呟きもしなかった事たちへ_No.50(2023年7月号)

※コンセプトは創刊号をご確認ください。ぼーっとする文章が続きます。バックナンバーはこちら索引もあります。

デベロッパーとディベロッパーの違いを教えてくれ。いや、違いは無いらしいんだけど、こんな最近カタカナになった単語で表記がブレることある?

今月も、呟きもしなかった事たちへ。

抗生物質

抗生物質、何度見てもすごい響きだと思う。生に抗う物質、と始めて読んだ時は恐れおののいた。字面はどう見ても毒である。synbiosis(共生)の対義語だからantibiosisだし、その結果抗生です、というのは後で言われれば分かるのだが、そうはならんだろという気がする。

「悪性」じゃないから「良性」というのも納得いかない(とは前も書いていた)。悪性じゃなければコブが全身に出来てても良性です…とはならんだろ。

J.G.バラード

の初期短編集「永遠へのパスポート」をたまたま古本屋で見つけ、読んだ。たいして面白くない事に安心する。一つは、ちゃんと絶版になったものはつまらないものであること(レア本探しは徒労なのでやらなくていいこと)、一つは、バラードは(作風としてそうであってほしかったのだけど)ちゃんと修練で上達した人であるとわかったこと。

こういう読書もある。

フェイスマッサージ

先月号で触れていたフェイスマッサージ器具をいよいよ使う。

ASMRでおなじみのやつ

ひんやりしていて、いい。保冷剤を顔に当てるよりは冷たさが柔らかく、そして顔にしっかり当てられる。マッサージがどうというより、頬を冷やしていて楽しい。化粧水とか塗った後で滑りがいい時に使うと夏には大変良さそうだ。

しかしこれはマッサージ器なのか?よく分からんな…と思った矢先、傾けたコレからポコポコとASMRで使われる音がし、その瞬間泡の動きによる細かい振動が伝わってきた。あ、お前…もしかして本来の用途でもポコポコさせるものなのか!?なお、通販で買った際に使い方のマニュアルが一切なかったので真相は分からない。微弱な振動だしこれがメインだとも思えないが、ポコポコさせることのマッサージとしての良さは何らかある。

一周回って、を正しく実践してしまったかもしれない。

宛名

仕事でメールの冒頭に「〇〇様」とつける。この時、例えば社内だったら「〇〇さん」の方がいいのではないか、みたいな話はたまに出てくる。確かに文中では「〇〇さんの作業が終わったら」とか書いておいて、冒頭では「〇〇様」なのは変だろう、という意見も聞く。

どうでもよくないか。

例えば友人への葉書、本文で「△△ちゃん」と書いておいて表の宛名に「△△様」って書くのは変、みたいな話にはならないだろう。こう考えるとメールの冒頭の宛名だけ様付でも良いように思える。こんなものはこうやって解釈の幅を広げればどうとでも考えられる話で、グダグダとマナーめいたことを言っても詮無いと思う。あらためて、どうでもよくないか。

でもこういうところから人を値踏みするやつもいるんだよなー…という引っ掛かりは確かにある。

割り箸お付けしますか

コンビニで「割り箸お付けしますか?」を一度の買い物で3回言われた。

「(レジに着くなり)袋入りますか?」
「あ、いらないです。それとホットスナック下さい」
「はーい。お箸いります?
「要らないです。」
「はーい。(ホットスナックを取って戻ってくる)お箸いります?
「要らないです。」
「はいはい。(お手拭きを引き出しから取り出す)冷たいものと温かいもの同じ袋でいいですか?」
「はい問題ないです。」
「はーい。(袋詰めをしていく)お箸いります?
「要らないです。」

察するに、このスタッフは机の上に商品を黙視するたびに聞いている。そこで「割り箸ヨシ」とならないと、聞き忘れのリスクがあるので聞いておく、というフローになっているのだろう。エラー対策としてはよく出来ているが、それはそれとしてコント感も出ている。早々に同意してもらった方が本人も楽なんだろうなと思う。

でも要らないです。

風紀委員

会社でも試験的にオフィスカジュアルが導入され、それなりに好評なまま夏が来た。Tシャツシーズンである。

会社としてはTシャツポロシャツは無地であれという事になっているが、無地のTシャツなんて案外持ってないもので多少柄物やプリントものを着てくる社員が出始めた。頑張ってほしいという気持ちと、人事部に目をつけられるなよという気持ちがある。さながら風紀委員との戦い。

母校には風紀委員なんてなかったのでこういう所から「なかった青春」を取り戻している気がして楽しんでいるのだけれど、そもそも世間には風紀委員なんてあるのだろうか。フィクションにしか存在しないシステムならそれはそれ面白いし、そんなもので現実を楽しんでいる自分も大分面白い。

東の東京、西の東京

東京健康クラブまねきの湯、旧東京健康ランドは1986年開業でほぼ同い年の存在である。加えて、生まれてから社会人になるまで京王線沿線に住んでいたので、新線新宿の車内にその広告を見ていて気になる存在ではあった。それが9月に閉館するということでなくなる前に行ってみる事にした。ついでに東大島から降りて、小松川公園を見てから荒川を渡る。

大きな団地やマンションがあるという程度の認識の街だったが、小松川公園は広くいい公園だったし、そこでキャッチボールをするのは気持ちが良かった。公園には多くの家族がテントを立てていたが、なるほど最高だろうなと思う。荒川の橋は風が気持ちよかった。

健康クラブは、確かに建物自体は古くなっている感はあったが、十分にゆっくりできた。緞帳の降りた宴会場でビールを飲んでいると時間が溶けていくようだった。

船堀駅目の前の展望台から、スカイツリーに夕日が落ちるのを見た。その後よく分からない中華料理屋で餃子をやった。

良い街だ。生活というものが落ち着いていて、走り続けるのとは違う世界がある。それは最高だと感じる時は確かにある。でも健康ランドも閉館するし、団地も大分老朽化が進んでいた。このまま落ち着いていると終わってしまうのだろう。

このセクションで初めに書いたけど、京王線沿いにあった地元は高架化工事によって大幅に街の構造が変わり(と書けば桜上水から上北沢だということはすぐに分かる)、線路沿いにあった中華料理屋や安い飲み屋なども無くなった。それとは関係なく、生家とその両隣は土地ごと売却されて通りの眺めは完全に変わった。一方でベーグル屋なんかできたり、自分が子供の頃から古い店構えだった天ぷら屋はリノベして天ぷら中心の定食屋として生まれ変わっていて、まぁなんだかんだ言っても再生し歩みを止めていない感じはあった。

さらに西に行って調布から多摩センターの方に行くと、これはまたこれで変わらなければならない所でもある。

中年になってきて、自分がどこで生活すべきなのかというのは考え物だなと思う。進み続ける街にいるか、立ち止まり終わる街にいるか。そういえばイギリスの時にもそんな話をしたな。


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