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理解したと思っていたことを、本当は理解していなかったことを理解させられる恐ろしいゲーム (Understand紹介)

今回は最近やっているゲームを紹介します。
ネタバレはほぼありません。

なお執筆時点で筆者は、今回紹介するゲームを25%ほどクリアしています。
まだまだ序盤です。クリア後には別の感想を持っているかもしれません。
そうなったらまた別の記事にしようと思います。


私はいわゆる「ペンシルパズル」と呼ばれるジャンルが好きです。
スマホにはそれ系のアプリをまとめたフォルダがありますし、PCブラウザのブックマークには毎日巡回するパズルサイトが複数入っています。

そんな私が最近やり始めたゲーム、Understandはパズルゲームです。

ペンシルパズルでは一般的に、ルールがあらかじめ公開されていて、解く側はそれを前提にパズルを解きます。

たとえば最も有名なペンシルパズルであろう数独(ナンプレ)であれば、主なルールは次の4つ。

・空いているマスに1~9の数字を入れる
・各列、1~9を1回ずつ使用する
・各行、1~9を1回ずつ使用する
・太線で囲まれた3×3のブロック内は1~9を1回ずつ使用する

数独のルール

一方今回紹介するUnderstandでは、これら「ルール」にあたる部分は非公開になっています。
唯一全パズルに共通しているルールは、「同じマスを通ることなく、一筆書きの経路を描く」ことだけ。

その他のルールは、パズルを解きながらプレイヤー自身が「理解」していく必要があります。

本稿の数少ないネタバレその1。

たとえばこれは1-1-1、最初のパズルです。

タイトル画面すらなくいきなり表示されるステージ選択画面から1-1をクリック。
すると何の説明もなくこの問題が表示されます。
そして上の画像のように丸から四角へと真っすぐ線を引くとクリアっぽい音が鳴ります。
おめでとうございます、1-1-1クリアです。

といわれても意味不明ですね。
この時点ではこのパズルのルールとなりそうなものはたくさんあります。
「真っすぐ線を引く」かもしれませんし、「丸から四角へ行く」かもしれませんし、「マス目を全て通る」かもしれません。
どれでもないかもしれません。

よく分からないまま、画面右の▶を押すと1-1-2へ進みます。
ここで大事なことは、1-1-1と1-1-2は「ルールが共通している」ことです。
このようにしてルールが曖昧なパズルを複数解いていくことで、次第にルールが判明していきます。

1-1はそのような「ルールが共通している」4つのパズルからできています。
1-1-4までクリアするとステージ選択画面に戻ります。
1-2が出ているのでクリックしてみましょう。
おや、これは見たことがあるな…

本稿の数少ないネタバレその2? いいえ、これはクリアできていません。

「これは進研ゼミでやった問題だ!」とばかりに先ほどの1-1-1と全く同じように線を引くと、残念というべきか当然というべきか、クリアにはなりません。

そう、1-1-xと1-2-xではルールが変わったのです。
1-2には1-2のルールがあります。また一から理解し直しです。
Understandの世界へようこそ。


最初にも書いた通り私はまだこのゲームを25%ほどしかやっていません。
それでも既に、このゲームのレベルデザインの絶妙さにはとても驚かされています。

「簡単なパズルから難しいパズルへと進行することでプレイヤーにルールの理解を促す」という一般的なレベルデザインという意味でも素晴らしいんですが、他にもあります。

その一例が上で紹介したような「全く同じパズルをあえて繰り返し出題する」手法です。
これによりステージごとにルールが変化していることをはっきりと意識することができます。

そしてこの「同じパズルを繰り返す」ことは別の演出にも繋がります。
似て非なるパズルを解き続けると、どうしても人間には先入観が生まれがち。

そんな繰り返しの過程から生まれた「多分このステージはこういうルールだな」という先入観を、あるいは「理解した」という思い込みを、このゲームはこともなげに破壊します。

たとえば「丸を通っていく」のがルールだと思っていたのに、突然丸が1個もないパズルが出題されたり。

横幅が少し広くなっただけで直前のパズルと全く同じ配置なのに、同じ形を描いたら不正解判定されたり。

突然今まで出てこなかった記号で埋め尽くされたりもします。

そういった時には過去のパズルを見返して、あえて不正解になることで今まで見えていなかったルールを紐解いていくことも必要かもしれません。

そしてそんな「あえて不正解になろう」という思考すら見透かされるのか、意図しないタイミングで正解判定を出されて脳内のクエスチョンマークが増えていくことも…


このゲームはいわゆる「アハ体験」、あるいはちょっとオシャレに「エウレカ効果」、要するに「理解した瞬間の爽快感」が凝縮されています。
逆にいえばほぼそれしかありません。
非常に純度の高い体験がそこにあります。

正直、人を選ぶゲームだとは思います。
運要素無し。アクション性無し。時間制限無し。ヒントボタン無し。
派手な演出も無ければストーリーも無い。
そういえばBGMも無い。(ここ書くまで気づいてませんでした)

パズル以外の要素を徹底的に排除したそれは、さながらゲーム界の精進料理。
一口食べるだけではただの薄味の野菜料理でしょう。
これの味が口の中に行き渡るまで噛み続けられるという人にだけ、このゲーム、おすすめです。

かくいう私は今のところ1日1ステージ(同じルールのパズルセットで1ステージ)だけプレイしています。
もちろんクリアできない日もあるので、進行度は1日1ステージ以下のこともちょいちょいあります。
いや今私ちょっと見栄を張った。よくあります。

ちょっとずつ噛んではその髄をしゃぶり、「結構なお点前で…」と誰にともなく呟く日々です。

え、それは精進料理に対する台詞じゃない?
まぁ確かにそうですが、パズルに合うのは料理よりはお茶でしょう。
理解できないパズルも怖いが、ここらで私はお茶が怖い。
おあとがよろしいようで。

なんとも雑なタイトル回収とオチで怒られそうですが、あいにく怒られるのは怖くないのであしからず。
といったところで、それではまた。

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