呟きもしなかった事たちへ_No.59(2024年4月号)

※コンセプトは創刊号をご確認ください。ぼーっとする文章が続きます。バックナンバーはこちら索引もあります。

ある日の買い物メモが「米 ふりかけ」だった。大分プリミティブな感じがする。

今月も、呟きもしなかった事たちへ。


摩耗

お米がつかないしゃもじ、だったか、正確な商品名は全く覚えていないが、ともかく細かい凹凸があって白米をよそってもこびり付かないことを売りとするしゃもじがある。あれがうちにもあって、長いこと使っていたのだけれど、最近白米が付くようになってきた。おそらく凸凹の摩耗なりの、経年劣化があるのだろう。

白米しかよそわない、という、柔らかいものをずっと扱う処遇でも摩耗はしていくのだ。あるいは、摩耗の原因は洗い物をしているときのスポンジだろうか。いずれにしても、何か強いことをしているわけではなくても、長い時間で摩耗はしていく。川の流れや風の動きで石から砂が出来るように。

…いや、いいからとっとと買い替えよう。こんなことで自然を感じているより、生活を管理したほうがいい。

世界の狭さ

家の近所によく行く飲み屋を持っている都合、家への帰りが遅くなるとその飲み屋の常連が飲み屋から帰るのとすれ違うことがある。すれ違いざまにちょっと会話して、それはそれ疲れている仕事帰りにはなんだか嬉しかったりする。

相手が酔っ払いで自分がシラフ、という意味では、仕事帰りに電車で酔っ払いを見るのと変わらないはずなのだが、常連は微笑ましく、電車の中で見る酔っ払いは少し苛立たしい。残念ながらそういう現実がある。それは結局、知っているものには背景が認識できて、知らないものには背景が認識できないという差に過ぎない。それはつまり、僕の想像力の不足だ。愛がなく、僕の世界がそこで終わっているということ。

チョロギ

おせちに出てくるが、普段口にしないものの最たるものではないかと思う。芋みたいなものだから揚げて塩なんかかけると良さそうな気がするし、レシピでそういうものも出てくるが、それをツマミとして出す店を知らないし、酢漬けにする前のチョロギを見かけたことが無い。食べてみたい。

調べてみるとシソ科の植物の根らしい。なるほどそれは量が取れるものではないだろう。普段使いで食べられる食材ではない気もする。しかしならばなぜおせちになれたのかもよく分からない。名前もふざけてるしな、チョロギ。なんなんだこいつ。

しゃもじスタンド

前段のあと、グダグダ言わずにしゃもじを買った。偉い。

ところで、百均で探した結果驚いたのが「立つしゃもじ」ばかりであったということである。え、そんなに立たせたいか?そもそも炊飯器にしゃもじを挿すパーツが付いてきているので、40まで生きて今までしゃもじを立たせたいと思ったことがない。ニーズが分からない。

結局立つしゃもじしかなかったので、それを買い、炊飯器の横に立てる。その後ろに、しゃもじを挿すパーツが見える。何かがズレたなという気がする。「おいおい、しゃもじスタンドが無い世界線に来ちまったなようだな。」というやつだ。違う世界線。

…いやマジで皆しゃもじを挿すパーツ無い炊飯器買ってるの?どういうことコレ?

一時の別れ

よく分からないまま、唐突に週刊少年ジャンプに興味がなくなってしまった。「暗号学園のいろは」が終わったとか、宿儺戦がダレ過ぎだというのもあるのだろうが、買う気がなってしまった。ジャンプ+は未だ読んでいるし、漫画離れという訳ではないのだろうが、ちゃんと「週刊少年ジャンプを読む」ということが出来なくなってしまった。アンデッド・アンラックもあるのだし、逃げ上手の若君も好きだけれど、総体として週刊誌を読むということが出来なくなってしまった。忙しいのもあるのかもしれない。そこまでして追えない。

4年前にもそういうことで悩んでいた。また余力が戻ればあるいは返ってこれるかもしれない。一時の別れだと思うことにする。

徐々に去る

デイリーポータルZ友の会を退会した。何となく、何となくだが、方針が合わない部分が増えてしまったからだ。多分、今DPZを見てていいなと思う部分はDPZじゃなくても出来ることで、DPZらしいと林さんが主張する部分が僕に刺さらなくなってしまった。僕の中では多分「会社員なのに」こういうことができる、というDPZの要素が減ってしまったのが大きい。まだページを見たりはするけれど、積極的な応援はもう、出来ないな…という状態だ。別に月会費ぐらい払えるのだけれど、払うことが気持ちよくなくなってしまった。

以前「通販生活」のことを書いたけど、ちゃんとどこかで自分とコンテンツ、そして社会、それぞれの変化に応じてコンテンツとの付き合い方を変える方が健全なんだろう。だから社会に対して第一線を守る(代わりに変化し続ける)ジャンプにはいずれ購読に戻ると自覚がある一方、DPZは徐々に見るライターも減るだろうと予感がする。多分こういうことは今後様々なコンテンツで起きる。

その先で僕は何を読むのか。まだ見ぬメディアなのか。…noteではなさそうなんだよな。

ナイトキャップ

被ったことがない。被ってみたいわけではなく、知らない世界があると認識している。

そもそもどういう効果や意味があるのかと調べると、主に頭皮と寝具の摩擦の低減と、髪の保湿の話が出てくる。前者は枕カバーをシルクにすれば良い気がするし、後者は(髪の乾燥が気になるレベルなら肌にもよくないだろうし)加湿器のほうが良い気がする。まぁ古くからあるアイテムだから、より良い対策が出来ているのは当然だ。しかしそれでも生き残っているなら何かインターネットでは書かれにくい理由もあるのではないか。知り合いに利用者をついに見つけたので使っている理由を聞いたところ、うつ伏せで寝ても髪が口に入ってこないと教わった。仰向けで寝る寝相の良い短髪の男性では気付けない世界だ。ああ、そういうのが聞きたかったと膝を打つ。

これにてナイトキャップの理解は終了とする。髪が口に入って「んが」とならない!

↑クリエイターと言われるのこっぱずかしいですが、サポートを頂けるのは一つの夢でもあります。