなくなってしまう。それはすでに実験済みだ。
それでも私は「テスト対策」と称して、
「重要な部分に黄色のマーカーを引く」
という作業を開始することにした。後でマーカーされた部分だけを読み返せばいいというわけだが、受験したことがある人なら知ってのとおり、そうそう読み返す時間などやって来ない。
私の場合100日後にようやく教科書を一冊読み終わるギリギリの時間しかないのだから、マーカーを読み返す時間など、一生やっては来ないのだ。
つまりこれは「引くだけ」のマーカーなのだ。
そこで私は、「マークしたところは記憶される」という魔術を考案することにした。本当に魔術に効果があるかどうかは、テストの日になってみなければわからないが、少なくともテストの日まではそう信じ切ることで、なんとか精神の安定を保つことができよう。