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死を予感する。

4月30日にし「鉄粉が舞う、夜明け」を発売してから4日連続でラジオ配信をしていました。 ある夜にクイーカ氏も加わってことばにと3人で話していたときに、ふと「アルコール入った状態で詩書いたことないかも」と思って、よしせっかくだから今書いてみよう!と勢いで書いた詩ですー。 (まぁいつも勢いで書いているのだけれど……笑)⇩ 「死を予感する。」 声の先に触れた感情の指先。きみが死んだとき、晴れていて、わたしの鼓動が速くなる。雨が、あなたの心を飲み込む、死にそうな息苦しさ、じめる質

降水確率

美しかった。 雨に濡れた世界が美しくて傘を差すことを忘れた夜。 わたしは雨に映し出された世界の中に溶けてしまいたかったんだよ。 世界がいくつにも重なるパラレルワールド。 無駄な光なんてなかったんだと思い知らされる。 きみの涙だって、世界を美しくするもののひとつだとわたしたちは信じていいんだ。だから、僕ら、無駄な涙なんてどこにもないんだと言い張れる。 滲む世界の灯りに。 全てが包み込まれる瞬間に。 やっと僕ら、本音で生きていけるのかもしれない。

夜にだけ酸素。

 夜だけが、生きててもいいって思える。  朝焼けも朝日も好きなのに、そこに自分の居場所を感じられない感覚が、今日も私を息苦しくさせていた。  夜。冷たい空気感。車が走り去る音がやけに大きくてヘッドライトの灯りがやけに眩しい夜。  夜更かしが当たり前の世界で、きっとみんな起きているのに、やっと息ができるような気がするのはなぜだろう。  星なんか見えない空に、美しさを勝手に感じている。きみが今日も生きていることが、とっても嬉しいことだと思います。私が死んでもあなたには生きてい

街に、わたし

「 鋼の垂と横風の交点にまたうたかたが消えていく。破裂した夢/飛び散った肉片は隔壁を汚す唯一の彩色でした。吹き抜ける疾風(はやて):高速道路の湛えた笑み、カーブ曲がり切れず びゅう[終]。既知も未知も道の内――アフォリズムの踊る夜、イルミネーション、ウインクに倣うカウントダウン。木立、睡蓮、コーヒーカップ、猫足チェアのショールーム。見えない窓が触れない。推定通りの彗星に、会釈も許されない私はここにいる。術もなく。いつから、いつまで?私を見ているに違いないあの光に誘われるまま、

感情線、無感情。

きみの寂しさとぼくの寂しさが静かに対立している。愛せるか、きみはぼくの寂しさを愛せるか。いつだって傷だらけのきみの体に刻みつけたい。朝が始まる音とともに消える思い出、夜になる瞬間に生まれる感情、負の、傷の、痛みの、あれ。忘れてしまったいつかの思い出たち。いらなかったんだよぼくの人生にお前らの思い出なんて。たぶん。 死に損なった数だけ押し付けられた烙印。 煙になって空気中に霧散するアレになりたい。 生きてる証でしかない痛みが、どこの痛みなのかわかるように、きみの寂しさを飲み込

灰色の桜が、きみを殺す

春はあなたにとって希望ですか、切ないですか、恋しいですか、絶望ですか。 春の儚さが僕らを一瞬だけ善人にする。春を言い訳に他人に優しくなれる僕らを誰も責めない。ブルーシートに込めた約束はあっさりと破られるから、春を言い訳に記憶喪失になりたい。桜が散る音がノイズ混じりに響いて、春はあなたにとって希望ですか、絶望ですか。灰色の桜が、きみを殺す。

月曜日の朝

木々が煌めく昼下がりになりたかった、とあなたは言った。 日影が刺す朝の街に陽は落ちて 溶けていく気がした、感情 気づいたら日影に刺されて動けなくなっていた人々が電車を遅延させる月曜日 文句を言いながらも電車を遅延させた人たちを羨むにんげんたちナイフの代わりにギターを持てなかった彼らは社会に飲み込まれて溶けていった跡形もなく あなたのなれなかった昼下がりは昼が下がればそこにあって、わたしは昼下がり片手に日影を刺していく 貫いた、影の、穴に、滲む、光 七日間で一体何が変わるの、

ヘビースモーカー

愛してないよ、好きだよ、好きです、愛していないです 電話越しに煙草に火をつける音を聞くのが好きだった そこにきみがきみのまんまいるという事実が好きだった 掠れた声が眠そうに流れる深夜1時 きみが吐いた煙とともに 世界中が夜に溶けて人々は星になって嫌いな人たちも綺麗に輝いているから 私は軽率に 美しいと吐けるんだ 月が綺麗ですねくらいの軽さで好きですって言いたくて だから私の好きに大した重みなんてないと思われたい お腹がすいたくらいの感覚できみに抱きしめられたい 好きだよ

夜景の真実

きみに伝えたいことなんて何もなかった。誰かに何かを伝えようとすること自体が伝わらない証なんだと知った日から、きっと、諦めていた。 朝が好きなのに夜に生きてしまうもどかしさが、愛だったかもしれない。高層ビルに反射して溢れた落ちた絶望ってやつ。鳩が拾っている夢のカケラを踏みつけていた。 きみが孤独なのは愛を持っているからだよ。 愛が孤独をなくしてくれると信じている彼は愛を売っていた。 言葉に希望を託せば揺れる世界の音。 コーヒーの苦味に共感する人間のちっぽけさを、僕は、馬鹿にし

皮膚を辿る感情の行方について

ピンク色に染まる空の地平線に佇んでいる 冬はすぐそこに迫っていた 窓ガラス越しの世界 窓ガラスに映るきみが窓ガラスのこっち側なのかあっち側なのかわからないあいだ、僕らに境界線なんかなかった 僕らイカれているから正義だとか愛だとか幸せだとかを口にする 誰かと関わるたびに増える孤独を持て余して 初めから空っぽだった僕の中の何かがすり減っていく気がしているから感情は無駄だった 通り過ぎて忘れ去られるBGMになりたい 認識される寸前の存在のままでいたい 黒い水に映る景色は本物

大丈夫

冷たい空気に触れて息を吐く、夜。墓標の代わりに煌めくネオン。クリスマスはたくさんの人が死んでいく日なのかもしれない。喧騒が無関心の証拠。散り散りになった感情が、負の、踏みつけられていく、彼らに。大丈夫って言わないと誰も仲良くしてくれない。凍える夜は、生きていける気がする。孤独を瞬間冷凍、新鮮な孤独が解凍されるまで、大丈夫って言ってやるよ。なぁ、憂鬱だよ。

死体の香りの世界

よるに溶けた僕のことば 好きだよって言う人たちの言葉に消されてく僕の居場所 高速道路を駆け抜けたいってそれは嘘じゃないよ 交差点を信号無視して走り抜けたいってそれは本当の気持ち ヘッドライトに照らされて 滲む僕のからだ 嘘が貫く僕の心臓 抜け殻の僕を抱えて愛してるって叫ぶ人たちを眺めながら、雨が、落ちる、世界 あしたの匂いを感じられなくて きのうの記憶も曖昧で 僕の言葉がそのまんま伝わらないから死にたくなったけど 僕はそのまんま受け入れられてなくてとっくに死んでたって

衝動的な自殺は自己肯定

ぼやけた空気のむこうに、僕が求めるなにかがあると信じていてたあの頃 約束をした、それは言葉だった、約束ねという愛だとか情だとか、そんな不確かなもので確約されたなにか 守るものではなくて、守りたいと思っているあいだだけ守る都合のいいものだと夜の世界は教えてくれた 衝動的な自殺には自己肯定が満載 だから別に悪いことなんかじゃないよ 最後のいい思い出にして、都会に舞い落ちよう ねぇ、都会、すぐに忘れられちゃうね 君が、僕を愛したまんま、生きて、誰かを愛せばいいよ 都会に舞い

有料
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遺言の下書き

夜の海を抱いてねむりたい。 船の灯りが希望と絶望と安堵を運んでくる。滲む視界の向こう側にはきっと星がまたたいていて、そんなあたりまえの世界が、わたしにはみえない。冬だから、月曜日だから、おなかがへったから、殺したくなったから、死にたくなったのはそういうこと。明確な意味なんてどこにもないよ。撃ち抜かれた胸に潮水がなだれこんで、殺菌消毒かなと薄れる意識のなかで夢をみる。こもった水の音を子守唄に、駆け巡る走馬灯。悪くなかったよ、人生。でも大してよくもなかったよ。愛した人は不誠実でし