呟きもしなかった事たちへ_No.7(2020年2月号)

※コンセプトは創刊号をご確認ください。ぼーっとする文章が続きます。バックナンバーはこちら

月初にアップするので、「2月号」と言いつつ正月から仕込んでいる。これがアップされる頃には正月気分というものはどこかに行ってしまうのだろう。と思っていたが、1月5日にスーパーに行ったら節分の豆が売られ鬼は外の曲が流れていた。正月気分はもう世の中にはなかった。

今月も、呟きもしなかった事たちへ。

ハンバーグ

ファミレスなら気にしないし、高い所に行くと味を選ばされたりはしないのだけれど、ミドルクラスで「お好みのソースでどうぞ」と言ってくるハンバーグ屋、実はかなり苦手だ。挙句「ソース無し」が選べたりするともう発狂しそうだ。肉はソース前提のうす味なのか?逆で、肉にしっかり味がついていて、ソースが案外あっさりしているのか?実はソース次第でハンバーグの種を変えているのか?(安すぎない店なのでその可能性もある)どういうコンセプトなんだ。情報が無く、何もわからない。

「ここのハンバーグは味は薄いのでしょうか?」

と聞くのも失礼だし、聞いたところで答えは「ですので、お好みのソースでどうぞ」だろう。

俺はここに初めて来たんだ。お好みはこれから決まるはずなんだ。それなのに何なんだ、この状況は。

きつねラーメン

正月に姉夫婦の家に集まった際、母が

「この間神戸に寄った際、学生時代好きだったきつねラーメンを食べたけど、味が何か違う気がした」

と言い出した。待ってくれ、きつねラーメンってなんだ。

母はあまり神戸に住んでいた時代の話をしない。祖父が事業を畳む前の話で、いわゆるお嬢様自慢になりがちだからではないかと思う(対して、大学時代自分がモテた話はする)。それゆえに唐突な話だったうえに、どう聞いても庶民的な響き、きつねラーメン。おう、どうしたどうした。

聞くと、神戸の方ではラーメンに甘く煮た油揚げを乗せるきつねラーメンというものがあるという。調べてみてもあまりヒットせず、神戸名物という訳ではないようだが、確かに母がいた三宮にきつねラーメンを出す「ほうらく」という大衆食堂があるらしい。古くからある店なので話と合致するし、まぁここなのだろう。食べログによると味の強いチキンライスで作るオムライスと合わせるのがお勧めなようなので、相当味のあっさりした(醤油が弱く塩が強いタイプの)中華スープなのだろう。

見よう見まねで作ってみた。鶏を炊いて塩を強めに、醤油は弱めにして(そして最後に油を浮かべ)京都らしいラーメンを作り、「道頓堀今井」のような甘い揚げを乗せる。何というか、滋味は感じられるが、総じて地味だ。京都のきつねうどんが昆布出汁から鶏出汁になったようなものなので、きつねうどんで良い気はする。

お粥

美味しい。七草のフリーズドライを4つも買ったので七草粥も作り放題だ(といいつつ作りまくっているので今日時点で残弾2発)。

お粥は炊飯器で作れて便利だが、白米と一緒に作れないのが欠点だ。

何を言っているのかと思われそうだが、お弁当用のご飯を炊くので朝は白米にせねばならず、夕飯にお粥を作っている時間はないのだ。かと言って朝をお粥にして昼を外食にするのは何か本末転倒だ。

結局弁当のお米を冷凍ご飯にしたのだが、やはり美味しくない。無念だ。

お弁当も作らず(つまり会社にいかず)朝ゆっくりお粥を食べたい。老人みたいな願望になってしまった。

おいしいクッキー

株式会社おいしいのクッキー、美味しいんだけど知名度が低い。会社で食べたり席に来た人にあげたりしているが、誰も知らない。

おいしいのに。

旅館の朝食

旅館の朝食は米が足りない、といつも思っていた。ご飯のあてが多すぎる。鮭、卵、漬物、何かの時雨煮、明太子、唐辛子味噌、ぐらいは出てくる。多い。ご飯をおかわりしないと足りない。

鮭は大きく切ったり、明太子は玉子焼きに乗せて食べたり、そうやっておかずをガツンと消費して、それに対して少量のご飯を食べるのが正攻法なのは分かっている。ご飯がおいしい、のではなく、ご飯でおいしい、が正しい。白米は口内の調子・リズムを整えるためのもので、おかずが主。白米を美味しく食べるためのあてという発想ではない。それは理解している。

言われてみれば、高級なものは本来お米がなくても美味しいはずではないのか。思い返せば例えば寿司なども高級になればなるほどシャリは軽くなっていく。少量のお米で楽しめる山海のものを味わうようになるのが正しい食事の在り方なのかもしれない。味が濃いとか言っている場合ではない。

しかし、そうは言ってもおいしいおかずでご飯をモリモリ食べたくはないか。

カニ酢と、鰻のタレ

お酢にみりんを少し加えてまろやかにし、味付きぽん酢を色がつく程度に足したカニ酢もどきで、カニかまを食べる。うまい。脳が程よく騙されている。

カニが好きなのではなくてカニ酢が好きなだけなのかもしれない。前述のカニ酢もどきで鱈なんか食べても満足しそうだ。

こういう話になると、鰻のタレの話になりがちだ。鰻ではなく、タレご飯だけで良いと自慢気に言う輩。あれを言うやつは全員何も分かっていない。鰻を乗せてたご飯なら脂も落ちてようが、単に白米にタレかけたものはしょっぱくて旨味もなかろう。鰻が乗っていたという事実が必要なのだ。

だが、カニとカニ酢…食材からの油分もなく、カニの力とは言わば旨味だ。カニ酢に味の素を落としたら?俺はそれだけで騙されるのではないか?そもそも味付きぽん酢に旨味も入っていないか?

カニは好きだが、カニ酢だけでも俺は酒が飲めるのかもしれない。その事実の先に何があるのか。

角煮かけご飯

お弁当を作らない日はよく会社そばの中華料理屋でランチを済ませる。ここは日替わり定食はあるが、麺類や炒飯は特に日替わりは無い。

だが、毎回飽きもせず「角煮かけご飯」を頼んでいる。とは言えそもそもこのメニュー、実質日替わり丼だ。

どうも厨房を見ているに、この「豚角煮と野菜のあんかけ炒めのせご飯」と称した方がいい料理、注文者が少なく、1回毎に作っているようだ(日替わりの炒め物とか麻婆豆腐は複数人分いっぺんに作っている)。そのため、直前に作った炒め物の味付けに引っ張られて毎回味が変わる(下手するとお玉を変えてない可能性がある)。火曜日は日替わりがレバニラなので醤油のような味が強い。木曜日は日替わりが油淋鶏なので麻婆豆腐に引っ張られて豆板醤入りになりがちだ。あんの固さも違う。

それでも毎回うまい。しっかりうまい。どうなってるんだと思いながら毎回頼む。

飯の話

読み返すと飯の話ばかりになった今月であった。衣食足りて礼節を知るともいうので、せめて食事ぐらいはと気を付けていた結果だと思う。もう少しカルチャー的なモノにもふれる1月でありたかった。

ところで読み返したのだが、これを出す2月頭、冒頭の話で出てくる節分はまだ来ていない。あまりにも気が早くないか?

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