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【前日譚】 福井で考える「優しき生の耕人たち」 ゲストアテンドツアー|DAY1

6月20日(火)に開催された「ノカテのおいしいトーク01|福井で考える『優しき生の耕人たち』」

イタリア在住の批評家・アーティストである多木陽介さんと、奈良県東吉野村に拠点をおく合同会社オフィスキャンプの代表である坂本大祐さんをゲストに迎えて開催したトークイベントは盛況のうちに幕を下ろしました。

イベントの様子は記事にしているので、よかったらそちらもご覧ください。

本番を迎える前、ゲストのお二人にはアテンドツアーを実施させていただいて、イベントではこのツアーを通して実際に見ていただいた福井の人や景色をもとにトークが展開していきました。

イベント前日の6月19日に巡ったのは、福井市西部の越前海岸エリア。ノカテが活動の拠点とするエリアでもあり、集落や水仙畑の様子を見て、普段お世話になっている水仙農家さんや地域の事業者と会っていただきたかった。

翌6月20日は、福井市街地と、鯖江・越前のものづくりエリア。ノカテが生まれるきっかけにもなったmake.fプロジェクトに関わりのある場所を中心に、「優しき生の耕人」の気配や「控えめな創造力」を感じられるような場所をご案内しました。

2日間を通してお二人に見ていただいた景色を、ぜひみなさんとも共有させてください。


DAY1

居倉町集落

はじめにご案内したのは、ノカテが活動の拠点とする福井市西部の海沿いに位置する居倉町(いくらちょう)集落。海岸から山の斜面にかけて広がる集落に、約150人ほどの住民が暮らしています。水仙栽培やワカメ漁など、暮らしの中で受け継がれてきた海と山の生業が残る地域です。

多木さん坂本さんの他、合計15名ほどのパーティでツアーがスタート。居倉漁港の駐車場を出発し、狭い斜面地に広がる集落内を歩きながら上を目指しました。
集落の解説をしてくれたのは、越前海岸の水仙畑が「国の重要文化的景観」に選定された際、その担当者として奔走した福井市職員の藤川さん(白シャツに麦わらハットの御仁)。
漁港から5分ほどで居倉集落の一番上まで上がってくることができます。
集落を見守る春日神社の階段前には、ノカテがデザイン・設計を担当した文化的景観の案内サイン看板。水仙の栽培カレンダーや展望スポットが載っていて、水仙が咲いていない時期でも産地の散策を楽しむことができます。

越前海岸の水仙畑

居倉町集落の周辺には、令和3年3月に国の重要文化的景観に選定された越前海岸の水仙畑が広がっています。

越前海岸は千葉の房総や淡路島と並んで日本水仙の三大群生地の一つとして知られ、栽培面積は全国一位。寒風に耐えながら育つ水仙は、特にお正月を彩る花として人気を博し、「越前水仙」のブランド名を冠して全国に出荷されています。実は日本水仙は福井県の県花でもあります。

この時期、日本水仙は球根の状態で土の中に眠っています。
11月ごろから花が咲き始め、1月〜2月ごろに見頃を迎えます。
ノカテが管理している水仙畑へ。日本海がすぐそこ。
海をバックにパシャリ。
6月は草刈りシーズンということで、イベントを終えたあとにちゃんと草刈りしました。

ノカテがここで活動している理由はまた後日noteで記事にしたいと思いますが、2022年にPASS THE BATON MARKETへ出展した際に掲載いただいた記事でコンパクトにまとめていただいているので、お時間のある方はぜひこちらもご覧ください。

イクララボ

こちらの赤い建物は、居倉町集落の中にノカテが整備した地域拠点。空き家となっていた物件を購入し、文化庁の補助事業などを活用しながら改修を行いました。地域内外の人々をつなぐ交流の拠点として運営を行なっていきます。

外壁の色は、この地域の家に昔から使われてきたベンガラに近い赤。
地域のランドマークとしても機能するよう、あえて目につきやすい色を採用しました。
屋内1F部分は広々とした土間。その時々に応じて形を変える。
海に面した開口部からはやわらかな自然光が差し込みます。
家の中にいながら、日本海を一望。
実はなかなかの高台に建っています。
野花摘みも楽しんで。
ちょうど紫陽花がきれいな時期でした。

志野製塩所

居倉町を離れて次に向かったのは、越前海岸への移住者である志野さんが営む製塩所。海岸沿いの廃工場を改修し、製塩のためのかまどはもちろん、志野さんがつながる全国各地の素敵な商品をあつめたカフェ兼セレクト雑貨ショップも併設されています。

海に向かって整備されたテラス。
雄島、亀島、鉾島という3つの島を一度に見ることができるのはここだけだそう。
オーナーの志野佑介さん。千葉県の出身で、越前海岸には2019年に移住。
様々な生業をつなぎ合わせて生きる現代の百姓。


製塩用の窯がちょうど炊かれているところでした。2000ℓの海水から約40kgの塩がとれます。
「塩はすでに海の中にあって、ぼくはそれを取り出しているだけ」という言葉は
多木さんの思い描く「優しき生の耕人」の謙虚な姿勢そのものでした。
製塩所内の壁には、志野さんご家族の暮らしを記した大きな壁画。
製塩を柱としながらも、野菜づくり、米づくり、海人、養鶏など
いくつもの生業をもちながら越前海岸での暮らしをつくっています。

ワタリグラススタジオ

この日の最後に訪れたのは、越前海岸に工房を構えるワタリグラススタジオ。オーナーは地元出身のガラス作家である長谷川渡さんです。
クローズ間際に滑り込み、ちょっとだけ工房をのぞかせていただきました。

日本海を望む高台に建つ工房。

全国各地のガラス工房で修行を積んだ渡さんは、13年ほど前に地元である越前海岸にUターン。ガラス工房での制作に精を出しながら、越前海岸盛り上げ隊というまちづくり団体の隊長としても活躍されています。奥さんの陽子さんとは二人三脚。

2020年に行った、越前海岸の交流拠点「はりいしゃ」整備のためのクラウドファンディングでの記事は渡さんの人柄がよく表れた素敵な記事なのでぜひご覧ください。

1日目の終わりに

ワタリグラススタジオを後にして波の華温泉で汗を流したあとは、再びイクララボへ。日本海へ沈む夕陽を見届けながら、ささやかな食事会です。

イクララボに差し込む西陽。
外に出ると、ぼくたちがいつもお世話になっている水仙農家の藤崎さんが特等席で夕陽を眺めていました。
この日は本当にきれいな夕陽が見られました。
イクララボに戻って食事会がスタート。
志野さんにいただいた鶏肉や越前海岸で獲れた魚のお刺身、藤崎さんからいただいた地物の海藻などをつまみにしながら、豊かな時間を過ごしました。
改修が終わったばかりのイクララボからこぼれる灯りがこの土地を照らす光のように見えて、なんだかわくわくした気持ちになれた夜。

多木さん坂本さんに、ぼくたちの拠点である越前海岸を見ていただいた一日目。ぼくたちが豊かさを感じてきたものに対してお二人も同様に豊かさを感じていただいていたことはとても嬉しいことでしたし、翌日のトークイベントでも越前海岸の可能性については多くの言及をいただきました。

お二人を歓迎するアテンドツアーといいながら、ぼくたち自身が越前海岸の豊かさを再認識するような時間でした。

二日目の行程もまとめてひとつの記事で紹介しようと思いましたが、長くなってしまったのでもうひとつ記事をつくることにします。

次の記事でまた!

文:髙橋要
写真:石原藍、片岡杏子、坂田守史、髙橋要、髙野麻実、中川奈保

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