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#14

市でのやり取りは、売り手と買い手の二者間で、会話によって全ての取り引きが成り立つところに特徴がある。会話による位置の特徴には、市での取り引きは、客が店に訪れてから、買う品目が決まり、商談が成立し、また客が離れるまでの一連の流れがある。
その流れの中で、客あるいは売り手から、取り引きが成立する上で節目となるような発言があり、会話が進んでいく。例えばある店では、商品を山積みにして計り売りをしたり、さらに分けて盛ってあっても値段が表示されていないなど、そもそも会話なしで取り引きが成立しないような仕組みにっている。
取り引き成立の過程を見ると、客がすでに買う商品を決めて来店している場合が6割、売り手の方から品物を進めている場合が3割、残る1割は何も買わずに帰った客である。
全体をして会話は売り手上位で進むけれども、品物についての説明を繰り返すことが主体となっている様子がうかがわれた。客との間に沈黙を作らないことも重要な戦略なのだ。
さらには、商談成立後、支払いまでの間に、会話が最も発展することもわかった。品物の話題だけに終始していたのが、家族の話や自分の体調など、いわゆる世間話が弾むのは商談が済んでしまった後で、「おまけ」としてちょっとした一品を加えるのもこの時である。そうした継続性に向けた売り手戦略の一つでもある。
参照文献:山本志乃【日本の民族-物と人の交流-】吉川弘文館 2008


社会が発展してきたのは、様々な社会関係を安定化してきたからである。交わりを持つためにはまず槍を下に置くことができなくてはならなかった。そうなってようやく人々は利益となることどもを互いに作りあい、互いに満たし合うことができるようになったのだ。
ブリトン人が「アーサー王年代記」において語るのは、アーサー王が大工の協力を得て、宮廷における驚嘆すべき発明品を作り出した経緯である。それがすなわち<円卓>である。それに着座すれば騎士たちは争いをやめたのだから。
それより前といえば、「下劣な憎しみ心」から小競り合いが起これば、どんなに盛大な饗宴でも決闘になることがあったからだ。
参照文献:マルセス・モース【贈与論】岩波文庫 2014

#メモ