呟きもしなかった事たちへ_No.60(2024年5月号)

※コンセプトは創刊号をご確認ください。ぼーっとする文章が続きます。バックナンバーはこちら索引もあります。

胸のところに「Eternal Memories」と書かれたピッチリしたTシャツを着ている女性がいた。…それはギャグなのか?難しくてすれ違った後も考え込んでしまった。

今月も、呟きもしなかった事たちへ。


入浴剤

花王のバブが好きだ。よく発汗し、肩こりにも良い、気がする。肩こりに良いかはともかく、発汗に関してはまぁ流石に通常の湯船に浸かっているときより多いだろう。これも思い込みかもしれないが、話が進まないので効果があるとする。

患部に直接軟膏を塗るようなことはあっても、全身の効果のために皮膚から薬効成分を吸収するという行為は普段あまりしない。だが、それが入浴剤となると妙に馴染みのあるものになるのも面白い。むしろ「血行が良くなる薬」「発汗剤」と経口でやろうとするとなんとなく胡散臭くなり、こうしたものは服用するより浴した方が適している気がする。変な話ではある。温泉の文化に依るのだろうか。

本人

「本人」と書かれたタスキ、何度見てもしっかり入ってこない。それが良い。

一体何の話かは言及したくないがここにいて声を掛ける理由は分かってほしい、という欲求を形にしたアイテムなので、そこには確かな甘えがある。だからこちらが敢えて理解を示さないでいると、もはや何も入ってこない。そうして放置される「本人」。雨やみを待つ下人のごとく、ただ一人で何者でもないまま放置されている。タスキを付けることで無視されていることも可視化される。

もちろん、僕がそうして受け取らない以上にあの甘えに応えてあげている人たちがいて、結果タスキにも効果があるとされているのだろうけれども。僕の目には都会で敢えて孤独になる人に見える。それがいい。荒野にただ一人、本人であれ。

安心

日曜日に仕事をしていたが、嫌になり街に出た。特段やることはないが、体を動かすためにバッティングセンターに行った後、会社で使っているヘッドセットの予備と、家で夜着るハーフパンツを買って帰る。ヘッドセットはまだ使えるがちょっと調子が悪い時があるので予備として、ハーフパンツはすでに1枚あるしすぐに買う必要はないがあったら便利かな、程度で、どちらも緊急性も高くなく、またいわゆる楽しいショッピングというものではない。

こんなことで休日を消化してしまったのか、とも思わなくはないが、意外と心は満足していた。平日にいざ買いたくなっても最近はお店がやっているうちに仕事を終えることが難しくなっているし、そういうヤキモキした事態を避けることが出来たことが大きいのだろう。Amazonではなく街に出かけたのも、散歩をした、家にこもっていなかったという休日の実績に安心するだったのかもしれない。つまり僕が買ったのは、商品ではなく安心だ。

目をつぶる

年を取るにつれ、数分目をつぶっているだけで体が楽になるという実感が強くなっている。寝ている訳ではなくても、ちょっと目をつぶっているだけで少し力が抜けて、疲れが軽くなる感じがある。立っていても大丈夫で、電車の中でも目をつぶっているだけで少し楽になる。

どう考えても目をつぶるだけで肉体が回復するとは思えず、何か別の理由があるのだろう。外界から適度に遮断されることが良いのかもしれない。つまるところこれはケアではなくフォローである。外に目を向けず、体に意識を向ける(だけの)こと。癒せない代わりに「大丈夫?」と声をかけること。

ゴールデンウィーク

本当によくできた休みだと思う。年始から年度末、年度末決算や振り返り、年度初めのスタートダッシュ…2~4月の怒涛で本当に限界だと思ったところに休みが来てくれる。頭の良い人が考えたのだろう。

知り合いの誕生日がゴールデンウイークの中にあって、毎年なにかめでたい気分になるのも良い。多分このnoteも読んでくれているはずだ。お誕生日おめでとうございます。今年も幸有る一年で、そしてその始まりが素敵な連休でありますように。

ファミチキ

帰りが遅くなる日、夕飯を用意するまでの間もたせでファミマのホットスナックを買うことがある。キッチンドランカーの自分用だったり、待たせている嫁にひとまずビールを飲んでもらうためだったりする。結果、ダイニングにファミチキでお馴染みあの袋が置かれている時がある。もちろん空の袋ならば捨てる。

先日人からお菓子を頂いた上に、可愛らしい袋にまで入れてもらったのだけれど、どうにも落ち着かない。

可愛いんだけどね

脳が汚染されている。色に、サイズに。

ブラシ

旅館の大浴場においてあるブラシで、薄い板タイプではない方…プラスチックで細く柔らかい棒が30~40本あるタイプのブラシがある。あれが良いのだ。何に良いって、マッサージに良い。

始まりはヘッドスパを受けた時「ブラシの際に頭を刺激すると楽になったりしますよ」と言われたのが始まりだった。そういうものかと試みにブラシで頭を叩いてみたら、思ったより良かった。細い棒のプラスチックは固すぎず、そもそもブラシも重すぎず、適度な刺激が与えられる。なるほどと思ってその勢いでブラシで首と肩を叩いてみたら、これが思いがけず良かった。風呂上がりの習慣に出来るのも良く、結果的に風呂上りに安いブラシで頭・首・肩を叩くことで体の調子は大分よくなった。

一方で、こういう正規でない使用法で道具を使う中年を、「変なおっさん」というのだろうなという気もする。ホテル大浴場の更衣室でやったりするのはやめた方が良いのだろう。知らないおっさんがブラシで体を叩いていたら怖い。若さと輝きを失っていく代わりに、怪異としての地位は確実に上がっていっていることを自覚しなければならない。

↑クリエイターと言われるのこっぱずかしいですが、サポートを頂けるのは一つの夢でもあります。