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『一難去ってまた一難』高額紙幣とサイクロン②

超大型のサイクロンがチェンナイの街を襲った話は前述の通り。

奇跡的に無傷だった秋平はというと次の日には営業を再開していた。しかし、この後待ち受ける出来事は、全く予想だにしていなかった。

それは、このサイクロンの約一ヶ月前に遡る。インド政府が突然、このような政令を出した。

「0時から500ルピー札と1000ルピー札を廃止します。」

当時は全く意味がわからなかった。いつも水を持ってくる業者の男が急に店に入ってきて「明日から500と1000が使えなくなるらしいで!」みたいなことをタミル語でまくし立ててきたが、いつものインド人の訳分からん嘘だろうと流していたくらいだ。

しかもそれが発令されたのが夜の21時とかそれくらい。3時間後には、僕らが持っているお札、それも高額の部類だけが突如、紙切れとなってしまうということだった。全く意味が分からない。

インド政府の思惑としては、どうやら富裕層が溜め込んでいると思われる“ブラックマネー”をあぶり出して、税収やら経済の活性化やらを狙ってやったことらしい。(詳しくは分からんので、その辺詳しい人に聞いてくれ)

数日間は、500ルピー札と1000ルピー札を銀行にて両替することができる、という施しは成されたのだが、そのせいで次の日から両替を求める人で銀行は大行列。前日の売り上げを入金するにも1時間以上並ばなくていけない状況になっていた。

しかもだ。新しい500ルピー札と1000ルピー札が銀行にまだ届いてねえ、ときやがった。となるとだ。両替するにも今使える一番大きな札は100ルピー札。いきなり、分厚い札束を持ち歩く事なってしまった。さらにだ。通常ですらお札やお釣りが足りていないインドだから、100ルピー札もじきに無くなった。お支払時20ルピー札500枚で支払った方もいた。ジンバブエかよ、と。挙げ句の果てにはだ。最初に発行された新札が「2000ルピー札」だった。馬鹿かよ、と。

日本でいうと「1万円札と5千円札がなくなったようなものだ」というのを、頭良さそうな人が書いてるのを見たことがあるが、僕の体感は違った。そのまま、1000円札と500円玉が廃止されたようなものだった。そして新札は5000円札だけ発行された、みたいな。

例えばコンビニで150円のおにぎりを買おうとして5000円札しか持っていなかったとする。すると、お釣りは100円玉以下の硬貨しかない。想像してほしい。財布パンッパンである。こんなクソ迷惑な話があるものか。あったのだ。

この混乱は、飲食業をやっているものとしては大打撃。前述の通り、ただでさえお釣り確保に苦労する国なのに、お金がない。みんなカード支払いにする。混線する。支払えない。2000ルピー札ならありますけど、、と言われるもこっちのお釣りは100ルピー札しかない。しかしこの人に10枚も渡してしまうと今日の営業中、絶対お釣りが足りなくなる。カオス!!!この時ばかりは泣きそうになった。

そしてみなさん、お忘れではないだろうか。
この一ヶ月後にサイクロン事件である。

サイクロンにより、交通網は麻痺。銀行も被害を受けているところがあったり。何よりも、ウチの近くの電波塔が壊れたらしく、ケータイやクレジットカードを読み込むマシンに電波が全く入らない状況となった。もう一度言う。カオス!!!

一回ここまでの流れを整理しよう。
まず、高額紙幣のクダリで現金が超少ない。現地に住むものの感情としては「なるべく、現金を使いたくない!いざという時のためにとっておきたい!」と思っていた。だからみんなでカードを使う。そこへ、サイクロンの直撃。もともとシグナル弱めで使いにくかったのに、電波塔崩壊。カード支払いも完全にできなくなる。どう支払えと言うのか。

そこでどんなことが巻き起こるか、みなさんにはもう一度想像してみてほしい。
客「カード払いで」
僕「はい。(カード通す。無反応。)すみません、カードダメで…」
客「現金なんて持ってるわけないじゃない!何言ってるのよこのご時世に!」
僕「とは言われましても…」
客「どうしようかしら」
僕「僕、オート運転してATMまでお連れするんで降ろして来てもらえますか?」

と、ATMまで連れて行き、お金を降ろさせ、支払いをさせる。と言う、どう見ても犯罪者のソレかと見紛うかのような、振り込め詐欺かのような手口。いや、降ろさせてるから引き出せ詐欺か。そんなことはどうでもいい。

この時ばかりは心身ともに疲弊していたのを覚えている。お客さんも数々の騒動で疲れてるし、こちらもこちらで「このお客さんは現金持ってますように…」と天に祈る気持ちで接客していたし。

こんなことをやりながら、この同時多発的な騒動が収まるのを耐え忍んだ。

コレだけで驚かないで欲しい。と言うのも、

11月に高額紙幣廃止
12月5日州知事死亡
12月12日サイクロン直撃

実は、この2つの災害(?)の間に、州知事が死ぬ、と言う大事件も起きていたのだからチェンナイは大混乱だったのだ。

州知事死去については、時間があれば書こうと思う。。この時期のことは、もう思い出すだけで疲れたので今日はこの辺で。




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