牙を抜かれる

散々放置プレイしてきた親知らずを抜いた。2本同時に抜いた。私の口の中にこんなでかいものが2本も、元々の歯茎の許容量を超えて余分にくっついてたのかとびっくりした。
施術は身構えてた半分くらいの労力で終わった。ぶちーん!を想像してたから、ミリミリ、ぬっ、と取れた時はびっくりした。そんな音でいいのか?そんな軽いノリで抜けていいのか、私の歯よ。
でっかい根っこの艶々とした白い歯が、私の血に塗れてころんと転がっていた。優しい看護師さんに
「抜いた歯、処分しておきましょうね」
とにこやかに言われて、手元に欲しいとは言えず、数年の年月を共にした2本の同士をそっと見送った。グッバイ、捨てられてもくよくよするなよ。元気でな。

引っこ抜かれた2本の歯があんまり立派だったので、私は歯牙を抜かれた狼の気持ちになった。あああ、僕の野生が失われてしまった。わおーん。嗚呼、遠吠えもなんとなく冴えがない。わおおーん。

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