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Dota2観戦最初の一歩 「どこ見たらいいの?」

今回はDota2のお話です。
なかなかのボリュームになってしまったのでさっそくどうぞ。

前置き

昨年2021年はどうにかTIが開催されたものの、今年もさっそく第1回Major中止となってしまいました。
もちろんDotaに限った話ではないのですが、相変わらずなかなか安定軌道に乗り切れない世界情勢ですね。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

私は過去の記事でも何度か自己紹介してきた通り、ミーハーな見る専です。
これまでこのnoteでもほとんどTIのことくらいしか記事にしていません。

しかしこれだとネタが年1回しかやってこないし、こんな状況下では最悪0になる可能性すらあります。
まぁネタなんてなくてもこうやってこっちから作っていくんですが。
でも今後はDPCポイントの上位争いくらいまでは手を広げていってもいいかなぁなんて思ったりしています。

それはさておき、ですよ。
そうは言ってもそんな風に記事にしたところで、そしてありがたいことにそれを読んでいただいたところで、多分このゲームをやったことのない人はこう思うわけですよ。

「でも実況解説は英語なんでしょ?
 それで知らないゲームを見ても理解できないよ」

私の脳内にいるリトルDota2知らん勢

確かにその通りです。正しすぎて反論の余地が全くない。終わり。


もちろん終わりません。もうちょっと考えましょう。
例えば他のスポーツではどうでしょうか。
たとえばサッカーを知らないと仮定しましょう。

スーパーなどに置かれている購入後の商品を袋詰めするための台。じゃなくて。

…えっと、せめてスポーツだと理解している状態から始めましょう。
この状態から何を知れば、あるいは何を理解すればサッカー観戦を楽しめるでしょうか。

私は以下の要素が分かれば、ひとまず試合を見て楽しめるレベルになると考えました。

・どちらがリードしているか
→点数を見ればどちらがどれだけ勝っているかすぐ分かる

・どちらのチャンスか
→ボールがゴールに近ければ近いほど、攻撃側のチャンス

・チームの中心選手は誰か
→あらかじめ知っていればその選手がボールを持ったときに特に注目できる

・盛り上がるシーンはいつか
→分かりやすいのはフリーキック、コーナーキック、PKなど

今から書こうとしている自論に寄せるため、ちょっと強引な部分もあります

これだけ分かれば、おそらく全く知らない言語で実況解説されていたとしても、何が起きているかは理解できるのではないでしょうか。

じゃあDota2だってそういう"勘どころ"さえ押さえれば、英語の実況解説でもとりあえず分かるとりあえず楽しめるところまでは行けるのでは…?


というわけで今回の記事では「分からないなりにDotaの試合を見て楽しめる」を目標にします。

タイトルでも投げかけた「どこ見たらいいの?」という問いへの答えとして、「ここを見ろ!」を今回は5つ用意しました。
ちょっと前置きが長くなりましたが、ようやく本編スタートです。

そういうわけなので今回はざっくりした話をします。
本来なら言い切れないこともあえて断言することがあります。

そういった"ツッコミどころ"の中でも、特に私が個人的に(これは言い過ぎたかな)と思ったところには※をつけます
Dotaに慣れていない方は深く考えず、書いている文章をそのまま飲み込んで大丈夫です。

もしもっと奥深いDotaの世界を知りたくなったら、※はその入口になっているのかもしれません。

なおこの※マークシステムは某ブログのパクリです。いいアイディアはパクろう。

Dota2観戦ここを見ろ!その1 -総資産①

前置きで例に出したサッカーと違い、Dota2には点数がありません。
え、じゃあ画面上部にいかにもそれっぽく出ている数字は何かって?
あれは飾りです。

7-11で右のチームのリード?

もちろん飾りは言い過ぎですが、ここを見てもどちらが勝っているか分からないのは本当です。

どちらが勝っているのか手早く把握するには、その数字の下にちっちゃく出ている方、こっちを見ましょう。

左のチームが2k、つまり2000リードしています。

いかにもお金っぽいアイコンとともに出ているこの数字が表しているのは、英語ではNet worth、日本語では総資産という指標です。

総資産とは:プレイヤーが持っているお金とアイテムの合計金額
これが多いということは、そのチームの方が多くのお金を使える/多くのアイテムを持っているということです。
もちろん、総資産が多いチームの方が有利です(※)。

さっそく※を使いました。

多い方が有利とはいっても、先ほどの画像のように2000(2kと表示される)リードしたところでそこまで大きな違いにはなりません。
どれくらいから大きな差なんでしょうか。これは結構難しい問題です。

今回は覚えやすくて分かりやすいラインという意味で5k、つまり5000を一つの目安とするのがいいかなと思います。
とても大雑把に言えばこれはアイテム完成品1個分くらいの差です。

大雑把に5kなアイテムたち。

もちろんいきなり5kの差がつくことはありません。
序盤に1kだった差が2k,3kと徐々に開いていって、そろそろ差がついてきたな、と素人目にも分かり始めるのがこのあたりかなと思います。

さらにこれが広がって10k20kともなると、もうその差は明らかです。
しかしそこはプロ。そういった状況でも戦いようはあります。
そんなところからComeback、つまり逆転なんて起きたらもうお祭り騒ぎ。
実況解説観客、さらには選手まで揃って熱狂します。

黄色い線が総資産のグラフです。
最大13,000くらいあったと思われる差が見事にひっくり返っています。

Dota2観戦ここを見ろ!その2 -総資産②

総資産はチーム単位だけでなく、プレイヤー単位での集計もされます。
中継画面では画面左側に、各プレイヤーの総資産が表示されます。(※)

下の方はあまり影響しません。上の方を見ましょう。

この総資産表示は多い順に並べられて、チームごとに色分けされます。
なんとなく緑が上に多いとか、そういうところを見るとチーム単位での有利不利をおおまかに把握することもできます。

時には「チーム全体の総資産合計では負けているが、個人で見ると最も総資産が多いプレイヤーがいる」ということもあります。
そういう展開になるとそのプレイヤーが活躍できるかどうか、逆に敵側はそのプレイヤーをどうやって抑えるかが試合のカギを握ることになります。


Dota2観戦ここを見ろ!その3 -中心選手

サッカーであれば背番号10、野球であれば4番バッターがここぞという場面で活躍すると盛り上がりますよね。

Dotaもチームスポーツなのでもちろんそういうシーンがあります。
じゃあ誰が中心選手なのか?
それはチームのオーダーを見ると分かります。

先日行われたDPC西ヨーロッパ地区の出場選手一覧。
私の記事では毎度おなじみLiquipediaより。

中心選手とはズバリ、1番の選手です(※)。

試合を見る前、あるいは見ながらでも、メンバー表を見て1番の選手の名前、そしてその選手がどのキャラを使っているのか、確認してみましょう。

その2で紹介した"総資産の個人表示"と合わせて見ることで、各チームの取りたい行動も見えてきます。

たとえば1番の選手が総資産上位にいない場合、そのチームは1番の選手を育てるのが最優先課題になります。
逆に1番の選手が突出して総資産が多い場合、そのチームは機を見て戦いを起こす可能性が高いです。

もしそこで両チームの1番の選手が直接殴り合うような展開になったなら、もう瞬き厳禁です。
その殴り合いの結果が試合を大きく決定づけることでしょう。

あなたに好きな選手がいる場合、もちろんその選手こそがあなたにとっての中心選手です。

Dotaのフィールドは広いので、その選手(とキャラ)がずっと中継に映っているとは限りませんが、頑張って応援しましょう。

どうしても特定の選手を追いかけたいなら、TwitchYoutubeなどの配信ではなく、ゲーム内の観戦機能を使って自分で見たいところを見るという手もあります。

Dota2は無料でダウンロードできます。

最後の一文が実はこのnoteで一番言いたいことかもしれない

Dota2観戦ここを見ろ!その4 -BKB

その3"中心選手を見る"という話の続きっぽい話です。
ちょっとだけゲーム内の仕様、アイテムの効果に踏み込みます。

サッカーの10番が一人だけ上手でも勝てないように、
野球で4番打者だけがホームランを打っても1点しか入らないように、
Dotaでも1番の選手だけの力で勝つというのは難しいです。

一人では勝てない(※)。

たとえば将棋には「序盤、中盤、終盤隙が無い」人がいます。
しかし例えばゲームのキャラとしてそんな「隙が無い」キャラがいたらどうでしょうか。
みんなそれを選ぶようになってあまり面白いゲームとは思えません。

実際Dotaのキャラは程度の差こそあれど、ある条件では強く、ある条件では弱いというキャラばかりです。
ではチームの中心である1番の選手が使うキャラの特徴はというと、それは「序盤は弱いが、終盤以降とてつもない強さになる」ことです(※)。

序盤は味方のサポートを受けてモブ敵を狩ることに集中し、レベル上げやアイテムの購入を進めます。
もちろん相手はそれを妨害します。
中終盤に比べると地味なのは否めませんが、序盤の見どころです。
そしてある程度準備が整ったら本格的に戦い始めます。

じゃあその"準備が整う"というのはいつ頃なんでしょうか。
もちろんキャラ次第にはなりますが、視覚的に分かりやすい目安の一つとなるのが、この章のタイトルにもなっているアイテム"Black King Bar"、通称BKBというアイテムです。

右のアイテムがBKBです。
チャリーンというSEとともに、画面右に誰が何を買ったか表示されます。

このアイテムを起動すると一定時間、敵のスキル/アイテムのダメージと追加効果を防ぐことができます。(※)
起動中はキャラの周りに金色のオーラが出て、いかにも強そうな感じです。

画面中央で光り輝くPA。強そう。

この恩恵を受けられる時間は6~9秒
短い時間に思えるかもしれませんが、たったこれだけの無敵時間でも相手を壊滅させうるのが1番プレイヤーたちの使うキャラです。

BKBはどの試合でも必ず使われるというわけではありません。
自前のスキルでどうにかするとか、他のアイテムで代用するとか、敵の構成上あまり必要ないとか、様々な理由があります。

そうはいってもBKBが登場頻度の高い、試合のターニングポイントとなるアイテムなのは間違いありません。
キャラが金色のオーラをまとったら「お、このキャラが無敵だな」と注目してみましょう。

実況/解説も重要アイテムであるBKBについて話すことは多いです。
試合中ほぼずっと高速で詠唱し続ける海外の実況解説についていくのは非常に大変ですが、BKBという名前は長音が3つ連なっていることもあって比較的聞き取りやすいです。
何かわからんけどBKBのこと喋ってるなぁと思うだけでも、注目のしやすさが変わってくるかもしれません。

実況/解説に注目して観戦するというのも楽しい見方の一つ。

TI10の実況解説一覧ついでに、画像右下の方にいるSUNSfanについて軽く紹介します。
写真でもふざけていますが彼は実況もこんな感じ。syndereNとのコンビはもはや漫才。
そのスタイルには賛否もあるようですが私は好きです。

Dota2観戦ここを見ろ!その5 -Big Ult

今までよりは少しだけ高度な内容です。
キャラの性能に関するお話です。
やっぱりこのゲームはキャラ性能が分からないと理解しにくいところがあります。

でも100以上もいるキャラの性能を把握するなんて一朝一夕では無理です。
というかこんな記事を偉そうに書いている私だって、全てを網羅できてはいません。あと偉そうにはしていないです。

このくらい引きで撮らないと全員が写らない。
しかも大型アップデートでこの全員にスキルが追加されたりする(絶望)。

というわけでここでは非常に強力な、試合を左右するスキルに注目します。

Dotaのキャラはレベル6になると覚えられる強力なスキル、通称Ult(ウルト)を持っています。(※)

Ultを把握すればそのキャラの半分は理解したと言ってもいいでしょう。
そのくらいキャラの性能の中でも非常に重要な要素です。

そんな強力なUltの中でも特に、
①派手で効果が大きい
②多人数に効果を及ぼす
③その強さの代償として100秒に1回くらいしか使えない
このようなスキルのことをBig Ultと呼びます。

これが決まる(多くの敵に同時にヒットするとか、敵の重要キャラにヒットするとか)かどうかは、戦闘における一大イベントとなります。

代表的なBig Ultを持っているキャラを見てみましょう。

Earthshaker Tidehunter
Enigma Magnus。
いずれも劣らぬ強力な効果のUltを持っています。

彼らのUltは広範囲に複数のキャラを巻き込んで相手を行動不能にする効果があります。

それ自体は強力ですが、もちろん相手だってプロです。
のこのこ歩いていってスキルを使おうとしても、そう簡単に決めさせてはくれません。

そこでこの手のキャラは瞬間移動できるアイテム(Blink dagger)を買い、突如戦場に現れると同時にその真骨頂たるBig Ultを放ちます。

今でも語り草となっているTI5決勝戦。通称 "600万ドルのEcho Slam"
Earthshaker(HPゲージ緑のキャラ)が敵5人のど真ん中に飛び込んでUltを放った瞬間です。
画面左には彼が使ったBlink daggerのエフェクトがまだ残っています。

このBlink daggerの購入は、その4で紹介したBKB購入に匹敵する、あるいはそれ以上にもなりうる、一大イベントです。
瞬間移動を目で追うのは少し大変ですが、飛ぶ距離はだいたい決まっている(※)ので、慣れてくれば見失うことも減ってきます。

あるいはそんな必死に追わなくとも、観戦者という立場であれば突然現れた敵に純粋に驚くというのも楽しみ方の一つでしょう。

さて、そんなDotaの華ともいえるBig Ult、当然対抗する手段もあります。
色々、本当に色々とありますが今回は2つだけ。

Rubick Silencer

Rubickは相手の使用したスキルをコピーすることができます。
コピー対象はUltに限りませんが、プロの試合ではBig Ultのコピーを最大目標として選ばれることが多いです。

Silencerはもはや範囲など関係なく、戦場にいる全ての敵を黙らせる(Ultどころか全スキルを使用不可にする)Ultを持っています。
その意味では彼自身もBig Ult持ちの一人と呼べそうです。
Silence!という声とともに戦場から一切の音が消えるその演出は、他のキャラにはない独特の空気感を作り出します。


最後に

Dota2はそもそも、RTSという非常に情報量の多いゲームジャンルから派生して生まれたゲームです。
そのため元のRTSに負けず劣らず(?)情報量の多い、言ってしまえば"ごちゃごちゃした"ゲームであることは否めません。

初代Dotaは『Warcraft 3』のMODとして誕生しました。

Dotaのファンの多くはそのごちゃごちゃを分解して吸収できる特殊な酵素を持っているようなものです。
この記事ではそのような酵素の中でも特に消化吸収に欠かせないものを紹介しました。

前置きでも書いた通り、スポーツ観戦はどんなレベルであれ楽しいものです。
細かいところまで見てプロの技術に唸るのも一興です。
もっと単純に派手なプレイに盛り上がり、応援してるチームが勝てば踊り狂うというのもいいでしょう。

特にTIは(状況が許せば)大観衆の中で行われ、その歓声やどよめきまで中継に入ってきます。
環境だけ見れば本当にスポーツ観戦と何も変わりません。

一度は生で見たいTIのメインステージ。

もっと多くの人に、このゲームを楽しんで欲しい。
そういう思いから生まれたのがこの記事です。
何度か言ったとおり、出来るだけ"細かい話"は抜きにして進めました。

今回のまとめです。
①どっちがリードしているのか知る(その1、その2)
②10人中1~2人だけに注目する(その3、その4)
③できればBig Ultを持っている人にも注目する(その5)

無理のない範囲でゲーム全体を見れるようになることを目指しました。

そしてそうやって勘どころを押さえて観戦していると、そのうち「このスキルよく見るなぁ」とか、「このアイテム強いのかな」とか、少しずつこのゲームの"解像度"が上がっていく瞬間があると思います。

そうやって少しずつ分かるところが増えていくと、どんどんこのゲームの面白さが増していきます。

"指数関数的"なんていうとありふれた言葉ですが、Dotaは様々な要素を組み合わせることで面白さが加速するゲームです。
比喩ではなく本当に掛け算的に、つまりは指数関数的に、このゲームは面白くなっていくのだろうと思います。

見れば見るほど、知れば知るほど、ヒーロースキルアイテム組み合わせの豊富さ、そしてそれらが織りなすチームプレーの美しさに魅了されていくことでしょう。

Dotaはいいぞ。

最後は集合絵にタイトルロゴがドーン。様式美ですね。
といったところで、ボリュームたっぷりでお送りした本記事もそろそろ終わりにしようと思います。

普段よりも画像を多用して、できるだけ文字だらけの単調な雰囲気を避けられるように頑張ってみました。
また、この長さになるとどうしても "ネタを挟まないと死んじゃう病" が発症してしまうのですが、一応これでも削った後の結果をお届けしているということだけはお伝えしておきます。

ここまでお読みいただいて本当にありがとうございました。

それではまた。


蛇足:
Roshan Fightとか3rdタワー防衛戦とか、そういう具体的な戦闘シーンに触れる構想もあったのですが、話がどうしても説明的になりすぎるので今回は避けました。

実は最初にサッカーのたとえ話でチャンスがどうとかボールがゴールに近いだとか、あるいはフリーキックとかコーナーキックとか書いていたのは、そのあたりへ向けた布石だったりしたんですが。
と、実演できなかった手品のタネ明かしをここでこっそりと。

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