True Sightを見よう TI2019 #08

このnoteは#01から順番に読んでいただいていることを前提に書いております。
今までの記事は以下のマガジンからどうぞ。

#07から実に半年も間が空いてしまいました。

2020年はTIを始めほぼ全てのオフライン大会が中止になりましたが、
2021年は既にシンガポールでMajorと呼ばれる世界各地を代表するチームによる国際大会が開かれるなど、
Dota2の競技シーンはかつての盛り上がりを取り戻そうとしています。

私もかつての盛り上がりを取り戻す…と続けばキレイなのかもしれませんが、そこはまぁ、ぼちぼちやっていきます。

9:58~11:27 第1ゲーム序盤 Tiny monster

1st blood (ゲームの最初のキル)はGH(Team Liquid)が取りますが、
Topson(OG)の操作するTinyが徐々に暴れはじめます。

10:26
Fogged(解説): Look at OG's draft. They're about the late-game.
You look at Liquid's draft, they're very early-game-centric.
They wanna be snowballing the game, getting Rosh control, and just ending the game.
ODPixel(実況): Oh, taking them up towards the top, setups there onto MinD_ContRoL.
Instantly Kraken Shells off the sleep, but it doesn't matter, Topson.
Topson: Yeah, I'm gonna start running at them I have Phase Boots.
JerAx: Yeah, I'm ready to connect with you, Topias, whenever you want.
Topson: Yeah, yeah, yeah. I'm just gonna start killing them now.

Fogged(解説): OGのドラフトを見てみると、長期戦に持ち込もうとしていることが分かります。
一方でLiquidのドラフトは、短期決戦中心に組まれています。
彼らは序盤からリードを奪って雪だるま式に拡大していき、Roshan周りをコントロールしてゲームを終わらせようとしているのです。
ODPixel(実況): おっと、トップレーンで動きがありました。MinD_ContRoLに対して仕掛けています。
すぐにKraken Shellで眠りを解除しますが、関係ありません、Topsonが持っていきます。
Topson: よし、相手にどんどん突っ込んでいくわ。Phase Boots買ったし。
JerAx: オッケー、連携していくぜ、Topias、いつでもいける。
Topson: よしよしよし、そんじゃ今からやっていきますか。

というわけでここから小さな怪物の暴走が始まります。

ところで、この状況って解説と言ってること違くない?
なんで長期戦に持ち込もうとしてるOGの側がどんどんキル取っていってるの?
という疑問が浮かぶ方もいるかもしれませんが、大丈夫です、これで合っています。

ゲームの詳しい解説をするのはこのシリーズの趣旨ではないので(あと私の知識や解説の技量では手に余るので)、ゲーム内の仕様にはあまり触れずに、考え方だけ簡単に説明します。

OGanaが使っているヒーロー、Spectreは終盤戦向きのヒーローです。
このヒーローの強さは完全に育ち切ってさえしまえば圧倒的で、そうなると例え1対多数であっても問題なく制する可能性もあります。
その代わりに序盤はかなり貧弱で、1対1ですら勝てない可能性が高いです。

というわけでOGの残りの4人の仕事は、「Spectreがすくすく育つよう、モブ敵を安定して狩れる時間と場所を提供すること」になります。
その方法は幾つかありますが、その中でも一番分かりやすくてかつ実現すれば強いのが、相手を片っ端から倒してしまうことです。

これによりSpectreが安全に経験値やお金を稼ぐ(farmする、と呼びます)ことができるわけです。
もちろんTinyが暴れ続ければそのままゲームを終えてしまう可能性もあるわけですが、そこはプロの試合。そう単純には行きません。
基本的にはOGSpectre待ちです。

さて、Tinyが暴れまわる戦場に話を戻しましょう。

11:09
Kuroky: They're just poking, you know OG.
They're monkeys, I told you guys.
Fogged: We've seen Topson do this, a lot of times, yes.
ODPixel: it's classic Topson. He's gonna find the Avalanche.
Topson, he persists, and he's just getting so much done.
This Tiny just can't stop killing people.
MinD_ContRoL: We need to kill them together, That's what we need, yeah.

Kuroky: 相手は突っつき回してるだけだ。言ったろ、相手は猿なんだ。
Fogged: 私たちは何度も何度もTopsonがこうやってプレイしているところを見てきました。
ODPixel: Topsonの十八番というわけです。Avalancheを当てます。
Topson、止まりません。かなりのリードを得ました。
このTiny、まだまだ。キルを取り続けます。
MinD_ContRoL: 協力してキルを取る必要がある。うん、今必要なのはそれだ。


Kurokyはゲーム開始前に言っていたmonkeyの件を繰り返します。
poke(棒などでつつくイメージ)という単語も恐らく猿からの連想なのでしょうが、
相手の攻撃は弱い、全然痛くないということも暗に伝えようとしているように感じました。

実況解説は予選から見てきたTopsonのプレイがそのまま決勝戦でも再現されていることを伝えます。
しかし一方でLiquidの側もこのまま黙っているわけがありません。
そもそもドラフトが短期決戦向きだと評されているくらいですから、反撃の手立てはもちろんあります。

というところで、今回はここまで。

最後に注目表現のコーナー。
今回は割と日本語と英語でニュアンスがある程度共通している、珍しめの2単語を取り上げます。

snowball
見ての通り、snowball雪玉です。
転がせば転がすほど大きくなっていく様子から、日本語でも雪だるま式に増加する、という表現がありますが、
このsnowballが動詞として使われる場合もそのような状況を意味します。

ゲーム的な文脈では基本的にリードを徐々に拡大していくことで勝利するような様子、を指すことが多いと思います。
こういうのを一単語でスッキリ表現できるのが英語のズルいところですよね。
今回は実況のセリフということもあって丁寧に訳してみました。
どうしても一単語でコンパクトに訳すなら、若干ニュアンスは変わっちゃいますが、圧倒する、とかを当てるのかな。

classic
クラシックです。の一言で終わりにしてもいいくらい、英語と日本語のニュアンスが近い言葉だと思います。
ポジティブな文脈では古典的、典型的、不朽の、といった意味に取れますし、
ネガティブな文脈で皮肉的にありきたり、つまらないという意味に派生させることもできます。
どちらかというと古くて素晴らしい、という意味になることの方が多いはずです。
そしてもちろん今回も素晴らしい方です。
訳語としては日本語のクラシックなところから持ってきて十八番を当てました。
我ながらこれはちょっとニヤりとできる自己満足度の高い翻訳です。

さぁ、第1ゲームはこれからどうなっていくのでしょうか。
次回、Tiny死す。デュエルスタンバイ!

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