Sea of Stars雑感(ネタバレあり)
クリア後に読むことを推奨します。
※The Messengerの要素およびネタバレも含む。
大きな元ネタと思しきクロノトリガーはプレイしてないけど、それにしてもここの作るゲームは前作も含めて本当に思想が強いなあと思った。
その思想とは「自分の憧憬のために世界を創る者は罪人である」という思想だ。要するに、自分たちの行いをめちゃくちゃ自分たちの創ったゲームの中で断罪しながらその美しさを広めるためにゲームを売ってる。こじれが強い。
Sea of Starsにおいて、咎人や悪人は基本的に「自分の世界を創った/創ろうとした者」だ。
死体を蘇らせ、自分だけの王国を築こうとしたロマヤ。
幻覚の世界に他者を閉じ込める術を用いるソウルキュレーター。
信仰で他人を支配した鳥人たち。
人間を己の糧のための苗床としてしまう『棲まう者』たち。
『至点の子』のシステムを維持しようと努めるモレーンも、ブルガバスとエルリナに糾弾される。
そして世界そのものを「レシュアンと対決する場」に改造したフレッシュマンサー。
他にも様々な局面で「閉じた世界を創る者」と「その世界に閉じ込められた者」というモチーフは繰り返されている。
では、その罪を贖う方法は何か? これも作中で明確に示されている。
『別の世界になにかをもたらすこと』だ。
はじめに出会う重要人物、土魔道士マルコマッドは作中における最もミクロな「世界の創造」――威嚇と立てこもりで他者を風洞から追い出す――を行おうとしたが、ゼイル一行によって阻止され、そしてその際『土魔法の力を村人にもたらせ』と助言される。これによりマルコマッドと他の村人は和解し、マルコマッドは冒険において重要な役割を果たす友人となる。
ロマヤやモレーンも「他者に与えるものがある」ことや「違う村の村長となる」ことでその罪が贖われ、命までが奪われることはない。
一方で、『閉じた世界』を創ることしかできなかったソウルキュレーターは見せ場もなく、『世界を移動できる』セライに呆気なく殺される。
同様に鳥人たちも信仰(そもそもが偽物であったためだが)で他者を縛ることしかできなかったため、大鷲の贈り物を授かったレシュアン自身の手によって死を与えられることとなる。
ブルガバスとエルリナも至点の子の欺瞞を指摘するまではできたが、贖罪は選べなかった。言い方が悪いが、他人の創った世界を否定するときに『かわいそうな茶番の子』というもっとミニマムな自分の世界を創り、それを維持してしまったのだ。それにより二人とも結局は魔物と化し、誰かの手駒として再び茶番を演じさせられる。
レシュアンとエフォラルはまさにその罪業のシステムにおけるクリエイターの象徴だ。
数多の並行世界を無責任に創り出してしまうこと。
その世界を、なにか限定された目的の場にしてしまうこと。
その罪は決して贖い切れるものではないが、一方で裁き切れるものでもない。何故なら、『新しい世界を創りたい』と願う欲望は『別の世界に何かをもたらしたい』という欲望と表裏一体であり、どちらかがある限り存在してしまうものだからだ。
ゆえにSea of Starsで二人は最終的に『ガールが生きている世界』――『己のためではない世界』を主人公たち、そしてプレイヤーたちに贈って退場する。それは無数にある贖罪と断罪の一つに過ぎず、ひいてはゲームそのものだ。
前作『The messenger』においてもこの思想は強く表れている。
『The messenger』の世界は悪魔の軍勢によって恐怖がループさせられている世界だ。それに抵抗する者たちもやむなくそのループに従って抵抗していたが、トロ…ずいぶん鈍感な主人公によってそのループシステムは打ち砕かれ、『届けること』によってこれまで戦った様々なボス、そして呪いの元凶すら浄化されてゆく。
『The messenger』の店主はあるときこんな話をする。
「試練は試練に打ち克つことが目的なのではない。そのたびに思考し、内省し、なにかを持ち帰ることだ」と。
DLC楽しみだなあ。
おわり
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