呟きもしなかった事たちへ_No.46(2023年英国号)

※コンセプトは創刊号をご確認ください。ぼーっとする文章が続きます。バックナンバーはこちら索引もあります。

英国出張に1週間ほど行った。結果としてロンドン・パース・ダンディー・アバディーン・エディンバラに立ち寄り、英国については何となく体感出来たところもあるし、覚えておきたい事を記録しておくべきだろう。ツイッターにも色々書いたが、まぁいい。

今回は、呟きもしまくった事たちへ。

飛行機の話

一番暇だからこれが一番長くなりそうな予感がする。ロシア上空を飛べなくなったため、往路はアラスカ・グリーンランド経由の15時間、復路は南欧からアンカラ・モンゴル経由の14時間だ。シレッと往復ではなく世界一周している(北極圏を使って世界一周を名乗るのもずるい気はするが)

ところで、僕は食事中にヘッドフォンを付けるのが嫌いなので、よく言われる「映画を見ながら飯を食う」という飛行機のスタイルをあまりしない。しかし飛行機の中の食事はどこまで行っても一人だし(※この点については別途触れる)、かと言って一人Kindleを脇で開きながら食べるのも味気ない。ヘッドフォン無しでも見れる映像は無いかと、機内システムで「スポーツ」で検索をした(サッカー辺りが良いか、と思っての事だった)ところ、果たして出てきたのは「ワールドプロレスリング特番」だった。2022年のBOSJ(ヒロムVSデスペラード)とG1決勝(オカダVSオスプレイ)を合わせて1時間だ。…そんな事があっていいのか?北極圏上空で、イタリアンでワインを飲みながら、ヒロムがタイムボム2.5でデスペから3カウントを取る名勝負を見る…本当に?何もかものバランスがあまりに悪くて笑ってしまったし、実際やったら馬鹿みたいに楽しかった。

帰りの飛行機で、メインの食事以外に軽食のラーメンとちらし寿司とサンドイッチを(2時間ごとに注文して)食べている人がいた。そしてひたすらにシャンパンを頼んでいる(多分ボトル1本分はゆうに飲んでいる)この動けない状態でよくそんなに食べて飲めるなとも思ったが、「閃光のハサウェイ」の「ハウンゼンのお食事を全て召し上がられたのはお客様だけですよ」というセリフも思い出された。多分ハサウェイが無かったら何だこのおっさんという感想で終わっていただろうが、このセリフを思い出せたおかげで脳内ハサウェイごっこが出来たし、トイレに行って戻ってくるだけで「しゃらくさい話をしてくるCA出てこないかな」とか思えて大分時間が潰せた。

時間を潰すと言えば、「RRR」は映画としても最高だったし、それ以上に長くて助かった。インド映画はもっと流行って機内映画のシェアを取って行ってほしい。

環境の話

ロンドンでもアバディーンでも、思っている以上にテスラ車を見た。売れている…というより、買われているんだろう(これは同じようで全然違っている)。そしてホテルには歯磨き粉も歯ブラシも無いよ、というのは聞いていたのだけれど、櫛も無くなっていた。どうもプラスチックだからのようだ。なるほど。

思っているより環境への意識の高さはリアルなんだよな、という事を認識しないといけない(これは仕事をするうえでも相当大事な感覚だと今回思った)。油ガス価があがりまくって石炭火力発電すら検討している国ではあるのだけれど、出来る範囲では環境によき人であろうという気持ちがある事は大事だし、英国人は仕事をしない限りにおいてはいい人たちだ(仕事をしていて「いい人」が存在するかという議論はさておく)。

道の話

ロンドンで4時間だけ自由時間があり、せっかくだからと歩いた。パディントン駅からハイドパークを通ってウェストミニスター大聖堂へ行き、ミサを1時間受けてテムズ川へ、そこからビッグベンを通りナショナルギャラリーまで。ひたすらに歩いた。思ったのは、公園が多く、川があり、そして道は緩やかにカーブしていて、とにかく散歩道としてのロンドンは素晴らしいという事。そして散歩に適しているという事は、人と歩き話すにも適した街であるという事だ。とても良い。

一方で、地方都市に行こうとロンドンに行こうと、そしてその間のハイウェイに行こうと、道はどこまで行っても狭い。つまるところ経済発展の余地が無いし、言ってしまえば未来が無い。あまりにもノスタルジックな風景だ。もちろんそれを是としてもいいし、実際空は広くて気持ちがいいのだけれど、これは滅びの道だよなとも思う。それと、建物が統一的で非常に見栄えは良いのだけれど、これも住むとすぐに飽きが来ようなとは思う。

完成されている、成長しない道。嫌いではなく、むしろ好きだ。滅びを待つ美しい道。

動物の話

そしてその滅びの街にはビックリするほど動物がいるのだ。犬は良く飼われているし、セントジェームス公園にはアヒルとリスがいるし、カモメやヒバリが街中を飛び、アバディーンの街中には普通に狐が出るし、ハイウェイ沿いには羊と馬が普通に放牧されている。

人間は比較的優しい(繰り返すが、仕事をしなければ)。まぁそりゃ、経済発展を否定して、動物と植物を愛でていれば、それは優しくなるだろう。「ナウシカ」に出てくるキメラが管理する楽園みたいな話をしている。

ぬいぐるみの話

今回の出張にはGiGOと774incがコラボしたぬいぐるみの大浦るかこを連れて行ったのだけれど、本当に心の平穏になった。別に話しかけたりする訳ではないし握りしめたりもしないのだけれど、そういう遊びを抱えている事で出張自体のしんどさに対して余裕があった。9時間の時差というのは本当に厄介で、あまり眠れなくて現地の朝4時に起きたりしてしまうと、ベッドから1分で机に向かえば日本の昼1時で、日本とのリアルタイムの仕事が出来てしまう。そのままこちらの朝9時まで仕事して、9時から出張業務(もちろんこれも仕事だ)をこなして、夜会食なんてすると部屋に戻るとバッタリ寝てしまう(そして早起きする)。本当に自分の時間が取れない(ロンドンの4時間だけだった)。そういうミッションの中で、それでも机にぬいぐるみがいたり、食事の時に一緒に写真を撮れたりすると、何か最後の大事なところが守られているような気がする。飛行機の中の食事なんかも世間ではよく楽しみと言われるが結局は仕事の合間に過ぎない中、それでも、横に並べて写真なんか撮るとまぁ少し休憩した気になる。意識がちゃんと他のところに向いていることで助かっている。Twitterに上げる際の華にもなるという感覚があって、通信が出来なくてもつながっている気になっているのかもしれない。

パディントン駅で小さなパディントン(熊)のぬいぐるみを買った。サイズがGiGOぬいぐるみとちょうど良かったからだ。ただこのパディントン、コートのボタンは刺繍なのに、顔付はいい加減なつくりで個体差があったりして、よく分からない。顔つきについては味のある優しい顔にしたので、るかこさんと仲良くしてほしい。

ダークソウルの話

これは完全に私が悪い…とも言えない気がするが、ともあれ。

ウェストミニスター大聖堂にせよ、ビッグベン周辺(ウェストミニスター寺院など)にせよ、エディンバラ城にせよ、見た時に「うわぁ、ダークソウルみたいだ!」と思うのは良くなかった。いや、ウェストミニスター寺院の正面の円形のガラス窓は完全にブラッドボーンで使用されていたし、エディンバラ城は完全にダークソウル(1の旧市街と、3の城壁)だった。順番としては当たり前だがイギリスが先、ダークソウルが後だ。それでも、個人的な経験はダークソウルが先でイギリスが後なのだし、感動の在り方としては「あの好きなゲームに似ている」になってしまうのは仕方がない。

味の話

食事は(割と良い所が多かったのもあるのだけれど)美味しかったし、個人的にはマーマイトも問題ないのでイギリスは特になんら苦労しなかった。酒に関しては、アバディーンではPunk IPAが盛んに飲まれていたけれどこれは当然知っている味だった。一方でGuinessのノンアルコールとPunk IPAのノンアルコールがあったので試すことが出来た(日本と仕事をしている早朝のソフトドリンクとして飲んでいた)。Punk IPAは柑橘感をだしたかったのだろうけど、昔の日本のノンアルコールビールのような変な酸味があって駄目だった。ノンアルGuinessは美味しかった。

一方で、スコットランドにはIron Bruという信じられないくらい駄菓子の味しかしないソフトドリンクがバカ売れしているし、インスタントヌードルは相変わらず馬鹿みたいにまずい。スナックやスゥィーツにはあまりまずいのが無いので、よく分からないがハレとケがあるのか、一人になると途端に無頓着になるという人がそれなりにいるのだろう。道の話とか動物の話とも通じるけれど、保守的…というより変化させたいという執着が無くて、改革に無頓着な気質なのかもしれない(典型的なイギリス人に対しては、保守的だな、と仕事をしていて思う事もある)。

それは、ファンになるには良い国だともいえる。変わらない良さの国としての英国。

↑クリエイターと言われるのこっぱずかしいですが、サポートを頂けるのは一つの夢でもあります。