『一難去ってまた一難』高額紙幣とサイクロン①
2015年12月、チェンナイを襲った100年に一度の大洪水で、奇跡(?)の生還を果たしたのは前述した通り。
そこからはしばらくは、特に自然災害に見舞われることはなかった。しかし、2016年12月12日。またしてもチェンナイが自然災害に襲われることとなる。大洪水の記憶もまだ新しい、ちょうど一年後に起こった出来事である。
超巨大サイクロンがチェンナイの街を直撃したのだ。とあるニュースサイトにはこう記してある。
インド東部・ベンガル湾沖で発生したサイクロン「Vardah(バルダ)」が12月12日午後、タミル・ナドゥ(TN)州の州都チェンナイ市に上陸した。現地報道などによると、市内は風速140キロの強風に見舞われ、倒木などが相次ぎ、至る所で通行止めとなった。停電や断水のほか、インターネットも不通となるなど、生活・経済面に大きな影響を与えた。 (ニュースサイトより抜粋)
その時、社長は一時帰国中。店をマネジメントしているのは僕だけだった。その日は朝から風が強く、隣のレストランの店長とかと「サイクロン来るらしいね〜」「去年みたいな洪水は勘弁だよな〜あはは」みたいな話をしていた。
時間が進むにつれて、どんどん強くなる風。雨も横殴りの様相。このまま営業していてもお客さんはどうせ来ない(いつもお客さんは少ない)ので、店を閉め、シャッターも下ろし、外の様子を眺めていた。
外に停めていたオートがずるずると動き出す。水かさもまた上がってきた。オートが水没する前に高台まで運転しようと、何度かトライしかけたが、風が強すぎて何が飛んでくるかわからない状況。オートの心配より、自分の命!!と言い聞かせ彼を見放した。さらに強くなる雨風に、小さい頃、台風が来た時にちょっと興奮していた感覚を思い出した。
「オートよ、すまん…!」
1時間を過ぎると、先ほどの天候が嘘のように雨風がやんだ。外に出てみる。そこには想像を絶する悲惨な光景が広がっていた。
まずは向かいのショッピングモール。
角に位置していた電化製品を扱うお店はこの有様。全てのガラスが割れ、店内がむき出しの状態。そこへ雨が入り込み、ほとんど全ての電化製品がダメになったらしい。外に一番近い場所に置いてあったのが洗濯機だったので、雨水でついでに洗っちゃえばよかったのに。とか言ってる場合ではない。
そしてその2階。
バーベキューネーションというレストランが入っていたのだが、こちらもガラスが全て落ち、剥き出し。従業員が外を覗いているが、成す術なしと言ったところか。
右隣のレストランはこうだ。
目の前の木が折れ、完全に道を塞いでいる。レストラン側に倒れなかったのが不幸中の幸いか。ちなみに木が倒れているのは道である。川ではない。
左隣のレストランのルーフトップに設置してあった、ウッドデッキもこの有様。強風で全て飛ばされ大破していた。
大通りに面した“インドのドンキ”ことサラバナストアーもこの貞操。もともとこうだったと言ってもインドなので何の不自然もないのだが、もう少しちゃんとしていた。店名を記した看板も全て剥がれ落ち、ビルの側面も骨組みがむき出しになっている。
と、チェンナイ全域でこのような被災状況だった。しかし、
秋平だけは全くの無傷だった。
これを奇跡と呼ばずしてなんと呼ぼう。実際、暴風雨の最中も秋平の中は比較的平和で、外でこのような惨事になっているなんてことは想像もしていなかった。だから、一歩外へ出て、この被害状況を見たときはゾッとした。一歩間違えていたら命がなかったかもしれない。この数日後に一時帰国を控えていた僕にとっては正に「こんなところで死んでたまるか!!」だったのだ。
これほどまでに自分の幸運さを感じたことはない。周りの全ての店舗で被害が出ているのに、僕ら秋平だけは次の日から通常通り営業再開できた。100年に一度の大洪水を乗り越えた僕らには怖いものなどなかった。ということだろうか。いや違うか。
しかし、この後予期せぬ災難に見舞われることは、このときは想像もしていなかった。
See you next No Joke...
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